暗く、長いトンネルに迷い込み、いまだに出口の方向さえ見当が付けられない福岡。いまチームは、昇格云々を越えて、クラブ創設以来、最大の危機にあると言っていい。1試合の中で何度も起こる不用意なミスからの失点。それを全員が自覚していながら全く改善されない現状。そして第3節以降、まるでリプレイでも見るかのような同じ内容の試合を繰り返して勝点を落とし続けてきた。気がつけば失点45は鳥取に次ぐJ2ワースト2位。「J2優勝、J1昇格」を目標に掲げながら現在の順位は16位に沈み、浮上の気配さえ感じとれない。しかも、その原因を誰もが掴みかね、誰もが改善策を見つけられない。福岡は、まさに混迷状態にあると言っていい。
しかし、それでも前を向いて進むしかない。いま起こっている状況は、相手によってもたらされたものではなく、全て自分たちの行動で引き起こしたもの。苦しかろうが、辛かろうが、自分たちの手で目の前の障害物を乗り越える以外に解決する道はない。前節の北九州戦で、大けがを乗り越えて開幕戦以来の復帰を果たした山口和樹は話す。
「自分がこのチームを変えるという気持ちで、率先して、一番前に立って、体を張って、失点を無くして、1試合、1試合、ものにしていきたい。自分たちはプロ。サポーターの期待を裏切らないようにプレーで見せないといけない。誰かが助けてくれるわけではない。この現状は自分たちでしか変えられない。サポーターの悔しさを背負って戦いたい」
残り試合は少ない。しかし、自分たちの想いをぶつける時間は、まだまだある。
そして第30節。福岡はレベルファイブスタジアムに富山を迎える。富山は、ここまで13試合連続で勝ちがなく(6分7敗)、順位は最下位と苦しんでいるが、その結果と内容の印象は異なる。7敗のうち、2点差以上を付けられたのは第20節・甲府、第21節・熊本戦の2試合だけ。第17節・京都戦に引き分けた後4連敗を喫したが、その後の成績は5分3敗と明らかに改善傾向が見られる。そして、昇格争いを演じている京都、湘南、大分、山形、甲府(2回対戦)との対戦成績は4分3敗と健闘している。前節の甲府との対戦では「富山の最近の戦績などいろんなことを考えると勝点3を取れなかったことは辛いことだと外からは思われるかもしれないが、今日の富山から勝点3を取ることは簡単ではない。負けなかったことをプラスと考えたい」と、敵将・城福浩監督に言わしめた。
また、安間貴義監督は甲府戦で選手たちが見せた戦いぶりを「成長」という言葉で表現したが、ボールをポゼッションしながらチャンスを作り、高い位置からの連動したプレスで甲府にチャンスらしいチャンスを与えず、さらには先制点を奪うなど、互角以上の戦いを演じた。表面的な順位や成績では測れない相手。それが現在の富山だと言える。まして、強くプレッシャーをかけてくるチームを苦手としている福岡にとっては、富山は警戒すべき対戦相手。心して迎え撃たなければならない。
もちろん、福岡の選手たちに相手を侮るなどという気持ちはないだろう。ここまでの試合を見る限り、敵は相手にあるのではなく、自分たちの内にある。まして、戦う内容に変化を見せている富山との対戦が、今までと同じように難しい戦いになることは嫌という程分かっている。ほんの少しの油断は敗戦という結果につながる。中2日で戦う試合は多くのことを襲来する時間はない。危機感は今まで以上に持っているはずだ。
そんな福岡にとって勝利への道は、北九州との福岡ダービーの時に、ピッチの上で、そして、ミックスゾーンで鈴木惇が見せた、絶対に諦めないという気持ちを、全員がピッチの上で表現することにある。中2日のインターバルで行われる試合は、多くの周囲を施す時間は与えられていない。戦う武器は、今までに積み重ねてきた者を信じる力。持てる力を全て発揮する精神力。そして、絶対に勝つという強い想いだ。もちろん、多くのファン、サポーターもチームとともに戦う姿勢を見せている。
過去は戻って来ない。それならば、この試合に勝利して新しい未来を手に入れればいい。それがいまの福岡がやるべきこと。そして、それが福岡に関わる全ての人たちの願いでもある。
以上
2012.08.21 Reported by 中倉一志
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