およそ1カ月ぶりとなる両者の顔合わせである。「山形は個の力が高い。ポゼッションでは相手が上回るかもしれないけど、僕らは最初から速いサッカーをして先制したい」そう語るのは、NDスタジアムで行なわれた前回の対戦で今季初ゴールを挙げた永木亮太だ。自ら先取点を奪うだけでなく決勝点もアシストし、2−1の勝利に大きく寄与している。

思えば、ボランチが定位置の永木がFWで出場したのはくだんの山形戦からだった。ゴールに近づき、意識の高まりをさっそく形で示した彼自身の才と、それを引き出した采配の妙を思わずにはいられない。4−1で勝利した前節の大分戦ではふたたびボランチに入り、ディフェンス面での貢献がとくに目を引いた。

ポジションを移した意義は内面にも落とされている。
「シャドーの選手が相手のあいだにポジションをとったときにパスをつけないとストレスになるし、そこでパスをもらえればチャンスになる。ボールの受け手の気持ちが分かり、自分がボランチに入ったらできるだけ縦パスをチャレンジしようと意識が変わりました」

永木に限らず、さまざまなポジションへのトライは日々のトレーニングから行なわれている。怪我から復帰した副キャプテンの遠藤航もまた然りだ。開幕からセンターバックを務めてきたが、前々節の水戸戦でボランチとして途中出場すると、前節もボランチで先発し、後半には3バックの右に入った。らしく冷静にPKも沈めている。

離脱していた間にチームを外から見たことも踏まえて、遠藤は語っている。「和くん（大野）がセンターバックに入ってラインがより高くなったり、（ハン）グギョンが抜けて僕がボランチに入ったり、一人ひとりがいろんなポジションをこなせるとバリエーションもできて、今後うちの強みになってくると思う。ボランチだと攻撃参加が増えるし、FWに近いぶん縦につけやすいので、自分としても特長を出しやすい」。今節はこれまでディフェンスラインを統率してきた大野和成が出場停止となるが、遠藤をはじめ怪我からの復帰は徐々になされており、新たに加わったキリノを含めて、誰がどのポジションに立つのか興味深い。

他方、今節BMWスタジアム平塚に乗り込む山形は、3位の湘南と勝点で並び、現在4位につけている。くだんの湘南戦の敗戦以降は1勝1敗2分と、スコア的にも僅差の戦いを続けていたが、福岡をホームに迎えた前節は3−1で勝点3を手にした。

立ち上がりは福岡の再三のクロスに晒された。福岡にしてみれば、押し込んだ序盤のうちに流れをゴールに結びつけたかったところだろう。裏を返せば山形の粘り強さがまさり、そして転じた攻撃は刃のように鋭い。前半のうちに得点力の高いセットプレーで先制すると、後半にもスピードを活かして効果的に加点し、相手の反撃も1点に凌いだ。6試合ぶりの複数得点とともに得た勝利を、今節にも繋げたいところだ。

週末に向けて、遠藤は言う。
「山形のFWは得点力があるので、リスクマネジメントをしっかりしてまずは抑えられるように意識したい。逆に攻撃では、縦に速いうちの特徴を出したい。湘南らしいサッカーができれば勝ちに繋がると思います」

たとえば遠藤が、あるいは永木が触れたように、拠り所となる自分たちのスタイルを発揮し、勝点3に結びたい。それは山形も同様だろう。ともすれば寒さすら覚える不順な陽気をも忘れさせる、両者の熱い戦いに期待したい。

以上

2012.07.21 Reported by 隈元大吾