11節に渡ってJ2で継承されてきた「首位は勝てない」というジンクスが崩れた。J2ファン・サポーターの期待を背負って首位・甲府を迎え撃った草津だったが、前半にセットプレーから2失点を喫して甲府に勝点3を献上。意地を見せられなかった草津は、J2各クラブによって継承されてきたジンクス死守のミッションに失敗した。

首位撃破を狙った草津だったが、試合前日にショッキングな“事件”が発生した。クラブはチーム得点王へベルチをＣ大阪へ期限付きで放出。前節福岡戦でゴールを決めたヘベルチは木曜まで甲府戦へ向けた実戦練習に参加していたが、サポーターに対して別れの場もないまま突然の離脱。草津は、ようやくチームにフィットしてきた攻撃の要を失った中で甲府戦へ臨まなければならなくなった。

ヘベルチに代えて、櫻田和樹を左MFに配置した草津は、3列の守備ブロックを組んで甲府と対峙する。だがゲームが落ち着き出した矢先の12分、草津は甲府に右CKを与えると、その2次攻撃を受けて痛恨のオウンゴール。草津は、許してはいけなかった先制点を甲府へプレゼント。前半を凌いで後半勝負へ持ち込むという草津のゲームプランはあっさりと崩れた。
草津の、次なる「ため息」は前半終了間際の42分だった。甲府の右サイドの圧力に屈してファールを与えた草津は、山本英臣のFKからダヴィに追加点となるヘッドを流し込まれて、セットプレーから再び失点。サインプレーでマークを外した甲府の動きとダヴィの決定力は確かにレベルが高かったが、2点目の重要性を考えると草津としては意地でも守り抜かなければいけなかった。

2点ビハインドとなった草津は後半開始から、新ブラジル人アレックス・ラファエルとリンコンを同時にピッチへ送り出す。リスクを負って攻撃に出た草津は、2列目が積極的にバイタルへ入り込み、甲府のラインを下げていく。そして後半33分、アレックス・ラファエルのポストプレーから松下裕樹が低弾道のミドルをねじ込んで1点を返す。その後も捨て身の攻撃を仕掛けたが、甲府の壁を崩すことができずにゲームを終えた。

甲府はエース・ダヴィの強さを前面に押し出すサッカーで、セットプレーから2点を奪い快勝。「首位は勝てない」というジンクスを、自らの力で破ってみせた。城福浩監督は「首位は勝てないというJ2の流れの中で、勝点3を取れたことは胸を張れる」と、選手を称えた。ただ今ゲームでイエローカードを受けたダヴィが次節から2試合出場停止。エース抜きの2試合が、首位固めへの試練となる。

甲府を首位から引きずりおろすことに失敗した草津は、またしてもホームで勝てずホーム5試合勝利なし。後半に捨て身の反撃を実行して1点差に詰め寄ったが、勝点を奪うには及ばなかった。この結果、順位を下げて17位。中位は混戦となってはいるがプレーオフ進出の目標は、遠くに霞んできた。ヘベルチ移籍による戦力ダウンの中、シーズン終盤をどう戦うのか。これまでの幾多の苦難を乗り越えてきた草津の底力を信じたい。

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2012.08.06 Reported by 伊藤寿学