長かったシーズンもラスト3試合。この32節では勝点14で18位の札幌が同47で7位の鳥栖を札幌ドームで迎え撃つ。順位こそ差がついてしまったが、昇格チーム同士のライバル心は強いはず。意地をかけた熱い戦いが予想される。
ホームの札幌は前節、敵地で首位の広島と対戦して0−3のスコアで敗戦。局面によっては5バック気味にもなる守備的な布陣で挑んだものの、1失点目となったPKについては「ボランチとCBの対応が一瞬の隙をつかれた」、2失点目についても「相手にボールを奪われた瞬間、佐藤(寿人)選手に裏を取られた」と石崎信弘監督は振り返っており、僅かな隙を見逃してくれず、そしてそれを着実に得点へと結びつけてくる広島の勝負強さや質の高さに屈した格好だ。
ポゼッションをしてくる相手に合わせて守備的な戦い方を選択。そこでうまく粘ることができれば28節の浦和戦(○2−1)のような好ゲームに持ち込むことができるのだが、早い時間に失点し、かつそこで意気消沈をしてしまうとたちまち流れを失ってしまうのが今シーズンの札幌の悪癖だ。前々節のF東京戦でも早い時間の失点をきっかけに崩れてしまったし、広島戦でも相手の勢いを押し返すだけのパワーを失ってしまった。F東京戦、広島戦と2試合続けて相手の勢いに飲み込まれて大敗してしまっているだけに、ここでなんとか悪い流れをストップしたいところである。
そんななかで広島戦ではアカデミー出身の荒野拓馬がトップ下のポジションでJリーグ初先発。積極的にボールに絡もうという意欲を見せ、新しい風を吹き込ませている。ハイレベルな相手に封じ込まれてしまった印象も強いが、「今日、何もできなかったところを次に活かしてほしい」と指揮官は期待を寄せている。若い選手の活躍で、チームに新たなパワーを注入して欲しい。
対する鳥栖の前節は、佐賀県総合運動場陸上競技場で磐田とのホームゲーム。キムクナン、豊田陽平の2得点でリズムよく3点を先行しながら終盤に1点差まで詰め寄られる展開となったが、最後は粘り強く3−2で逃げ切ってみせた。27節からは3連敗を喫し若干悪い流れになりつつあったが、これで30節の新潟戦(2−0)に続く連勝。どちらの勝利もエースの豊田が2得点を挙げてのものとあって、鳥栖らしい勝ち方が出来ているということだ。
そして、この磐田戦の勝利により鳥栖は来季のJ1残留が決定。J1初昇格の地方都市クラブとしては、まずはひとつの大きなハードルをクリアしたと言える。状況的にもともと残留が確実な順位に居続けていたわけだが、ポジティブな話題であることに違いはない。
ただし、尹晶煥監督はこう話す。
「我々の最後の目標は残留というわけではないのでこれから先、最後のゲームまでしっかり良い準備をして挑んでいきたい」
そう、残留が決まったものの今シーズンの鳥栖の戦いぶりは見事なもので、その先をも見据えるに相応しい。実際に指揮官は残り3試合に向けチームに「3位以内を目指そうという話をした」とのこと。チームはより高いモチベーションでこの試合に挑んできそうだ。
そんな両チームの戦いだが、現在の順位とは関係なく、真正面からの激しいぶつかり合いとなるはずだ。
その理由としてはやはり、札幌はすでに来季のJ2降格を決めてしまったものの、同じ今シーズンの昇格チームである鳥栖に差をつけられたまま終わるわけにはいかない。前回対戦でも拮抗した試合が演じられており、やはり強いライバル心があるはず。鳥栖にしてもここで勝点3を得られれば3連勝となり、指揮官のコメント通りさらに上の順位も見えてくる。
とにかく勝点3が欲しい。気持ちのこもった熱いゲームになること必至だ。
以上
2012.11.16 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
一覧へ【J1:第32節 札幌 vs 鳥栖】プレビュー:今シーズンの昇格チーム同士が合まみえる。さらに上の順位を目指したい鳥栖と、ここにきて何とか意地を見せたい札幌。互いが勝点3だけを目指した熱いバトルになりそうだ(12.11.16)
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