水曜日のヤマザキナビスコカップ準々決勝第2戦で、超エキサイティングな激闘を演じた両チームが、わずか中2日で再び対決。リーグ戦で上位進出の足がかりを作る意味でも両者にとって重要な戦いだが、それ以上に男と男のプライドがかかった熱い戦いになりそうだ。

今度はアウスタに戻って戦う清水は、第19節の横浜FM戦（7/28）までは9試合勝つことができず、チーム史上ワーストの記録を作ってしまったが、第20節の広島戦で10人になってから逆転して10試合ぶりの勝利をつかんだことで、一気に風向きが変わり始めた。そして水曜日のヤマザキナビスコカップでは、残り3分で2-3にされ、2点取らなければならない状況に陥ってから見事に2点を奪い、準決勝へのチケットを獲得。2試合連続の劇的な勝利で見せた土壇場での強さは、チームの底力を存分に感じさせてくれるものだった。
ただし、このままだと「エスパルスは追い込まれないと力を発揮できない」と言われかねないので、この試合に勝って、本当に勢いが戻ってきたことを証明することが何より重要になる。

また、単に勢いだけでなく、内容的にも明るい材料が出てきている。とくに、勝てなかった時期に最大の問題だったゴール前の決定力という部分で、改善の兆しが見え始めたのは大きい。不調からスタメンを外されることが多くなっていた高木俊幸が、広島戦で大逆転の立役者となり、水曜日の名古屋戦ではアディショナルタイムの決勝ゴールを決める大活躍。彼らしい思い切りの良さが戻り、「ゴールに向かう姿勢が強くなってきている。危険な所に入れる嗅覚が戻ってきた」と本人も手応えを口にする。
さらに水曜日には、ジミー フランサと瀬沼優司という2人のストライカーが清水での初ゴールを記録。その後、瀬沼はいったん大学に戻ったが、フランサはその他にも惜しいシュートを放っており、確実に調子を上げてきている。今季はセンターフォワードがなかなか点を取れないことが大きなネックになっていたが、フランサがこれできっかけをつかみ、ゴールを量産するようになれば、チームの流れは大きく変わるかもしれない。

清水の守備に関しては、このところ少しイージーな失点が増えているが、組織が崩れているわけではない。今節は、サイドバックの吉田豊が左太もも裏を痛めて出場が難しいかもしれないが、李記帝が出場停止から復帰するため問題はないだろう。2試合続けて採用している2ボランチの形もうまく機能しており、そこで見せるゲームキャプテン・杉山浩太の組み立ても、攻撃面で大きなプラス要素になっている。

対する名古屋は、水曜の試合でも、藤本の2ゴールによって87分に3-2とリードしたところまでは、名古屋らしさを十分に見せつけていた。だが、「おそらく選手たちも3点目を決めた後、このゲームは勝ったと思ってしまったのでしょう。その隙を突かれ、清水に点を入れられてしまいました。あれはプロとしての行動ではない」（ストイコビッチ監督）という形で立て続けに2点を奪われ、指先のわずかな隙間から準決勝へのチケットを逃してしまった。
負けた原因は、戦力的なものでも戦術的なものでもないことは、選手たちも心に刻みつけている。当然、優勝争いに加わっていくためにも、自分たちのプライドを保つためにも、2試合続けて清水に敗れるようなことは許されない。
ケネディの復帰が間に合わなければ、今度も田中マルクス闘莉王がセンターフォワードとして起用される可能性が高く、連戦の疲れがたまっているからといって、大幅にメンバーを入れ替える余裕は、ケガ人が多い今の名古屋にはない。清水に比べて30歳以上の選手が多いため、体力面では多少不利になる可能性がある。

しかし、自分たちがミスを犯すことさえなければ、負けることはないと名古屋の選手たちは考えているだろう。もちろん、それは清水の選手たちも同じ。20周年の記念試合でもホームで勝てなかった清水としては、今度こそアウスタで（6試合ぶりに）サポーターに勝利をプレゼントしなければならないという想いが強い。そして、選手とスタンドが一体になった“勝ちロコ”が久しぶりに行なわれてこそ、清水の自信と勢いは本物になる。

以上

2012.08.10 Reported by 前島芳雄