「松田直樹 松本の松田直樹 俺たちと この街と どこまでも」
アルウィンに響くチャント。そして、キックオフ直前に大型映像装置で流された在りし日の記憶。
松田直樹がピッチから姿を消して1年が経った。この日、アルウィンに駆けつけた観客は10,642人。そして県内外から多くのメディアの姿もあった。今日が普通の試合でないことを改めて思い知らされる瞬間だ。もちろんここで勝点3をきっちりと得て、良い報告が出来ればよかったのだが、そのようなシナリオは残念ながら用意されていなかった。
前半戦での愛媛との対戦(第4節)は0-3の大敗だった。「今季一番悪い試合」(反町康治監督)となった要因は試合の入り方であった。試合後に多くの選手の口から聞かれた「試合の入り方を間違えた」との言葉通り、開始直後からふわふわとした展開で流れを引き寄せられず、一度集中が切れるや取り戻すことが出来ないまま失点を重ねた結果、完敗。それから4ヶ月あまり。どのような前半45分間を送ることができるかが、この日の分水嶺であった。
しかし勝利への執着心は後半戦勝ち星に恵まれていない愛媛も同様だった。13分、玉林睦実が左サイドの鐡戸裕史へ大きなサイドチェンジを見せて、そこで流れを掴んだかと思われたが、長続きしない。「攻撃が単調。ディフェンスの裏一辺倒だった」と鐡戸が反省するように、連動性に欠けた攻撃は「単発」(反町監督)そのもの。これは愛媛にすれば思い通りであった。バルバリッチ監督が「ロングボールはそれほど問題ではなかった」と語るように、愛媛の最終ラインはこれを落ち着いて弾き返し、そこからサイドを起点に前へと仕掛け、そこに有田光希・福田健二の2トップと中盤のトミッチがゴール前に顔を出す。初スタメンの伊藤竜司を含む3バックも身体を張って対処はしていたものの少しずつマークが散漫となり、34分には内田健太にねじ込まれ愛媛が先制。追う立場となった松本は前半終了間際にあったセットプレーのチャンスを生かせず、1点ビハインドのまま後半に突入する。
「ゲームプランのミスだった」と試合後の記者会見で述べた指揮官は早めに修正へ動く。ユン・ソンヨルをアンカーに、後半頭から投入した喜山康平を前目に配置したシステムへと変更。チェ・スビンそして久富賢といった攻撃的なカードを切り、前線の活性化にも着手。一方の愛媛もゴール前で仕事のできる選手を入れて突き放しを狙う。両チームに得点の匂いが漂った77分の投入からわずか3分後に久富が大仕事を果たす。愛媛ディフェンスのクリアボールを拾い、「股を抜こう、とりあえず狙おう」と右足を振り抜いたシュートは、密集地帯をすり抜けて愛媛ゴールに突き刺さった。起死回生のゴールでホームチームが活力を取り戻したものの、その後はお互いにフィニッシュの精度を欠き、幾度かあった決定機も生かせないまま終わった。
勝点1を分け合った結果になったが、愛媛は村上巧が「悪くはなかった。ベクトルは良い方向に向いている」と手応えを口にするように、攻守に組織立っていたサッカーはポジティブな印象が残るものであった。後半戦は確かに勝利から遠ざかっていたが、これも産みの苦しみということだろう。
一方のホームチームである松本はまたも試合の入り方に苦慮し、松田に勝ち星を届けることは叶わなかったが、負け試合を引き分けに持ち込むだけの力がついてきたとも言える。両チームとも前向きにとらえるならば、すっきりとはしないまでも半歩前進はしたように映る夏の夜だった。
以上
2012.08.06 Reported by 多岐太宿
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