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【J1:第21節 大宮 vs 広島】レポート:激しい撃ち合いを収束させた意外なルール。広島がしたたかに大宮を降し首位を奪回(12.08.12)

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6月23日の第15節、広島ビッグアーチで行われたアウェイ戦で大宮は、徹底的に自陣に引いて守った。『勝点1で上等、あわよくば勝点3』の戦いで、20本のシュートと13本のコーナーキックの猛攻を浴びながら勝点1をもぎ取った。しかしこの日、ホームNACK5スタジアムでの大宮は、別のチームのようだった。前節の敗戦で降格圏に転落したチームは、『何が何でも勝点3』を取るために戦い、首位を窺う広島を相手に、シュート数8:7と上回り、決定機の数でも凌駕した。しかし皮肉にも、手にした勝点は0だった。

「アウェイ戦のように引いた戦いはしない。ボールを奪える可能性があれば前線からプレスをかけ、攻撃にも人数をかけていく」――ベルデニック監督が試合前々日に宣言した通りの戦いを、大宮は立ち上がりから演じた。2試合連続ゴール中の“夏男”長谷川悠と、この日が初先発となったズラタンが献身的に高い位置からプレスを仕掛け、中盤と最終ラインも押し上げる。アウェイで対戦したときには、石原直樹と高萩洋次郎の2シャドーを徹底マークした両ボランチが最終ラインに吸収され、両サイドハーフが広島の左右のDFを見る形で、間延びした6−4の2ラインの守備陣形にさせられていたように感じたが、「縦関係で上手くマークを受け渡して、ボランチが最終ラインに吸収されないようにやれた」(金澤慎)ことで、生命線である4−4−2のコンパクトなゾーンを保てていた。
ただし、大宮が一方的に良かったわけでもない。むしろ広島の運動量が少なかったことに助けられた。前線にボールを引き出す動きは少なく、ボランチやDFの攻撃参加もほとんどなかった。守備時にも中盤を埋めることができず、大宮はボールを奪うと「人数をかけて前に出ることができたし、自分たちの時間も作れた」(金澤)。長谷川はハイボールのターゲットとなり、ズラタンは献身的に動いてパスを引き出した。7分には右サイド渡邉大剛のアーリークロスに、最終ラインの裏でズラタンが頭で合わせ、西川周作を慌てさせた。

それでも先制したのは広島だった。24分、右サイドから清水航平が最終ラインとGKとの間に送ったグラウンダーのクロスは、佐藤寿人にわたる前に菊地光将がカットしたが、佐藤のチェイスを受けた菊地のバックパスが江角浩司の足元を抜けてゴールへと転がり込んだ。あまりの形の失点に意気消沈するゴール裏。1点を失うと、2点、3点と立て続けにやられた前節、前々節の嫌な記憶がよぎる。
しかし、この日の大宮はここから立て直した。再び前線からのプレスでリズムをつかみ、34分には渡邉が広島の最終ラインの裏に飛び出して青木拓矢のパスを受けてチャンスを作った。そして37分、チョ ヨンチョルが中盤で競ったボールを拾った長谷川が強引にドリブルで突進してPKを得ると、ズラタンがJ初ゴールを決めて試合を振り出しに戻して折り返した。

そして後半、試合が一気に激しくなった。森保一監督に「強い意志を持って戦え!」と喝を入れられた広島は48分、森崎和幸の縦パスから佐藤と高萩のワンツーを経て、右サイドから石川大徳がクロスを送る見事な崩しを見せる。逆サイドまで流れたボールを再び中央に持ち込んだところで、ペナルティエリア前で大宮のハンドを誘い、FKを獲得。その佐藤のFKが壁に当たってこぼれ、清水が元FWらしい見事なボレーを大宮ゴールにたたきこんだ。
再びリードを許した大宮も崩れない。「もっと高さを生かしてクロスを入れろ」との指揮官の指示通り、51分には渡部大輔のクロスに長谷川が合わせ、57分にも下平匠のクロスにズラタンが合わせる。広島もボランチやDFが攻撃参加。森脇良太のサイドチェンジから清水がクロス、石原がニアで競り佐藤が中央でねらった。試合は完全に撃ち合いの様相を呈し、ベンチも動く。サイドの消耗が激しい広島は63分に石川に代えてミキッチを、大宮も序盤から飛ばしていたズラタンに代えて金久保順を投入した。ともに攻撃的な交代。さらに試合が動くことが予想されたが、激しい撃ち合いは唐突に収束した。

