前半は膠着した時間帯もあったが、後半、特に川崎Ｆ・レナト投入以後は徐々にオープンな展開となったこの一戦。5月上旬のリーグ戦で対戦した時と同様、点の取り合いとなったが、互いに決め手に欠く場面もあり、結果的に勝点1を分け合う結末を迎えている。

磐田の新戦力・ハン サンウン、小林祐希はベンチスタートとなり、結局出番なし。存在感を見せたのは川崎Ｆの新戦力・風間宏希、風間宏矢だった。

序盤、緻密なパスワークから均衡を破ったのはアウェイの川崎Ｆ。「チームが一つになっていた」（川崎Ｆ・風間八宏監督）という圧巻のゴールに風間兄弟もしっかりと絡んでみせる。複数本のパスをつないだ末に生まれた先制弾は相手のクロスを西部洋平がキャッチし、すぐさま右サイドの小林悠へスローした瞬間から始まった。パスを受けた小林悠が中村憲剛とのワンツーを交えながら前線にボールを運び、左サイドへ展開。相手を自陣へ押し込むと、ここからリズミカルにパスをつなぐ。タッチライン際でパスを受けた楠神順平、そのまま左サイドへ残った小林悠、さらにボランチ・稲本潤一、左サイドバック・山越享太郎らが加わりためを作ると、相手を牽制しつつインサイドへ侵入。一度は相手にボールを触られるもボランチ・風間宏希がこぼれ球を拾い、以後、風間宏希→中村憲剛→田中裕介とパスをつないで今度は右サイドへ展開。田中裕介のリターンパスを受けた中村憲剛が縦パスを入れたところで攻撃のギアを一段階上げることになる。ペナルティーエリア内でパスを受けたFW・風間宏矢からワンタッチで“落とし”をもらったのは先の縦パスと同時に前方へダッシュし、マークを外した風間宏希。前向きでボールを持ち、相手のスライディングをかわしたところで混戦となるも、ここで後方へのヒールパスへ切り替えたところで勝負あった。最後はゴール前へフリーな状態で走り込んだ田中裕介が流し込み、スコアを動かした。なお、先制点を決めた田中裕介はゴール後、指を3本立て、天を仰いでいる。8月4日は「大先輩」（同選手）の1周忌。試合後は「点を取れるとは思っていませんでした」と謙遜していたが、特別な感情が彼をゴール前へと突き動かしたのかもしれない。

対する磐田もハイレベルなゴールで同点に追い付く。こちらは緻密かつ、“豪快”な一発だった。前半終了間際の43分、磐田の同点弾もクロスをキャッチした八田直樹が右サイドへスローしたところから生まれている。以後、駒野友一→小林裕紀→山田大記と確実にボールをつないで前方へ進むと、いったん最終ラインへボールを下げてからチャンスをうかがう。以後、コート中央でロドリゴソウト→山田大記→松浦拓弥とパスをつなぎ、左サイドへ展開。左サイドバック・宮崎智彦から横パスを受けた山田大記、さらにロドリゴソウトとボールキープしながらシュートチャンスをうかがうも、相手守備網を打開しきれず、一旦右サイドへ展開。駒野友一のところで仕切り直したところで再びゴール中央で勝負をかける。小林裕紀→ロドリゴソウト→前田遼一と短いパスをつなぎ、最後にボールを持ったのは山崎亮平。相手を2枚背負った状態だったが、“半身”で上手くボールをコントロールし、ワンフェイク入れた後に強引に右足で振り抜く。意表を突いたシュートは2人のDFの間を抜け、豪快にゴールネットに突き刺さった。相手ゴール前でやや手詰まり感もあったが、最後は背番号9の“力技”で局面を打開。「思いきり打った」（同選手）という彼らしい強気なシュートだった。これには磐田・森下仁志監督も「シュートも素晴らしかったし、それまでのボールの動かし方も素晴らしかった。あれが自分たちのスタイル」と賛辞を惜しまなかった。

前述した通り、後半はアップテンポな展開となる。互いに間伸びした状態が散見し、カウンターの応酬となる場面も少なくなかった。75分に磐田がオウンゴール（駒野友一のクロスを井川祐輔がクリアしきれなかった）で勝ち越すと、川崎Ｆも譲らず82分に途中出場のレナトのゴールで同点。試合全体で見れば磐田の決定機の数が川崎Ｆのそれを上回っていたものの、終わってみればスコアは2-2。惜しくもホームチームが勝利を逃す結果となった。しかしながら、両者のチームコンセプトがにじみ出た前半の2つのゴールは夏休みの子どもたちを魅了しただろう。試合を重ねるごとにクオリティーを上げつつある両チームが今季どこまで進化するかに注目だ。

以上

2012.08.05 Reported by 南間健治