「パフォーマンス？　考えないよ。オレ、あんな身体ちゃうもん（笑）」と神戸の大久保嘉人は言う。主将の吉田孝行は「オレはあんまり点を取って騒ぐタイプじゃないんで（苦笑）。まぁ、あの調子でどんどんゴール決めてくれたら…」と話す。世間を、いや世界を騒がせている神戸・都倉賢のパフォーマンスについてのチームメイトの反応である。

前節の川崎Ｆ戦で都倉は、古巣を相手に決勝点となる豪快なミドルを叩き込んだ。その後、欧州選手権準決勝のFWバロテッリよろしく、ユニフォームを脱いで鍛え抜かれた肉体美を披露し、イエローカードをもらう。シュートから警告まで“バロテッリ”を再現したような都倉は、今や遠く欧州のメディアでも取り上げられるほどの話題だ。

ただ、都倉本人は「こんなに反響が出るとは思わなかった。うれしいけれど、（パフォーマンスが）一人歩きした感じです」とやや困惑しながらこう続ける。「でも、あのシュートはもう過去のもの。イエローもらってチームにも迷惑をかけているので…。ただ、ヤマザキナビスコカップでは消極的だった中で、強気に行けたのはメンタリティーの部分で少しは成長できたのかなと思う。そういう小さな成長をこれからも続けて行きたい」。

今節の仙台戦では、否が応でも都倉のゴールおよびパフォーマンスに注目が集まるだろうが、そのことがなくても見どころは多い。現在、リーグは３位の磐田から11位の神戸まで勝点差３の中に９チームがひしめく混戦。神戸が仙台戦に勝てば一気に６位浮上の可能性もあるし、逆に仙台は負ければ首位陥落の危機をはらんでいる。両チームにとって、リーグ後半戦に向けての一つの大きな山場となるのは間違いない。

特に、リーグ前半戦を首位で折り返したい仙台は、前節の広島との首位攻防戦をFWウイルソンの2発でドローに持ち込み、首位をキープしているだけにこの神戸戦を落としては意味が無い。攻撃にアクセントを付けられる関口訓充の復帰など、追い風が吹いているだけに絶対に勝点３を奪っておきたいところだろう。ポイントの一つは、神戸・西野朗監督が「（仙台の印象は？）あまり追いかけて観てはいないけれど、ここまで首位を守っているのはどこかに強さがある。ウイルソンがフィットし、梁（勇基）もいいみたいですしね」と言うように、仙台のアタッカー陣を神戸の守備がどう抑えるかだろう。

ただ、梁とのマッチアップが予想される神戸・奥井諒が「（梁は）苦手なタイプではない」と言えば、ウイルソンと対峙するセンターバックの北本久仁衛は「カバーリング能力の高いイノ（伊野波雅彦）とのコミュニケーションもうまく取れているので…。とにかく首位の仙台と戦えるのが楽しみですね」と自信をのぞかせる。また、今週の練習からボランチの橋本英郎も復帰し、警告累積から大久保嘉人が戻ってくるなど神戸にも追い風は吹いている。堅守を誇る両チームの戦いでは、攻撃にアクセントを付けられる橋本や大久保の復帰は大きいだろう。特に、パーマヘアーに「イメチェンしてみた」大久保の活躍に注目したい。

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2012.07.06 Reported by 白井邦彦