問題は金久保の足首だった。65分20秒過ぎ、オレンジのストッキングの上から巻いた白いテーピングを見咎めた山本雄大主審が、競技規則に則って、ピッチ外で白い部分を隠す処置をするように指示。テーピングの上からさらにオレンジのテープを巻く処置をして、金久保はその2分後にタッチライン際でピッチ復帰をアピール。しかし主審は復帰を認めない。場内は騒然とした。大宮の選手はもちろん広島の選手まで「入れてやれよ」と主審にアピールするが、それでも主審は頑として認めない。10人での戦いを強いられている大宮に対し、広島は「攻めていいのかな? 何で入れないんだろう?」という感じで、後ろで延々とボールを回し続けた。結局、大宮がタッチラインにボールを蹴り出して金久保が復帰したのは69分近くにもなっていた。
しかしこれは、山本主審が正しかった。用具の不備による一時退場は、ボールがアウトオブプレーにならなければ復帰が認められない。治療による一時退場は主審の許可によってインプレー中の復帰が認められるため、筆者もなぜ復帰させないのかいぶかしがったクチだが、選手を含め多くの人が勘違いをしていた(そもそも、なぜ金久保がピッチ外に出ていたのか、その理由が周知されていたわけではないので、勘違いとも言えない。“治療のため”と思っていた人も多かったのではないか)。
ただ、山本主審にはまったく責任はないが、この一件で広島の選手がすっかり落ち着いてしまった。追いつこうと必死な大宮に乗せられて撃ち合いを演じていたのが、主審に対してイライラを募らせる大宮の選手やスタジアムの雰囲気に、逆に冷めてしまったようだった。ただでさえ前節の広島は、10人になった相手にリードしながら終了間際にカウンターで2点を失って敗れたばかりだ。「相手のホームだし、時間が進むに当たって状況判断を変えないといけない。3ポイントを取りにいくサッカーができた」と佐藤が振り返るように、以後は重心を後ろに移し、リスクを負わないサッカーに終始。大宮は79分、渡邉のクロスをチョ ヨンチョルがゴール前フリーで合わせたが、ヘディングは左に逸れた。この完璧な決定機を逃した大宮は、合流したばかりのノヴァコヴィッチ、さらには上田康太も投入するが、チャンスは作れず終了の笛を聞いた。

何人かの選手が口にしたように、「勝ち試合を逃した」とは言い過ぎかもしれないが、大宮は終始攻勢に出て互角以上の戦いを演じた。少なくとも、1か月半前のアウェイでの試合よりは、勝点を得るにふさわしい内容だった。それをポジティブにとらえたい。新戦力のズラタンの攻守における貢献には、今後を戦い抜く希望があった。
しかし同時に、この勝点3で首位を奪回した広島との間に横たわる差も感じずにはいられない。くり返すが、広島の出来は良くなかった。しかし良くないなりに、ここぞという場面を見極める力と、プレーの集中力は見事だった。スカウティングの通り大宮の連携に綻びが出そうだと、菊地を追いかけた佐藤のチェイス。いきなり目の前にこぼれてきたFKのこぼれ球を、ボレーで枠内にきっちりとらえた清水。この試合で広島のチャンスは少なかったが、それをきっちり、したたかにモノにする力が、広島の今の順位を支えている。

以上

2012.08.12 Reported by 芥川和久
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