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【J2:第42節 横浜FC vs 岐阜】レポート:残留への執念を見せる岐阜を粘り強さと図太さで退け、横浜FCは4連勝でシーズンを締めくくりプレーオフへ向かう。(12.11.12)

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プレーオフ制度と降格制度により、過去最高の混戦となった2012シーズンのJ2の最終戦。最下位からの奇跡の昇格、それも2位での自動昇格のためにまずはこの試合での勝利が必須だった横浜FCと、残留のために引き分け以上の結果が必要だった岐阜の対戦となった。高いモチベーションと危機感を胸に臨んだ試合は、両チームの持ち味がピッチ上に表現されたシーソーゲームとなり、その上で横浜FCがシーズンを通して培った粘り強さを見せつけた形となった。

「試合の内容については、総合的に見てそんなに悪くなかった。立ち上がりから非常に積極的にプレーできていたし、勝ちに行くというところを全面的に出せた」と岐阜・行徳浩二監督が試合後に述べたように、岐阜のゲームプランが上手くいった前半の立ち上がりとなった。そのプランは、横浜FCのサイドバックの裏を使うこと。2分に、横浜FCの右サイドバックを食いつかせて裏を使う攻撃を見せると、3分には逆サイドの裏を使う攻撃を見せる。そして、その狙いが18分に実を結ぶ。やはり守備のために縦に食いついていた阿部巧の裏にパスを出すと、染矢一樹が走り込む。そして、つり出されたCB森本良との1対1に勝ちグラウンダーのクロスを入れると、中に待っていた佐藤洸一がCB堀之内聖との駆け引きに勝利し先制点をゲットする。岐阜の攻撃の狙いに横浜FCが対応できるようになったのは、27分に山口素弘監督がカウンターに対するカバーリングの指示を与えてからだった。この指示で、阿部の守備のポジションと、オーバーラップのタイミングがうまく整理され、その後の攻撃に繋がっていく。

引き分けで良い状況の堅守の岐阜にとって1点のリードは狙い通りの状況。きれいに守備のブロックを作り、横浜FCの攻撃を遮断していく。「攻め方について探りながらの時間が続いた」(寺田紳一)という状況だったが、ここで横浜FCは焦れずに岐阜の穴を探る。そして、43分、岐阜の狙い目となっていた阿部が個人技で驚異的な粘りのドリブルを見せると、カイオへピンポイントのクロスを上げる。そして、そのクロスをカイオが体を投げ出す形でヘディングで合わせてゴールゲット。組織では完璧に守られる中、組織ではなく個人技を発揮する形で同点でハーフタイムを迎えることに成功した。

「相手も疲れて隙間が出た」と寺田が振り返ったように、後半になるとそれまで横浜FCのボランチの動きを先んじて封じていた服部年宏と李漢宰の動きが落ちてきて、横浜FCが中盤で自由にボールを動かす時間が増えてくる。そして、63分に阿部が粘りのキープからFKを得ると、森本がニアで合わせる。前半裏を狙われていた阿部がお膳立てし、「自分のミスがあったので、取り返したいと思っていた」という森本が逆転ゴールを決める、チームとしての底力を見せる展開となった。

一転して勝点を失う展開になった岐阜は、前掛かりに点を取りに行くべく71分にダニロを投入。その狙いが徐々に横浜FCを押し込めると、82分ダニロのポストプレーの落としを受けた佐藤洸一が横浜FC守備陣をドリブルで抜き去り、そのまま冷静にゴールを奪い同点。残留に必要な勝点1への執念を見せる。しかし、最後にモノを言ったのは、横浜FCの粘り強さ。阿部が三度、得点のお膳立てをする。失点から2分後の84分、阿部のクロスに田原豊と岐阜GK時久省吾が交錯し、そのこぼれ球を永井雄一郎が冷静に押し込んで勝ち越しゴールを決める。そのリードを守りきる形で横浜FCが逃げ切りに成功した。

横浜FCにとっては、狙っていた自動昇格はならなかったが、4連勝でシーズンを締めくくり、上向きのままJ1昇格プレーオフに進む形となる。この試合の岐阜は、狙い通りの試合を進めていたが、横浜FCは焦れずに相手の疲れを誘いながら仕留めていく粘り強さと図太さを見せつけた。もちろん、2失点については反省すべき点もあり、またこの試合独特の緊張感に少し硬くなり立ち上がりの主導権を握られた面もあった。しかし、この経験を経て次のプレーオフ初戦の千葉ではさらに図太さを増した横浜FCが見られるはずだ。この日のニッパツ三ツ沢球技場のホームの雰囲気は今季最高だった。4位になったことで、プレーオフ初戦は三ツ沢の丘で行うことができる。次の試合では、チーム、サポーターがさらに勢いを増していけるだろう。

一方の岐阜は、この試合で競り負けたものの、町田が敗戦したことでJ2残留を決めることができた。試合の内容、そして得点への執念と、横浜FCに対して引けを取るものではなかった。今季もクラブにとっては大変な1年だったが、ニッパツ三ツ沢球技場に駆けつけたサポーターの大きな声援は、横浜FCの応援に負けないものであり、ピッチには十分に届いていた。岐阜で願いを込めて中継を見ていたサポーターの思いも同様だろう。来季に向けて、行徳監督の言う「足りない部分」を少しずつステップアップしていくことが、この試合に賭けた思いを生かしていくことになるだろう。

J2のシーズンはこれで終了。例年にも増して混戦となったリーグは非常に密度の濃いものでありこの試合にも凝縮されていた。そして、横浜FCは奇跡の昇格に向けて、次の戦いの場へ進んでいく。

以上

2012.11.12 Reported by 松尾真一郎
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