2010年3月7日のJ1開幕戦で対戦したときも、2011年5月29日のJ1第13節で顔を合わせたときも、雨だった。そして、2012年11月17日も、朝から激しい雨が降り続き、キンチョウスタジアムのピッチに水がたまる悪コンディションとなった、このJ1第32節。Ｃ大阪は『雨天の大宮戦』で、一昨年（0-3）、昨年（0-1）での対戦と同様に、今回も持ち味を発揮できないまま1-3と敗北。これで第25節名古屋戦以来7戦ぶりの黒星となって、16位Ｇ大阪との勝点差は4に縮まり、J1残留確定は次節以降に持ち越しとなった。

今回は前節仙台戦での退席処分により、ベンチ入りできないレヴィークルピ監督に代わって、マテルヘッドコーチが指揮を執ったＣ大阪。仙台戦での負傷交代で状態が心配された茂庭照幸、柿谷曜一朗、杉本健勇が揃って先発するなど、4戦連続同じスターティングメンバーを並べて、この大事な一戦に臨むことはできた。しかし、「雨によって、前半は思うようにボールを動かせるような状況ではなかった」と、マテルヘッドコーチ。特に前半は、大宮の戦い方に合わせるかのように、「長いボールで対応して、いつもとまったく違うサッカーをせざるを得なかった」。

そのなかで、10分には最初のチャンスをＣ大阪がつかむも、ヘベルチのフリーキックは大宮GK北野貴之の好守に阻まれ、ゴールならず。すると、18分にはアクシデントが発生。丸橋祐介が負傷退場を強いられ、早い段階で左サイドの攻撃の起点を失うと、流れを徐々に大宮へと明け渡してしまう。そして37分、自陣でのファウルで与えたフリーキックから、ノヴァコヴィッチに直接叩き込まれ、先制点を献上。ここ8試合でわずか3失点という堅守を誇る大宮にリードを奪われたことが、Ｃ大阪の戦いを狂わせることになる。

次第に雨も上がり、ピッチ状況も若干改善したことで、「いつものパスをつなぐサッカーをもっとやろう」（マテルヘッドコーチ）と臨んだ後半だったが、55分、『雨天の大宮戦』でよく見た光景により、またも失点。敵陣でコーナーキックを得ながら、そこから大宮の鮮やかなカウンター攻撃を浴びて、2点差を付けられてしまう。その5分後には、Ｃ大阪も、杉本健勇の今季J1初得点で、すぐさま1点差に詰め寄り、さらに攻勢を強めていったが、GK北野、DF河本裕之を中心とする大宮守備陣の牙城をなかなか崩しきれない。

そこでＣ大阪は、72分には、これが公式戦初出場となる17歳のFW南野拓実をピッチに送り込み、73分にも山口螢に代えて扇原貴宏を立て続けに投入。クラブ生え抜きの若きタレントで中盤を活性化して勝負に出たが、その交代策は実らなかった。逆に80分、前がかりになったところで右サイドを崩されて決定的な3点目を奪われると、その後の反撃も大宮にかわされた。Ｃ大阪では初めての2種登録での出場となった南野もシュートゼロに終わり、「流れを変えることができなかった」と、試合後には悔しさをにじませていた。

大宮だけでなく、同日には神戸、Ｇ大阪も勝利したことで、残り2試合もJ1残留争いの厳しい状況に巻き込まれる形となったＣ大阪。次節は首位広島とのアウェイ戦が待ち構えるが、「もう全部勝ちを狙ってやるしかないので、しっかり集中してやっていきたい」と枝村匠馬も述べるように、桜色のホームチームは前を向いていた。

一方の大宮は、「本来我々が準備をしていた速くボールを動かして、前線に運んでいくという狙いでは、残念ながらプレーできなかった」とベルデニック監督は言うものの、チームはぬかるんだピッチコンディションにもうまく適応。5節ぶりに同時に先発起用したズラタン、ノヴァコヴィッチのツインタワーがしっかりと前線で起点になり、指揮官曰く、「ロングパス、そして、そこからのセカンドボールという攻撃ができた」。

また、先制した直後、東慶悟が負傷退場したものの、チョ ヨンチョルがその穴を埋める活躍を見せれば、カウンターから渡部大輔、青木拓矢が追加点を奪って、貴重な勝点3を敵地で得ることに成功。この終盤戦で9戦負けなしを記録し、勝点を40にまで積み上げた。「負けたら（順位が）抜かれたり並ばれたりしていたし、すごく大事な試合だったので、勝ててよかった」と河本。「みんな自信を持ってプレーできているし、さぼる選手もいない」ことで、安定感ある守備をこの試合でも見せた大宮は、チーム一丸となった戦いで、土壇場の『残留力』を今節でも発揮。この勢いは止まりそうにもない。

以上

2012.11.18 Reported by 前田敏勝