記録上は「90分+4」。実際は、本当にラストワンプレー。これで最後、というチャンスを、京都・秋本倫孝が値千金の決勝ゴール。京都、愛媛を突き離し連勝を飾った。
愛媛は有田光希をベンチに入れ、京都は前節の熊本戦後半の布陣でスタートさせた。
試合は、愛媛のコンパクトな陣形を京都が崩していく展開に。だが、その中でも愛媛は相手の攻撃を潰し素早い速攻を仕掛ける。
開始から膠着状態が続き、互いにシュートを打てない。時間が進むにつれ、京都の攻めあぐねを感じられる様になった25分、京都の先制点が生まれる。
工藤浩平が裏に走り抜け、そこに福村貴幸がパスを送る展開から相手陣内に入り込むと、左サイドで工藤を追い越した中村充孝からクロスが入り、ニアで宮吉拓実が飛び込み、触れずに中央に入ったボールを中山博貴が頭で押し込む。流れる様な崩しで京都が先制点を挙げる。
愛媛も反撃。31分にはカウンターから、36分には内田健太がクロスを入れ中で折り返すもシュートが遠い。
後半、愛媛はスタートから有田を投入する。後半8分、その有田がスローインからドリブル突破を試みて得たCKを石井謙伍がニアで合わせて、愛媛が同点に追いつく。
その後は一進一退の攻防が続く。京都はフィニッシュの形以上に宮吉の裏への飛び出しに目を引かれた。6分、11分と工藤から裏へ送られた場面は、ギリギリというタイミングだった。だが、調子が上がらなかったこともあり、後半15分、宮吉に代えて久保裕也がピッチに送られる。
シュートまで思う様に持ちこめない京都に対し、愛媛がカウンターで牙をむく。40分には京都からボールを奪い、石井のシュートシーンを作ると、41分にはロングボールから落としたボールをシュートと、京都ゴールを攻め立てるも、京都もGK・水谷雄一のセーブで守り切る。
このまま試合終了かと、スタジアムにいた誰もが思う90分+4。FKのチャンスを得る。ふわりと混戦のゴール前に上がったボール。これを秋本が頭で決め、京都が最後の最後で愛媛を突き離し、連勝を飾った。
試合後、愛媛のバルバリッチ監督はパスミスの多さについて指摘。前節から繰り返した終了間際の失点も含め「しっかり分析して判断しないといけない」とした。
対して京都。大木監督は失点について言及。「なぜ同じことをやられるのか」と選手へ課題を突きつけた。失点のCKは、スローインから有田にドリブルを仕掛けられてのものだった。前回の西京極の、岡山戦。試合後、大木監督は「3/4のスローインは失点とか得点につながりやすい」と指摘していた。そこも繰り返されていたと言えるだろう。
両監督とも指摘、反省点が口をついたが、個人的には、非常に面白い試合だった。
その要因は愛媛の非常にコンパクトな守備隊形にある。試合序盤、京都はその中になかなか入れなかった。相手FWの前で秋本、チョンウヨンがボールをもらい、つなごうとした。だが、ボランチが相手FWの前でつなごうとしても中盤はタイトになるだけだった。
相手FWの背中から相手DFの間が中盤で、そこにどうやって入り込むのか。そこをポイントにして観ていたが、選手は色々とトライしていた。
工藤が最終ライン近くまでボールを受けに行く。秋本がセンターバックの間に入り、3バックにして両サイドを上げる、など、単発ではあったがトライしていた。ここは非常に好印象を持つ。その中で、工藤が中盤から相手DFラインの裏へ走り出した。パスを出した福村も、工藤のアクションを見逃さず、二人で素晴らしいプレーを作りだした。
このアクションを機に愛媛陣内へ入り、先制点を決めている。
要は、相手をいなすことを目的とせず、いなしている時にどういうアクションを起こすかだろう。
考え方を変えてみる為、ラグビーを引き合いに出してみる。ラグビーは基本、ボールよりも前に出てプレーできない。ボールを挟んで15人が向かい合うスポーツだ。どうやって相手陣内に入り、トライするかというと「ボールを追い越して走っていく」ことである。そうやってボールを相手陣内に運んでいく。逆に言うと、そのプレーだけで相手陣内に攻め込めるのだ。
京都の試合で、4/1の福岡戦。先制点の工藤のシュートは中村充孝を追い越して抜け出したものだ。2点目は中盤で工藤がドリブルしているのを中村が追い越すことで、宮吉へのスルーパスが生まれた。中村の得点シーンはボールよりも後ろから飛び込んでいく形が多いことも注目したい。
ボールよりも前に人が多いと攻撃的な印象を与えるかも知れないが、こうして考え方を一つ変えてみると「ボールよりも後ろに選手がいても攻撃的なプレーを繰り出すことは可能」だということ。「人が湧き出るサッカー」の要素の一つでもあるだろうし、要は、ボールに対してどんなアクションを起こすか、だろう。
だが逆に、多くの選手がアクションを起こすと、ボールの出どころで奪われてカウンターを喰らう。ここが難しく、また、サッカーの面白さでもある。
愛媛の素晴らしい守備を相手に、つないでいなそうとした高い意識も伝わったし、実際、そこから得点も生まれた。でもさらに可能性があるのではないか、そんなことも感じさせてくれた。そんなゲームだった。
以上
2012.07.23 Reported by 武田賢宗
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