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【J1:第17節 F東京 vs G大阪】レポート:F東京がG大阪に競り勝つ。守備の意識が変えた主導権争い(12.07.08)

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ランコ・ポポヴィッチ監督は試合後、勝利を挙げたにも関わらず、少し不機嫌だった。
「自分たちのサッカーができていなかった」
指揮官は試合後、G大阪に押し込まれた後半をそう振り返った。松波正信監督は「点を返していけば、ゲームをひっくり返すことができるという気持ちが伝わったゲームだったと思います」と語った。2人の指揮官が話すとおり、前後半で主導権は入れ替わった。

前半は、F東京が主導権を握った。開始3分に、今季初先発のDF中村北斗が左サイドを破って先制点を奪い、17分にFWルーカスが約30mから右足でゴールネットを揺らした。31分にPKから1点を返され、流れがG大阪へと傾きかけてしまったが、手元の主導権は離さなかった。F東京はG大阪を上回る切り替えの速さですぐにボールを奪い返すと、敵陣でサッカーを展開。44分に、田邉草民のパスに抜け出したルーカスが再びネットを揺らし、2点のリードを奪って試合を折り返した。

しかし、後半に入ると、情勢は一変した。G大阪がMF遠藤保仁と、DF今野泰幸を中心にF東京のプレスの外でボールを動かしてリズムをつくると、佐藤晃大、阿部浩之の2トップが背後を突いてF東京の最終ラインをかく乱した。勢いに乗ったG大阪は、攻撃を連鎖させる。次々とゴールへと迫り、決定機をつくり続けた。そして、62分に左サイドから上がったクロスに反応した佐藤が右足で合わせて1点差まで詰め寄った。試合終了まで続く青黒の攻撃、攻撃の連続。それを何とかしのぎきったF東京が勝利を挙げたが、「勝ったからOKというわけじゃない」とDF加賀健一。F東京の選手たちは、手放しで喜ぼうとはしはなかった。
 
「G大阪の今の順位は非現実的な話だ」と、ポポヴィッチ監督は言う。後半、主導権を握ったG大阪は強者そのものだった。不揃いなF東京の最終ラインをおもしろいように突破し、両サイドの深い位置で攻撃の起点をつくり出した。そのG大阪をF東京が上回ることができた理由も、守勢に回った後半を招いた理由も、「守備の意識」が引き起こしていた。

後半、F東京の守備の意識が真逆に変わってしまった。F東京はパスを回し、主導権を握るサッカーをしてきた。だからこそ、ボールを相手に握らせず、自分たちの時間を長くすることができる。本来の姿だ。それができた前半は、G大阪を圧倒していた。それなのに、後半は守備の意識がゴールを守ることへと傾いてしまった。佐藤や阿部の飛び出しでラインを乱し、ダブルボランチも最終ラインに吸収されてしまった。それによって相手の中盤へのプレッシャーも疎かになり、本来のサッカーができていなかった。連敗やけが人続出というネガティヴな状況がそうしたことを招いてしまったのかもしれない。だから指揮官は試合後、「自分たちのサッカーができていなかった」と首を横に振った。

クラブによって考え方も異なる。だが、G大阪は長年、サッカーをするチームであり続けてきた。自陣に引きこもってサッカーを放棄するようなチームではないはずだ。敗戦後、G大阪の選手たちが「守備のバランスが…」という言葉を頻繁に使っていたことが気に掛かる。G大阪には、ゴールを守る守備は似合わない。前半できなかった主導権を握るための奪う守備が彼らには必要なはずだ。降格圏へと沈み、現状は芳しくないかもしれない。自分たち本来の姿を見失ってもおかしくない。この日のF東京がそうだったように、慣れないことをしても上手くはいかない。後半のような魅力的な攻撃を繰り返すチームが、もしも変わってしまうのであれば、それはあまりにも惜しいことだ。サッカーを楽しみ、自分たちのスタイルを磨いていくことでしかチームは成長できない。ただし、失敗も成功もしてそれが一番の近道だとよく知る選手がG大阪の最終ラインには一人いる。
夏が近づく。せっかくの夏休みに、観客はどうせ行くならサッカーをするチーム同士の対戦が見たいだろうし、選手は見せたいと思うはずだ。ポポヴィッチ監督を不機嫌にしたのは後半の45分間、それができなかったからだろう。Jリーグの魅力をグイグイ引き立てるのは、本物のサッカーをするクラブでしかない。F東京は今、その信念で動いている。

以上

2012.07.08 Reported by 馬場康平
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