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【J2:第24節 横浜FC vs 千葉】レポート:これぞ昇格争いの本番レベル。千葉が格上の守備を見せつけて横浜FCの挑戦を退ける。(12.07.16)

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最下位からプレーオフ圏内寸前の7位まで急上昇してきた横浜FCにとって、昇格争いのライバルとの最初の真剣勝負となる試合がこの千葉戦だった。結果は、千葉が横浜FCの挑戦を見事に退けた1-0の勝利。千葉はこの貴重な勝点3で首位に立ち、横浜FCは9位に落とし、6位までの勝点差7に一歩後退した。両チームの結果を分けたのは最終ラインの守備レベルの差であったが、全体としては千葉は勿論のこと、横浜FCも今後の昇格争いへの有資格者であることを見せられるプレーを演じたと言って良かった。

今シーズンホームゲーム最多の8,547人を集め、緊迫感溢れる中スタートしたゲームは、試合前から吹いていた強風が強く影を落とす。千葉・木山隆之監督が「風が舞っているイメージがあったので、風上で入ったという印象はなかった」と語ったが、この強風の扱いに横浜FCは苦労する。「2つまではいいけど3つ目がずれたり、取られるというか相手に渡してしまう部分が前半ありました」と横浜FC・山口素弘監督が振り返ったように、トップやサイドハーフに入れるパスのところでパスに微妙な狂いが生じて、千葉の守備ブロックに引っかかる。そして、千葉のリアクションのスピードに対し、プレーゾーンが繰り返し押し戻されてしまう。前半の内容は全体的には膠着状態だったが、横浜FCは攻めのリズムを作ることはできなかった。そして、千葉が守備のリズムを崩さない一方で、横浜FCは守備で一瞬の隙を与えてしまう。26分の兵働昭弘のゴールは、千葉が押し込み続けた時間に、スローインから兵働と深井正樹のワンツーで兵働が抜け出して放ったゴラッソ。しかし、その場面自体を振り返ると横浜FCは局面で数的優位を保っていたが、押し込まれ続ける中でCBのペスンジンがサイドをケアしており、中にスライドして入っていた佐藤謙介がスライディングをしてかわされてしまい、兵働とキーパーの1対1を作ってしまった。このレベルになると、ちょっとした隙が命取りになるということを、まざまざと見せつけられた場面だった。

後半は、両チームの監督の采配合戦がゲームを動かす。横浜FCは、千葉の守備ブロックの間で起点を作るべく、中盤をダイアモンドに変更。さらに風上に変わった利を生かして、積極的に攻勢に出る。この効果はすぐに現れ、53分のカイオのシュート、54分には高地系治のロングシュートを皮切りに、横浜FCは完全にスイッチを入れる。千葉のプレッシングに対抗し、本来の「前進する保持」を取り戻すと、高地のロングシュートの次のプレーでは、前を向いた武岡優斗がミドルシュートを放つがクロスバーを叩き、詰めた大久保哲哉が詰め切れず。62分には、阿部巧が強引にオーバーラップして、裏に抜け掛ける。横浜FCが完全にペースを握ると見るや、木山監督はすかさず64分に、「高地君のところにボールを収めさせないように中を閉じて、相手の勢いを外に回させるように」と守備での立て直しの指示を与え米倉恒貴を投入。この木山采配も見事に当たり横浜FCの勢いを削いでいく。そして、ボールを奪ったらカウンター攻撃という定石通りの戦い方に持ち込む。横浜FCは、前進する保持という強みを頑固なまでに貫き、ゴールまであと0.5歩というところまで迫るが、その0.5歩を千葉の最終ラインは許さず。揺るぎない守備で相手を上回った千葉が貫禄の逃げ切り勝ちを収めた。

横浜FCにとっては、昇格争いのレベルを見せつけられた試合であった。しかし、自らのサッカーは貫き、「組織として負けているとは思わない」(八角剛史)というように、攻守のプレーの意図においては互角だったことは間違いない。だからこそ、本番で勝負を分ける細かな隙を作ってはいけないことを学んだ試合となった。ようやく昇格争いの挑戦権を得たチーム。若い選手も多く、この試合で学んだことを試合に反映する伸びしろは十分にある。8月に想定される上位対決の前に、次の試合で学んだことを出せるかが、このチームに問われていることだろう。今は、現役の受験生が1学期最後の模擬試験で、足りないところを見つけたようなもの。それを取り返す夏休みが待っている。

一方の千葉は、前節から強めている現実的な戦い方がチームの形としてさらに身についたと言えるのではないだろうか。それば、木山監督の「しっかり勝ちきることが重要な試合」という振り返りにも表れている。勝利に邁進するというチームの姿勢は十分に表現できており、この日横浜FCに隙を与えなかったDFラインの素晴らしさを含めて、その狙いに応えられる高いレベルの選手がいることも示した。次節も昇格争いの相手となる甲府戦。今年のJ2は、首位に立ったチームはほとんど勝利できていない。それを打ち破ることができるか注目だ。

第24節を終わり、J2はさらに混戦の度合いを増した。だからこそ、昇格に向けて堅実さが重要になるかもしれない。それを予感させる試合だった。

以上

2012.07.16 Reported by 松尾真一郎
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