「引き分けのゲームが多すぎる。『無敗』とかそういう言葉にとらわれないで勝ちたい」
横浜Ｆ・マリノスのDF小林祐三のセレッソ大阪戦に向けての抱負だ。リーグ戦９試合連続負けなしという数字に安心していては、由々しき事態に陥る可能性があるだろう。事実、直近５戦は１勝４分のため、順位は下がり出し、現在12位に甘んじている。
また、中村俊輔というスペシャルカードは、前節に引き続き、ケガのため欠場が決定的。ポゼッション、ＦＫでのマイナス面の影響は少なからずあるだろう。だが、逆に前節、名古屋グランパス戦で富澤清太郎→小野裕二→マルキーニョスと繋いで決めた得点のように、速攻狙いの攻撃に集中できるメリットがあるかもしれない。今節もまずは「今までのいい守備を継続し、相手の隙を狙う」（飯倉大樹）。

Ｃ大阪は、前節の浦和レッズ戦（１−１）からいきなり飛車角２枚を失って、横浜FM戦に臨まなければいけない。清武弘嗣が前節のラストマッチをもってチームを去り、キム ボギョンが韓国五輪代表に合流したため、両サイドハーフを欠くわけだ。
２人は「個が強い」（飯倉）Ｃ大阪の攻撃サッカーの象徴だった。よって今節は、アタック時の迫力低下は免れそうもない。まして相手は、今や説明するまでもない、リーグ屈指の守備力を看板に掲げる横浜FM。この強大な壁に対し、攻撃サッカーを標榜するＣ大阪が、どう立ち向かうのか。選手起用法をはじめ、セルジオ ソアレス監督の采配ぶりが見ものと言える。

選手に目を向ければ、７月２日に発表されたばかりのU-23日本代表メンバーに選出された、横浜FMのサイドアタッカー齋藤学、Ｃ大阪のダブルボランチ、山口螢と扇原貴宏の若き３人が、脚光を浴びることは間違いない。ポジション的にもマッチアップする可能性が高く、それは両チームのファン・サポーターとって楽しみな“ごちそう”。バイタルエリア付近での攻防は、試合結果にも直結するだけに熱いバトルに期待だ。

また、彼らと同世代の柿谷曜一朗にも注目を。わずか16歳でトップチームとプロ契約を結び、将来を嘱望されたファンタジスタは伸び悩み、Ｊ２徳島ヴォルティスへ。期限付き移籍で約２年半の修業を経て逞しくなり、今季からＣ大阪へ復帰した。
2007年のＵ-17ワールドカップでは、横浜FM齋藤と攻撃陣を形勢した同志だった。心中を察すれば、齋藤に対し、誰よりも負けたくない想いが強いのではないだろうか。また、香川真司、清武に続く、新エースの称号を受け継ぎ、結果が問われる。
「天才」と呼ばれた者にしかわからない挫折を味わった、22歳の矜持を見てみたい。

以上

2012.07.06 Reported by 小林智明（インサイド）