たとえば13分のシーンだ。永木亮太から、相手のアンカー横のスペースに入った岩上祐三を経て左サイドへ展開する。高山薫が前を向いて持ちこむ間に、永木は大外を追い越し、岩上と馬場賢治がゴール前に走る。高山のクロスは岩上を経由し馬場に渡った。オフサイドにはなったものの、相手のシステムの特徴を突いて崩しにかかる湘南の意図が見えた。
次第にリズムを掴んだ湘南は、それから程なくして再度決定的なチャンスを迎えている。岩上のサイドチェンジから右サイド深くに上がった古林将太がクロスを送り、ファーサイドで高山がヘッドを合わせる。前半の終盤には古林のスルーパスに菊池大介が抜け出し、折り返しに高山が走り込む。相手DFの粘りもあり、いずれも枠を捉えきれなかったが、敵を引きつけながらスペースを使い、両サイドから効果的に攻めた。また前回の対戦で決められている宮阪政樹のフリーキックも、GK阿部伸行が横っ跳びでキャッチしている。
湘南が優位に進めた前半である。ただ見方を変えると、アウェイの山形はホームチームの流れをしたたかに凌いだともとれる。「前半を0-0で終えて、後半勝負にいこうとみんなで話していた」と中島裕希は明かす。湘南のバイタルアタックをケアしたのだろう、山形は後半に入ると廣瀬智靖を投入し、宮阪と永田亮太のダブルボランチにシフトした。反撃の予兆は開始間もない。廣瀬を起点に中島が右サイドで仕掛け、折り返しに山崎雅人が反応する。だが湘南DF陣もスピードを活かしてフィニッシュを許さない。
一方、湘南もまた攻め立てた。菊池が、岩上がDFのあいだに抜け出し、シュートを狙う。足を止めずに競り合いやセカンドボールで上回り、ゴールへの集中力も時計の針とともに高められていくようだった。「ゴールに向かおうという気持ちを選手たちは失っていなかった」曹貴裁監督がのちにそう触れたように、最終ラインからのサイドチェンジやクサビを含め、パスひとつに前への意識がこもる。
終盤には互いに決定的なシーンもつくりだした。2試合ぶりに先発した下村東美のパスに古林が裏へ抜け出し、セットプレーでは移籍後初出場のキリノがフィニッシュを狙った。かたや山形も、右サイドを抜け出した廣瀬のクロスに中島が合わせ、アディショナルタイムには宮阪のサイドチェンジから永田がシュートを狙うなどして押し返す。だが守備陣の粘りもあり、ともに最後まで譲らなかった。
「選手たちは最後まで諦めずに1点を奪いに行く姿勢をやりきってくれた」山形の奥野僚右監督は振り返り、湘南の曹監督も「お互いに攻める気持ちを失わない0-0だったと感じている」と語った。互いに鋭い攻撃を繰り出し、あわせて粘り強い守備を示した。募る悔しさはゴールに迫っていたがゆえ、ひいては勝点3を求める強さゆえに違いない。「もっと強いアクションが必要だったし、パスの精度なども含めていろんな課題が出た。チームに貢献できず、悔しい」たとえば菊池がそう唇を噛んだように、さまざまな自戒が選手たちの口をつく。もっと、もっと。その思いこそが湘南の行く宛てを照らす。
以上
2012.07.23 Reported by 隈元大吾
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