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【J1:第21節 川崎F vs 鳥栖】レポート:運動量とスカウティングによる鳥栖の逆転劇。川崎Fは勝てる試合を落とす(12.08.12)

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風間宏矢は、前半36分に自身が絡んだ決定機を引き合いに出し、そのトラップミスによって負けたのだと明言した。エリア内でボールを引き出した風間宏矢は、そのボールを止めさえすればシュートにまで行けたはず。トラップさえできていれば、ほぼ確実に川崎Fが2点目を手にできるという場面だった。その風間宏矢にパスを出してチャンスメイクした小林悠は、62分に自らが蹴り、そして止められたPKの失敗がなければ、少なくとも負けることはなかったのではないかとうなだれた。この両選手の証言が象徴的に語るのは、川崎Fが勝利する可能性の高さだった。これらのいずれかの場面で、現実に起きてしまった事実とは違う結果になっていれば、この試合の行方はわからなかった。

風間八宏監督はもちろん、複数の選手が口を揃えたのが前半の拙攻である。風間監督は「1点を取った後に大胆さが少しなくなりました。それがうちにとって大きな穴でした」と振り返る。川崎Fが先制した前半の戦いは一方的なものだった。常にボールを保持していたのは川崎Fで、鳥栖に許したシュートはわずかに2本だった。ところが、一方的に試合を支配していた川崎Fが放ったシュートもわずかに5本。鳥栖がゴール前を固める展開の中、ボールはキープするが、シュートにまではいけないという試合を見せてしまった。
その原因の1つは鳥栖の粘り強い守備にあるが、それと同時に大胆さがなかったのだと風間監督は分析する。あまりにたやすくボールを繋ぐことができたため、川崎Fの選手たちの頭に、じきに追加点を奪えるだろうという雰囲気が流れていたのかもしれない。この風間監督の認識に沿うように、中村憲剛は「1点目を取った後にもっと取りに行かなければならなかった」と悔やんでいる。また田中裕介も「前半だけで、2〜3点取れているところもあったが、取れなかった」と振り返る。そしてチーム全体の課題として「行くべきところの判断も悪かったと思います」と述べている。崩すべき場面。ボールを繋ぐべき場面。そうした局面局面の判断が悪かったというのである。主導権を握りながらも拙攻によりチャンスを失った川崎Fの攻撃を耐えたことで、鳥栖は後半に入って息を吹き返す。

水沼宏太によると「ハーフタイムにカツを入れられたのもある」としつつも「一人ひとりの役割をはっきりさせたという事がありました。それによりショートカウンターにも繋げられましたし、後半は自分たちのサッカーができたと思います」と後半を振り返る。川崎Fの拙攻により命拾いをした鳥栖は、後半に入って改めて前線からの守備を徹底させ、川崎Fを慌てさせた。そんな中で生まれた鳥栖の得点は事前情報どおりの形だったという。
「得点は必然的なものです」と話し始めた水沼は「速いボールを入れていけば弱いというのはスカウティングでわかっていました。1点目のオウンゴ−ルも2点目のトヨくん(豊田陽平)のゴールも狙い通りでした」と述べる。わずか2分間に畳み掛けられた2失点について風間監督は「2分間、忠実に守る。忠実に戻るということができなかった」と悔やんだ。

守備的な意識を強める鳥栖は、PKを与えた直後の65分に早坂良太を下げ、小林久晃を投入。5バックにフォーメーションを変更し守りを固めた。結果的にその壁を敗れなかった川崎Fの選手たちは、もっとやりようはあったはずだと反省する。PKを奪う攻め上がりを見せた大島僚太は「もう少しミドルシュートを打っても良かったのかなと思います」と話す。また中村は「5バックの相手に対し、安易に外に行くのではなく、しっかり繋いで行けばもっとチャンスは作れていたはず。攻めを放棄する相手に対して外と中の連携で崩さないとダメです」と反省した。

鳥栖の守備をあまりにも重視する陣形については疑問視する向きもあるかもしれない。しかし彼らはJ1昇格初年度のチームであり、まずは残留を目標としている。試合後におおよその残留ラインである勝点34に到達したことを聞かれた豊田陽平は「それを聞いてびっくりしています」と述べつつ「慢心はせずにもっと確実に残留できるように勝点を積み重ねます」と話している。そして「うちは残留が目標。相手の監督からこれまでも(戦い方について)言われていますが、それぞれのチームに立ち位置がある。それを遂行して勝点を取れているし、これを変える必要はないと思う。みんなが同じサッカーをしていてもおもしろくないと思いますしね」と述べ、残留至上主義の今のサッカーを変える必要がないとの認識を示している。そしてチーム内得点王にこう言わしめるところに今の鳥栖の勝負強さがあるのだろうと思う。理想よりも現実を見据え、そこに邁進する。豊田は献身的なチェイシングによって試合終盤には足をつらせ、交代を余儀なくされている。結果を出してきたストライカーも別け隔てなく走るのである。よく、ベクトルを合わせるという言い方をするが、強さとはそうした根本的なところにそのヒントが隠されている。
リアリティの前に敗れた川崎Fは、理想を追い求めてチーム作りを続けている。シーズン途中からの指揮ということもあり、風間監督が現場をまとめるのは簡単ではなかったはず。もちろん、まだまだやるべきことは多いが、次第にチームはその攻撃の形を見せつつある。理想と現実とが真っ向勝負して、そしてこの試合に関しては、現実に敗れたという事実を胸に刻みつつ、川崎Fは理想を追求し続けていく。目指すゴールはまだまだ先だ。

以上

2012.08.12 Reported by 江藤高志
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