勝ちにこだわった鳥栖。そこには、初参戦となるJ1での最低目標である『J1残留』があるのだろう。また、ベストアメニティスタジアムに集まったお客さまへの感謝の気持ちも含まれている。そして、何よりもプロとしてのプライドがそうさせたのだろう。
敗れはしたものの、鹿島も堂々と試合を振り返ってくれた。7月28日に第19節・広島戦を戦い、8月1日に『スルガ銀行チャンピオンシップ2012IBARAKI』を終えたばかりの選手たちの疲労は想像をはるかに超えるものだ。それでも、「フィジカル的な部分の対応は、非常にうまくできていた」とジョルジーニョ監督は試合後に気丈に語った。「連戦の影響は言い訳にしたくない。鹿島の力不足」とDF岩政大樹は、敗因を自分たちに向けた。これも、プロとしてのプライドがさせることなのだろう。
当レポートは、両者にリスペクトの意味を込めて、試合内容だけをお届けすることにする。初体験や経験不足、疲れや日程などの背景は、あえてここでは触れないでおくことをご了承願いたい。
19時のキックオフ。グランドは気温30度を超えていた。ナイトゲームとは言え、立っているだけでも汗ばむ状況。サッカーは、得点を奪うことに一番苦労するスポーツであることは周知の事実。この試合もどちらが1点を先に奪うのかに注目が集まった。
鳥栖のGKは、奥田達朗。前節の試合で、赤星拓がケガをしたために、今季2試合目の出場となった。前回の出場は第16節・札幌戦(6月30日ベストアメニティスタジアム)で、初めてボールに触ったのはキックオフから9分を過ぎたころだった。そこを振り返ると「もっと早くボールに触って落ち着きたかった」(奥田達朗/鳥栖)と緊張の色は隠せなかった。しかし、今節の試合では、開始20秒でボールに触れることができたことで、幾分かの落ち着きを見せたような気がした。
逆の見方をしてみたい。
鹿島の選手たちは、中田浩二、小笠原満男、岩政大樹など百戦錬磨の精鋭たちが揃う。数々の記録を打ち立てた実績は、相手にペースを握らせない戦い方を身体で覚えているに違いない。鳥栖に勢いを与えず、DFラインを下げ、前線から間延びさせて鹿島のプレーエリアを確保するためには、鳥栖のDFとGKの間を突いていくことが有効だと気付いていたはずだ。あれだけの展開力を持っているチームなので、鳥栖が守備のブロックを引いても、そこを突くことは可能だったはずである。
実際に、MFレナトとドゥトラが自由に動いて後方から上がっていくスペースを作ることはできていた。FW興梠慎三と大迫勇也も鳥栖のDF裏を狙う動きを幾度も見せていた。彼らだけで、放ったシュートは13本と、鳥栖の総シュート数を上回る数である。
しかし、スペースを作りシュートを放っても、鳥栖のDFはラインを下げることはなかったし、GKがあわてて飛び出してくることも少なかった。これは、鹿島の攻撃が、いつになく単調になっていたせいではないだろうか。あの、相手を追い込みながら崩していく鹿島のポゼッションサッカーではなかったと筆者には感じた。
鳥栖にしてみれば、そんな鹿島の攻撃は想定済みだったのではないだろうか。もっと、サイドを使われて、様々なクロスボールを入れられての対応を覚悟していたのではないだろうか。しかし、そんな状況に追い込まれることが少なく、しっかりと守備のブロックを引くことができていた。
「普段と変わりなく戦えた。冷静に最後まで戦えた」とは、DF丹羽竜平のコメントである。18本のシュートを受けながらも、自分たちの形で守り切れたということにほかならない。
そして、そこから2得点へつなげた。シッカリと守り、そこからシンプルな攻撃に移るのが今季の鳥栖のサッカーである。「鳥栖の特徴はロングボールで、そこからスローインやコーナーキックにもっていき、何かしらのチャンスを作るチーム」(ジョルジーニョ監督/鹿島)らしい形で2得点を奪って鳥栖が勝利した。23分と61分にセットプレーの流れから、MF水沼宏太とFW豊田陽平が決めて鳥栖に勝点を上積みした。
68分からは、DFに小林久晃を入れて5バックを形成し、ゴール前の人数を増やし無失点で切り抜けた。いやらしいまでのポゼッションとサイドを使った攻撃という形を出せなかった鹿島。鳥栖に敗れたのではなく、鹿島のサッカーができなかったことが敗因だった。
少ないチャンスからでも自分たちの形で得点し、全員で身体を張っても盛りきった鳥栖。守備的に90分間を守りきったのではなく、鹿島にストロングポイントを出させなかったのが勝因である。
試合後の選手たちに、プロとしてのプライドを見せてもらった試合でもあった。
勝者には勝者なりの理由があり、敗者には敗者なりの言い分がある。その言葉の中には、戦った者にしかわからない事実が隠されている。
相手へのリスペクト、次の試合への奮起、仲間への叱咤激励などなど、試合後のコメントを聞きながら、色々と想像してしまう。
一個のボールが織り成すドラマには、どんな言葉を使っても表現できないシーンが隠されている。
スタジアムで、選手の表情から読み取るしかない。
サッカーは、終了のホイッスルとともに次の試合が始まっているスポーツである。
以上
2012.08.05 Reported by サカクラゲン
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