唐突だった田坂祐介のドイツ2部・ボーフムへの移籍には驚かされたが、26日には柴崎晃誠の東京Vへの期限付き移籍が発表され、重ねての驚きとなった。井川祐輔は「（選手は）入れ替わるもの。出ていった選手も輝きたくて出て行ってる。それは尊重したいし、残ったメンバーでやるしかないので、がんばるだけです」と連続した移籍について前向きに話す。

チームを去る選手がいる一方で、新規に加入する選手もいる。選手登録が終わり、ポジション争いに名乗りを上げることになる風間宏希、宏矢兄弟に加え、特別指定選手としてすでに登録され、広島戦で試合出場を果たした山越享太郎の三選手である。彼ら三人は他の選手とも遜色のないレベルのプレーを見せており、高いポテンシャルが伺える。試合に出場するとして、実際にどのようなプレーを見せてくれるのか注目したいところ。

そんな中、チームが最優先で取り組むべき課題として得点力不足の解消が上げられる。というのも現在の4試合連続無得点は実はJ1でのチームワースト記録。過去には降格した2000年の2ndステージ第2節からの3試合、2005年に第14節からの3試合で連続無得点という記録が残っているが、4試合連続は初めてである。

風間八宏監督の就任直後によく見られた相手最終ラインの裏に飛び出すという形は、ここ数試合は封じられた状況にある。多くの場合、中村憲剛がその攻撃の起点であるという点。そして、矢島卓郎がそのパスの受け手として活躍していたということで相手チームに研究されたという事はあるのだろう。そうして裏のスペースを使わせないように試合を運ぶ相手チームに対し、川崎Fは上手く攻撃を組み立てられなかった。必然的に狭くなるゴール前のスペースを上手く使えなかったのである。ということで、0−3で大敗した広島戦からの2週間は、攻撃面の改善を主眼とした練習を続けてきており、手応えを感じているのだと風間監督は話す。

「人も変わっているし、後ろはボールを持てるようになっている。そうなると前の動きと技術の高さがすごく重要になる。急に変わるかどうかはわからないけど、認識上は変わりつつあるので、順調な2週間だったと思います」

またケガの治療のため、今週半ばに全体練習に合流した中村は久しぶりに加わった練習で手応えを感じているという。

「これまではごちゃごちゃっとしましたが、（風間）兄弟が入って球離れは良くなった。停滞もなくなった気がします」

中村はゴール前を固めようとする相手に対し有効な崩しができているのだと話す。そしてそのキープレーヤーとして名前が出てくるのが風間兄弟である。彼らが入ることでパスがつながるようになっているのだという。そもそも風間兄弟については井川が「（宏希、宏矢は）うちらより監督のことは知っている。基本的なことは僕らよりも知っていると思う」と話す。風間監督が求める基本的な技術に関してはマスターできているのである。あとは試合でその技術を出せるかどうかという点が問題となる。Jリーグのデビュー戦となる彼らのプレーぶりにも注目してみたい。

川崎Fに乗り込んでくる大宮は、ラファエルと金英權と、攻守で軸になりうる選手がチームを離れたのに加え、東慶悟がロンドン五輪のためU-23日本代表に招集されて不在。チーム事情は川崎F以上に厳しいものがある。特に東は攻撃のスイッチを入れられる選手なだけにダメージは少なくはないだろう。ただチームはラファエルの移籍した穴を埋めるべくスロベニア代表のズラタン リュビヤンキッチを獲得。南アフリカワールドカップにも出場し1ゴールを決めた大型FWなだけに川崎F戦に間に合うようであれば脅威となりそうである。

大宮は、今季川崎Fから移籍したキャプテンの菊地光将が中心となり、最終ラインを構成している。楠神順平に言わせると去年まで共に戦っていたという点で「厄介な相手」という相手である。ある程度川崎Fにボールを持たせつつ、カウンターを狙うという試合展開も考えられる。そういう点で、川崎Fとすればうまくリスクを管理しながらの攻撃が求められる試合となる。

等々力での勝利は13節の仙台戦以降2ヶ月も途切れている。サポーターを大事にするチームなだけに、選手たちはなんとかサポーターに勝利を味わってもらいたいと意気込んでいる。ただ、大宮も簡単に引き下がることはないだろう。いずれにしても、川崎Fはシュート数を増やしたい。大宮がそんな川崎Fにどのように対抗するのか、注目したいと思う。

以上

2012.07.27 Reported by 江藤高志