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【ヤマザキナビスコカップ 清水 vs 名古屋】レポート:成長痛のジレンマに苦しむ清水に、現実主義の名古屋が先勝。19歳・吉田の活躍で貴重なアウェイゴールをつかむ(12.07.26)

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清水サポーターにとっては、「また今日も同じか…」と思わずため息をついてしまうようなゲームだった。逆に名古屋にとっては、内容よりも結果にこだわりながら戦った中で、ある意味思惑通りの結果。理想と現実の対立という観点からすれば、今回は現実主義のほうが結果に結びついたと言える。

スタンドで座っているだけでも逃げ出したくなるような蒸し暑さのアウスタで行われた準々決勝第1戦。公式記録では気温27度、湿度87%(!)で風もほとんどなく、汗がなかなか引かずに非常に不快なコンディションだったが、メンバー発表でひとつ大きなサプライズがあった。名古屋のDF田中マルクス闘莉王が、FWとしてメンバー表の下のほう(攻撃側)に名前を載せられていたのだ。ケネディと玉田圭司が負傷欠場で、永井謙佑が五輪代表で不在のためFWの層が薄くなり、まさに苦肉の策として闘莉王がセンターフォワードに入ったが、観る側としては彼の攻撃力がよくわかっているだけに、非常に楽しみな器用ではあった。
そして試合直前には、月曜日に亡くなられた元静岡県サッカー協会理事長の堀田哲爾氏に黙祷を捧げてキックオフ。堀田氏は清水サッカー界の父とも言える人物で、清水エスパルスの設立にも中心的に働いた恩人でもあり、清水の選手たちは腕に喪章を巻いてピッチに立った。

清水にとって「また同じ…」という意味では、ボールを支配することはいつも通りできていた。とくに今回は、杉山浩太がアンカーに入って落ち着いたボールさばきを見せ、機を見て効果的な前方へのパスを入れていったことで、ビルドアップの質はいつも以上。逆に名古屋のほうは、前線だけでなく中盤でもダニルソンと田口泰士が共存するなど慣れない面があったため、パス回しのリズムはもうひとつ。そこに清水の早いプレッシングが効いて、中盤で清水が素早く奪い返すシーンも目立った。

注目の闘莉王は、期待通り高いキープ力を見せて、自分に入ったボールはうまく処理していたが、ボールを引き出す動き自体は少ないため、クサビのパスが入る回数が少なく、見せ場をあまり作れない状況が続いた。
ただ、名古屋としては、アウェイでのそうした展開は「ある程度想定内」(藤本淳吾)というところ。少し引いた状態でブロックを作り、遠めからクロスが入ることはある程度容認。あとは中で跳ね返せば良いという感覚で、落ち着き払った守りを見せた。名古屋のDFラインでは、センターバックの増川隆洋が191cm、ダニエルが186cm、右サイドバックの石櫃洋祐が178cmで、清水が単純なクロスを入れても高さでまったく勝てない。そのため、清水の攻撃陣はDFとGKの間に速いクロスを入れるという狙いも見せたが、「それも、あのレベルのDFだと跳ね返されてしまう」(小林大悟)という手詰まり状態。
セットプレーの場面でも、センターバックの2人加えて、闘莉王(185cm)とダニルソン(185cm)が4枚で高い壁を築いて、中央はほぼノーチャンス。清水としては、そこを避けてCKをニアで合わせるなどの工夫も見せたが、よほど良いコースにシュートが飛ばなければ入らないという状況だった。
そんな中で17歳の石毛秀樹が、意欲的なドリブルでの仕掛けから前半だけで3本のミドルシュートを放つなど輝きを見せたのは、清水にとっては明るい材料のひとつ。だが、そうした遠めからの仕掛けでスーパーシュートが炸裂しなければ、なかなか点が入りそうもない雰囲気が漂っていた。

そうした流れは後半に入っても変わることはなかったが、清水のほうは伊藤翔に代わって後半頭から入ったジミー・フランサが、これまでで最高と言える動きの良さを見せ、屈強なDFとの競り合いにも引けを取らずにチームを牽引。後半18分には、石毛の左クロスに競り勝って惜しいヘディングを放つなど、フランサがかなり可能性を感じさせたことも明るい材料のひとつだった。
しかし、清水にとって本当に決定的なチャンスと言えたのは、後半34分の大前元紀のシュートや、後半アディショナルタイムでの杉山のシュートなどごくわずか。名古屋のように最後の壁が非常に厚くて高い相手に対しては、決定力をどうこう言う以前に、攻めきれないという課題のほうが大きいように見えた。

一方、名古屋のほうは、後半32分に清水のわずかなスキを突いて高い位置でボールを奪い、2年目の吉田眞紀人(後半13分〜出場)が左足で鮮やかなミドルシュートを決めて決勝点をゲット。吉田にとっては、これがうれしいプロ初ゴールだったが、名古屋のほうは限られたチャンスをきっちりと生かした。
また、この場面で巧みなアシストを見せた闘莉王も、後半14分に惜しいミドルシュートを放つなど、チャンスは少なかったが何かやりそうな雰囲気は十分に漂わせ、清水にとっては最後まで恐い存在であり続けた。
そして、5分間のアディショナルタイムまで清水の攻撃を抑えきり、第1戦は名古屋の1-0で終了。貴重なアウェイゴールを奪って、ホームでの第2戦に向けて大きなアドバンテージをつかんだ。

逆にホームで2連敗となった清水は、主導権を握りながらも点が取れないという試合展開が、最近の勝ちきれないゲームとまったく同じ。こうした展開になることは、チームが着実にレベルアップしていることの証明でもある。だが、だからこそ相手に守りを固められ、点が取りにくくなっているという側面もある。そこが今の清水にとって最大のジレンマだ。
チームが成長過程にある中で、乗り越えなければならない大きな壁のひとつだが、そのためにどうすれば良いのか、まだ答えが見つかっているとは言い難い。だから、もう少し我慢が必要なのかもしれないが、少なくともここで戦い方を変えるというのは得策ではないはずだ。

以上

2012.07.26 Reported by 前島芳雄
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