20位の富山が９試合ぶりの勝利を目指す。後半戦に入って３戦３分。前節はMF朝日大輔が待望の戦列復帰を果たし、チームも15試合ぶりに複数得点を挙げた。今回、４連勝中の栃木を倒すことができれば、堂々と後半戦無敗を誇り復調を宣言できる。譲れない一戦だ。

前節に今季初出場・初先発した朝日は前半８分、MF木村勝太の先制ミドルをアシスト。走ってボールを受け、パスを出してまた走る。シンプルなプレーでチームにリズムを生みだし、早々に存在感を発揮した。「（ボールをもらうために）必ず顔を出してくれる。信頼してプレーしている」と木村。キャプテンのDF足助翔は「リーダーが戻ってきてくれた。頼もしく感じる」と語った。09年から77試合連続して先発出場した大黒柱。キャンプ前に足のつけねなどに痛みを伴うグローインペイン症候群を発症し、「先のみえない不安感があった」と言う。まずは反動なく無事に今節を迎えてほしい。昨季の最終戦以来となるホームは祝福ムードに包まれるはずだ。

朝日の復帰に合わせたかのように、ほかの負傷者も多くがチームの全体練習に戻ってきた。もう少しすればシーズン前に計算していただけの戦力がようやく整う。このタイミングで安間貴義監督はあらためて選手間の競争を促し、チーム力の底上げを図ろうとしている。今月に入ってから練習試合を積極的に組み入れるなどして控えメンバーのトレーニング量を増やした。今週は地元出身の19歳、MF舘野俊祐が東京Vからの期限付き移籍で加わった。監督は「うちのチームは調子の良い選手を使う主義。どんどんトライしてチームを引っかきまわしてほしい」と話す。新しい風も吹き込み活性化したチームのこれからに期待がふくらむ。

栃木は前節、１−０で町田を下して４試合連続の完封勝ち。８位に浮上し、プレーオフ進出圏内の６位に勝点６差でつけている。４連勝は2010年の第12−15節、10年第38節−11年第１、８、９節以来の３度目で、今回はクラブ初の５連勝を目指す。
前節はワンチャンスをものにしてFW廣瀬浩二の２試合連続得点で勝利した。しかし、松田浩監督が「結果を取っただけという試合になったかなという気もする」「攻撃、特にポゼッションの質が悪かったというのが一番課題かなと思う」などと会見で語ったようにゲーム内容は満足のいくものではなかったようだ。勝負強さは示したが、内容が悪くても勝つという芸当を続けることは難しい。再び下位チームが相手だけに内容を伴う勝利が目標になる。

富山、栃木の違いとして特徴的なのはリスクやバランス感覚に対する考え方。栃木は［４-４-２］の布陣で堅固な守備ブロックを構築し、堅実に戦うことができるチームだ。一方の富山は昨年から３バックを継続し、最近２戦は［３-５-１-１］にもみえる変則的な布陣で戦う。「強いチームと同じことをやっても勝てない」という反骨心と、「攻めと守りがあってサッカー」「バランスの良さとは崩しても戻せること」「チャンスもピンチもあるから面白い」といった安間監督のサッカー観が色濃く反映されており、一見して不安定にもみえる中に平衡点を見いだすことを試みている。
安間監督は選手に「ミスマッチを楽しむぐらいのつもりでプレーしろ」と話しているそうだ。両チームの布陣が異なるためマッチアップする選手が明確ではないケースが出てくる。問われるのは各選手の状況判断力。富山がチームとして磨いてきた点でもある。守備ではそれぞれがマークをつかんで気を張っていなければならないが、逆に攻めでは相手を混乱に陥れることができるかもしれない。
地力と勢いは栃木のほうが上だろう。富山は先制点を与えないように粘り強く守らなければならない。しかし、攻めに転じれば中央から木村やMF大西容平がゴール前に飛び出し、両サイドの朝日とMF西野誠がロングランでDF背後への走り込みをうかがう。ブロックディフェンスを揺さぶるには、岐阜戦の２得点のようなミドルシュートが武器になるし、MF山瀬幸宏とFWソ・ヨンドクのドリブルも効果的だ。

前回対戦した３月20日・第４節は、ともにチームづくりが途上だった影響もあって０−０の引き分けに終わった。栃木は攻守の要で今季キャプテンも務めるパウリーニョが不在だった。富山は４失点した試合から中２日で守備の再建を重視したのに加え、DFの負傷によって交代２枠を費やしたこともありチャンスは少なかった。今回は当時よりもチーム状態はよく、栃木の堅守を崩しゴール奪取を狙う。

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2012.07.21 Reported by 赤壁逸朗