試合開始前に清水の新マスコット=パルちゃんの彼女とも言われる「ピカルちゃん」が初登場し、スタジアムの雰囲気を盛り上げ、和らげた効果もあったのか、連勝効果もあったのか、清水の選手たちには勝てなかった時期の硬さや焦りは見られず、ホームで伸び伸びと思い切り良くプレー。それが、鮮やかなゴールシーンや強敵・名古屋に対する連勝につながったことは想像に難くない。
試合前はときおり雨が強くなる時間もあったが、試合中には雨の影響はほとんどなく、暑さを和らげたり、ボールを走りやすくしたりという意味では、連戦の選手たちにとってはむしろありがたかったかもしれない。
だが、立ち上がりは、名古屋がまだ十分目覚めていないような雰囲気があり、「ちょっと球際が弱かった」(藤本淳吾)という状態。そこを清水が突いて、開始4分に出場停止明けの左サイドバック・李記帝がドリブルできれいに2人を抜き去り、ゴール近くからクロスを入れる。このボールは走り込んだジミー・フランサには合わなかったが、逆サイドの阿部翔平がクリアミスしてオウンゴールとなり、清水があっさりと先制点を奪った。李に対する2人の軽い守備や、阿部の信じられないミスなど、名古屋らしくない守備は、水曜日のヤマザキナビスコカップ準々決勝での終了間際と同様だった。
しかし、これでようやく目が覚めた名古屋は、ヤマザキナビスコカップのリベンジに燃えて気迫を見せ始める。ボールへの寄せや球際の厳しさ、そして奪った後の動き出しも良くなり、主導権を奪取。そして、11分の小川佳純の左FKから田口泰士が頭でJ初ゴールを決めて、すぐに同点に追いつく意地を見せた。この場面、高さで不利な清水は、田口(174cm)へのマークが河井陽介(165cm)。河井はしっかりと身体を寄せてはいたが、良いボールが入ってしまうと止めようがなかった。逆に言えば、ここは名古屋が自分たちの有利をうまく生かしたとも言える。
その後も、しばらくは名古屋が同様の形で主導権を握ったが、20分前後から清水が落ち着きを取り戻してボールを丁寧につなぎ始め、逆に名古屋の足は止まり始める。真夏の連戦による疲労の影響が先に表われたのは、平均年齢の高さ、アウェイ、敗戦のショックと不利な材料が重なった名古屋のほうであったことは明らかだった。
そのため、前半の半ばからは清水が試合をコントロールする展開が続いたが、名古屋も守備で踏ん張り見せ、1-1のまま後半に折り返すかに見えた。しかし、アディショナルタイムの47分、バイタルエリアでルーズボールを得た高木俊幸が前向きにドリブルを仕掛け、ペナルティエリア内に入って左45度から一瞬のスキを突いて右足をコンパクトに一閃。これでうまくカーブがかかってゴール右上を打ち抜いた素晴らしいシュートは、名手・楢崎正剛にも止めようがなかった。
清水の側からいえば、これが9試合勝てなかった時期ともっとも変わった部分。高木の思いきりと決定力が戻り、公式戦3試合連続ゴール。良い時間帯に点を取るという流れができたことも含めて、本当に大きな収穫と言える。
ハーフタイムで一息ついた名古屋は、後半の立ち上がりでまた活力を取り戻して攻勢に出る。後半2分にダニルソンが左サイドに飛び出し、マイナスの折り返しから闘莉王が冷静にDFを外してシュートを打った場面などは、十分に“らしさ”を見せた。しかし、10分過ぎあたりまでしっかりと耐えた清水が、予想通りまた主導権を奪い返し始め、前半の後半と同様の展開になっていく。
そのためストイコビッチ監督は、後半13分に吉村圭司→田中輝希と攻めの一手を打ち、26分には小川に変えて三都主アレサンドロを投入して3バックに変更。ワイドな攻撃から活路を見出そうとしたが、これは成功せず、逆に29分にカウンターから痛恨の3点目を奪われてしまう。決めたのは、このところPK以外の得点から遠ざかっていた大前元紀。バイタルエリアでこぼれ球を拾うと、思い切りよく右足を振り抜き、左ポストぎりぎりに矢のような低いミドルシュートを突き刺した。
その後、名古屋はすぐに手を打って、後半31分に阿部に代えてFW巻佑樹を入れ、システムも4-4-2に変更。前線を闘莉王と巻のツインタワーにして、捨て身の反撃に出た。そんな中での41分、ダニルソンが再三見せていた左への飛び出しからクロスと見せかけて自ら得点を決めたところは、名古屋が底力を見せた部分。しかし、最後は清水の守備陣が身体を張って名古屋の猛反撃をしのぎきり、3-2でタフな同一カード2連戦を連勝で締めくくった。
名古屋のストイコビッチ監督にとっては、同じ相手に対する連敗はよほど受け入れがたいものだったようで、試合後の会見では「どんなチームにも限界がある。現状のサッカーが、今のチームが出せるマックスだと思う」と、ケガ人が非常に多いことに対する嘆き節も飛び出した。ただ、得点は2試合で5点取れており、本来の名古屋であれば十分に勝ちきれるはずのゴール数だ。台所事情が苦しいときだからこそ、不用意な失点は減らさなければならないだろう。
一方、これで公式戦3連勝となった清水は、それ以前に9試合勝てていなかった(リーグ戦)チームとは思えないような戦いぶりで、ホームでは5月3日の鹿島戦以来、6試合ぶりの勝利。鹿児島デーでアウスタに訪れていた鹿児島市長やマスコットの「西郷どん」、そして勝利の女神となったピカルちゃんも加わった久しぶりの“勝ちロコ”は、アウスタらしい楽しさに満ちあふれたものだった。
決めるべき人が気持ち良くシュートを決めたという意味でも、清水にとっては勢いにつながる大きな1勝。ただ、得点こそ取れなかったが、非常に良い動きと惜しいシュートを見せたフランサが、涙を浮かべながらサポーターに丁寧なあいさつをしていたのは、何かせつなく、意味深げだった。
以上
2012.08.12 Reported by 前島芳雄
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