昨シーズンのリーグ戦2試合、そしてPK戦で敗れた天皇杯4回戦でも柏はストロングポイントを前面に押し出し、名古屋に対して試合を優位に進めることができた。だが今節は「戦術的にも気持ち的にも勝ちに値する勝利」とストイコビッチ監督が振り返ったとおり、地上戦を得意とする柏のパス回しを封じ、自ら得意な形へ持ち込んだ名古屋に軍配が上がった。
互いに「優勝」を公言する両者だけに、序盤はさほどギアを上げず、様子を見ながら牽制し合うのではないかと予想していたが、それが良い意味で裏切られることになった。互いのストロングポイントが正面からぶつかり合い、試合は序盤から見応えのあるアグレッシブな展開となったのである。
まずは9分、ダニルソンのロングフィードから、左ワイドで金崎夢生が起点を作り、そのルーズボールを拾った永井謙佑がペナルティエリア内へ突進。これによってGK菅野孝憲が引き出され、永井の折り返しを受けたケネディがゴールを背負いながら左足ヒールで巧みにゴールへ流し込む。名古屋が先制点を挙げた。
柏もゾーンの間、あるいは名古屋ディフェンスラインの裏をレアンドロ ドミンゲス、澤昌克、ジョルジ ワグネルが鋭く突き、細かいパス回しから敵陣を切り裂きにかかる。17分、レアンドロの突破から得たコーナーキックだった。ゴール前にズラリと並ぶ名古屋の高さに真っ向勝負を仕掛けるのではなく、ワグネルがニアへ速いボールを入れ、レアンドロが鼻先でコースを変え、GK楢崎正剛の手元を射抜く。「今週トレーニングした形」(レアンドロ)を発揮した柏が追い付いた。
ここまでは、ほぼ互角の展開。ただ、徐々に名古屋が柏の長所をかき消し、試合の優位性を高めていく。両ワイドの金崎と永井には、それぞれ両サイドバックが付く。するとセンターバックとサイドバックの距離が開き、そのギャップを2列目の小川佳純と藤本淳吾が狙う。「僕と(藤本)淳吾さんが高い位置を取って、相手のボランチを前に出さないようにした」(小川)。柏のダブルボランチは小川と藤本をケアせざるを得ず、結果的に両ボランチが守備に追われる時間が多くなる。ボールを奪っても、茨田陽生が「パスをさばく意識を持って(センターバックから)受けようとしたけど、まだまだもらう回数が少なかった」と反省の弁とも取れる言葉で局面を振り返ったように、最終ラインからのビルドアップではセンターバックがボランチへのパスコースを見出せず、コースを探している間に名古屋のプレッシングを受け、前線へ大きく蹴り出してしまう。そして空中戦になれば、長身選手が並ぶ名古屋が圧倒的に有利なのは周知の事実。本来、柏は持ち込みたくない展開だった。
また、この日の柏の布陣は、前節大勝したG大阪戦の後半のメンバーを起用した。ところが2トップを組むレアンドロと澤がダニルソンをケアし切れなかったため、後半開始早々には通常の4−2−3−1へ戻し、工藤を1トップに置き、澤をトップ下に戻してダニルソンを警戒させた。だが状況が変化したとは言い難かった。「ダニルソンがケアされればセンターバックが空く。それがうちの狙いでした」(小川)。ダニルソンがケアされれば、今度はフリーの田中マルクス闘莉王がボールを運ぶ。仮にマークを受けたとしてもダニルソン、闘莉王は少々のチャージなどモノともしない。後方の選手が持ち出せば、柏の布陣にマークのずれが生まれ、名古屋はサイドの永井、金崎、2列目の小川、藤本など、空いた選手へパスを供給していく。ケネディに対しては近藤直也が激しく体を当て、先制点以降は抑え込まれていたが、柏のビルドアップを封じ、後方から蹴らせることに成功していたため、それを弾き返し、セカンドボールを拾えば2次攻撃、3次攻撃と畳み掛けるような攻撃を展開できていた。
63分、右コーナーキックからオウンゴールを誘発させ、名古屋が2−1と勝ち越しに成功。その後、アディショナルタイムを含めて30分ほど時間は残されていたが、上記したように終始試合をコントロールしていたのは名古屋であり、90分のワグネルのミドルシュート以外は柏に得点の匂いすら与えなかった名古屋が1点のリードを守り切り、雨中の激戦を制すのである。
戦術的に柏を上回り、しばらく得点から遠ざかっていたケネディがゴールを決めた。試合後の会見では「スーツが雨に濡れなかった」などジョークを交えるなど、ストイコビッチ監督もこの勝利には後半戦への反攻の手応えを掴んだのだろう。優勝候補の本命、名古屋がいよいよ動き出した。
一方の柏にとっては、この大雨も災いした。スリッピーなピッチ状況では得意の地上戦に持ち込めず、オウンゴールのシーンも大雨で選手の視界に影響を及ぼしたはず。ただし、敗れたとはいえ、シーズン序盤戦の流れが悪い時期でも、決して自分たちのサッカーを見失わず、ぶれることなく貫き通した結果、柏もここまで復調してきた。ネルシーニョ監督を中心に、次節までに持ち上がった課題を修正しながら、彼らも名古屋同様、後半戦の巻き返しを見せてくれることだろう。
以上
2012.07.08 Reported by 鈴木潤
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