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【J1:第17節 神戸 vs 仙台】レポート:ワンチャンスをものにした仙台。倍以上のシュートを打ちながら無失点だった神戸。その差は何か?(12.07.08)

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試合前、神戸側のゴール裏では「被災地のみんなへ 心はいつもトモに!!」という横断幕とともに神戸サポーターから仙台へ向けたエールが贈られた。それを受けて仙台サポーターは「信じているからここに来た!」というメッセージボードを掲げ、感謝の意を大拍手で表した。震災を経験する両チームの対戦は、昨年の東日本大震災の後から単なるリーグ戦の1ゲームではなく、特別な一戦となっている。ある神戸サポーターは言う。
「昨季は最終戦で仙台と対戦し、今季の最初は七夕決戦で前半の最終節。運命的なものを感じますね」
しかも今節は、前半を首位で折り返すためにアウェイでも勝点3にこだわる仙台と、この試合に勝ってさらなる上位進出を狙う3連勝中の神戸という状況での対戦。両チームにとって、前半戦の最後を飾るにふさわしい大一番を迎えていた。

前半の開始早々から両チームは激しくぶつかった。31秒には神戸の吉田孝行がパスのインターセプトからバイタルエリアまでボールを運び、惜しいミドルシュートを放つ。1分には大久保嘉人がボールを奪い、左サイドバックの相馬崇人へつなぎ、ゴール前にクロスが入る。仙台も2分に太田吉彰が右サイドで突破を仕掛け、コーナーのチャンスを得る。4分にはウイルソンが神戸の伊野波雅彦をかわし、ドリブルからミドルシュートを放つシーンもあった。
互いに厳しい守備からのカウンターという持ち味を出し、ややホームの神戸がチャンスを多く作っていたものの、両者一歩も譲らない展開がしばらく続いた。

試合が動いたのは19分。左サイドで仙台の梁勇基がボランチの角田誠との早いパス交換で神戸のDFラインを突破すると、ファーサイドに走り込んだ赤嶺真吾へパスを放つ。そのボールは神戸のGKとDFの間を抜けて赤嶺の前へ。「押し込むだけだった」と赤嶺が振り返る華麗な先制点について、仙台の手倉森誠監督はこう振り返る。
「お互いに中盤で収まるところがない時に、こっちが攻めて、先制点が取れたのは良かった。神戸がボールを落ち着かせる前に、取れたのが大きかったなと思います」

だが、その後は神戸のボランチ田中英雄が何度もボールを奪い、野沢拓也や大久保とのパス交換でシュートまで持っていくなど、神戸が完全にペースを握る。神戸が前半に放ったシュートは11本。対する仙台は5本。倍以上のシュートを放った神戸だったが、結局ゴールを奪えず前半を折り返すことになる。

後半、先にピッチに現れたのは仙台の選手たちだった。自陣で円陣を組み、集中力を高めていく。
その後、徐々にピッチに集まってきた神戸の選手たちの中に、故障で今節の出場が微妙だったチーム得点王の小川慶治朗の姿があった。吉田との交代で後半の頭からピッチに立った若きスピードスターは、立ち上がりから仙台DFの裏を果敢に狙っていった。47分には野沢からのスルーパスで抜け出すと、そのまま右サイドをえぐってシュートを放つ。だが、シュートを放つ前にすでにオフサイドのジャッジが下されていたため、小川に対し、仙台のGK林卓人が怒りを露わにする。そしてこの一連の流れで小川はイエローカード、林は注意を受ける。このジャッジに不服だった神戸サポーターからは大ブーイング。以後、林がボールを持つ度に、大ブーイングが起こるという異様な雰囲気で試合は続いていく。
だが、このプレーを含め、小川の果敢なアタックによって、仙台のDFラインはやや後退させられた。それによってできたバイタルエリアのスペースを神戸が使い、ワンタッチパスでボールを回し始める展開に。64分にはその球回しから野沢のコースを狙った惜しいミドルシュートもあった。だが、仙台の粘り強さもあって、神戸はなかなかゴールを割ることができない。それを打開するために、神戸は73分には田中から朴康造に替え、中盤をダイヤモンド型にしてより攻撃的な布陣にシフト。朴のワンタッチプレーでリズムを変えながら神戸は何とか1点を奪いにいった。だが、最終的にはノーゴールで試合を終えることになる。

神戸・西野朗監督が試合後の記者会見冒頭で「1点が遠かった」と悔しさをにじませたのは、内容では仙台を圧倒していたという気持ちがあったからだろう。ひと言で言うと、そんな試合だった。
仙台より10本も多い、シュート19本を放ちながら無得点に終わった理由の一つとして、西野監督は「ポゼッションを取れているなかでも、自分たちでスピードを上げたりだとか、リズムを変えて行くとかを有効に考えていかないと、ただボールを持てるからベストだということではない」と会見で振り返っている。一方、仙台の手倉森監督は先述したコメントの中にあるように「こっちが攻めて、先制点が取れたのは良かった」と述べている。もちろん、これだけが勝敗を分けたポイントではないが、一つの理由として自分たちからアクションを起こせるかどうかという部分に差があったと言えるかもしれない。
ただ、「悪くはない」と西野監督が語るように、内容は西野監督体制になってから最も安定感があったと言えるだろう。失点後にチームの雰囲気が沈む今までの神戸から考えると、失点後も冷静にゲームをコントロールできた試合でもあった。長年、神戸でプレーしてきた田中は「失点してからも慌てず、バランスを崩さずに」できたと、敗戦の悔しさをにじませながらも、リーグ後半戦に向けて手応えをつかんだようだった。
そして決勝ゴールを決めた仙台の赤嶺は「首位で折り返せたのは良かったと思いますし、2巡目は全チーム分析してくると思いますので、ここからが本当の勝負だと思います」と勝って兜の緒を締めていた。
結果を残した仙台、内容的に手応えをつかんだ神戸。後半戦に向けて、非常に実のあるゲームだったといえるのではないだろうか。

以上

2012.07.08 Reported by 白井邦彦
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