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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【J2:第22節 甲府 vs 岐阜】レポート:新システムで挑んだ甲府は習熟にもう少しの猶予が必要なことが判明。岐阜は、後半戦は怖いチームになることを勝点1で証明(12.07.02)

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「今日のシステムの狙いと評価は?」
「評価は私がするものではないと思います。結果から逆算した評価をどうぞして頂いたらいいと思います。以上です」
この質疑応答には伏線があるものの、首相と前代表の間に入る輿石東幹事長(民主党、山梨県出身)並みに素っ気ない答えを最初の質問に対して城福浩監督は返した。シーズン前半を費やして得た、次のステージに進むための変化に対して、あまりにも効率の良すぎる質問を簡単にされたことと岐阜戦の結果がバタンとドアを閉めたくなる衝動に繋がったのかもしれない。

試合後、甲府の選手が久しぶりのブーイングを受けながら挨拶をしてスタジアムを一周し、メインスタンド下の雨天走路のタータンに戻り、ストレッチをしていた。腕組みをした城福監督が何かを言い、通訳のジュリオ(ポルトガル語)と林浩哲(韓国語)がせわしなにそれぞれの外国籍選手に監督の言葉を伝えている。ピッチと雨天走路を分けるアルミサッシのガラス戸は防音ではないはずなのに、盗み聞きしようと思っても全く声は聞こえない。城福監督の表情と動きで内容を推測すると叱咤にも見えなくはなかったが、選手に聞くと「結果は全て俺の責任。お前たちは顔を上げて取り組んでいけ」という趣旨の話だった。そう聞けば、これまで一貫して城福監督はこういう姿勢で臨んできたので造反だ、離党だという問題なんて起こらない。リスクを負って新しい形にチャレンジした結果、思ったような内容と勝点3が手に出来なかっただけ。そのなかに無失点をはじめとする評価すべき点もあった。

立ち上がりは甲府のスタートポジションがどうなっているのかを気にかけて見ていたが、岐阜と同じ4−2−3−1に一番近い布陣。その中で、2の山本英臣と崔誠根、3の真ん中の柏好文と1のダヴィ、柏と崔というそれぞれ2枚の関係を状況に応じて――見た目には――あやふやにすることがミソだったが、前半はリスクが内容に出てしまうことが少なくなかった。途中からは4−4−2に戻っていたが、帰るべき場所があるから一歩を踏み出したわけで、これも大きな問題ではない。主導権を岐阜に握られる時間帯が少なくなかったが、その時間帯に失点しないで守りきったことは守備面での進化と評価したい。

岐阜はワントップの佐藤洸一がヘディングの強さを発揮できたことで、前線でボールの収まる回数が増えた上に、久しぶりの先発起用にトップ下の橋本卓が積極的なプレーで応えた。セットプレーでは野垣内俊がヘディングの強さとタイミングの良さを活かして決定機を作った。シュートは決まらなかったが、甲府を押し込めたことで後半戦の岐阜は前半戦とは違うことを充分に印象付けた。また、岐阜サポーターの後ろにあるMrマリック(岐阜県出身)のハンドパワー大型フラッグも効いたのか…。行徳浩二監督は「最近守備の練習を始めた」なんて真顔なのか惚けているのか分らないような表情で話すが、「これまでは得点が取れずに最後にポロっと失点してやられている試合が多かった。第17節の千葉戦(1−0)の週辺りから守備をやらないとボロボロになると思ってやり始めた。その結果、グループでの守り方がはっきりしてきたと思う。もともと悪い戦いはしていなかったけれど、今になってようやく内容に勝点が付いてくるようになった」と漂々と言う。悲壮感がないところがいい。

後半になって甲府が裏を取れるようになると主導権も奪い返した。その勢いで三幸秀稔(61分)、高崎寛之(67分)、レナト(77分)と攻撃的な選手を投入していくが岐阜の選手たちも粘り強く対応。甲府には決定機もあったが、運動量の落ちない岐阜の粘りはここ5試合の結果(2勝2分1敗)がもたらした自信が原動力だったのかもしれない。「そのうち1点は取るだろう」とは思っていたが、気が付けば残り5分を切っていた。焦りとイライラが結合しやすい展開と時間帯。オフサイドの旗が上がるたびにイライラ度数が上がる。それでも、多くのファン・サポーターは泥臭くても勝ちきる甲府を信じて見ていたはず。3分間のアディショナルタイムもそう信じていたが、主導権をより長く取って勝つことも、泥臭く戦って勝つこともできなかった。終わった瞬間は危うく虚無感に支配されそうになったけれど、よくよく思い返してみれば、もう1本、もうちょっとの場面は少なくなかった。新たなステージに進むためのシステム変更とコンビネーションのグレードアップが1試合でフィットしなかったことを問題視するよりも、次節にどれだけ積み上げることができるかを期待する方が健全。今節は東京Vを除いて上位は軒並みコケ気味で足並みがそろっていることもこの考え方を後押ししてくれる。

岐阜は前半戦中盤までの成績が響いて下位にいるが、後半戦は順位を上げるだろうし、昇格争いをするクラブからも一目置かれる存在になりそう。GKの時久省吾は「クラブは難しい状況にあるけれど、それを不安に思うのではなくみんなが一丸になって乗り切ろうとしている。行徳監督は緊迫した中で笑わせてリラックスさせてくれる監督で、上手く選手をまとめてくれていると思います」と雰囲気のよさを強調する。甲府に在籍した期間は公式戦への出場がなく、北九州に移籍して2010年の第33節に小瀬(現・山梨中銀スタジアム)デビューした時久。しかし、その試合はハーフナーマイクのハットトリックなどで0−6の大敗。それ以来の山梨中銀スタジアムだった。開幕当時の序列は第3位だったが、今は4試合連続で先発起用され無失点に貢献。勝った試合でも試合の流れのなかで問題があれば翌節にGKを代えることもある行徳采配の中、高い緊張感を保ちながらプレーできている。「悔しい思い出の場所でもあったけれど、今日の無失点は自信に繋がると思う」。こういった一人ひとりの自信の積み重ねが岐阜の可能性を広げているのだろう。

甲府はどこにもぶつけようのない悔しさをホームで味わうことになったが、チームとしての団結や信頼感には揺るぎはない。「プロは結果が全て」とは言うけれど、同じ船に乗る仲間としては何ができて何ができていないのかは自分なりに判断して、「結果が出ないと全てダメ」というような評価はしたくない。城福浩で成功しないとこのクラブのさらなる発展はないと思うからだ。現場の選手・スタッフが愛され期待されていることを感じるような接し方をしたい。誤解や行き違いだったとしても、現場がファン・サポーターと対決するような構図には絶対に持って行きたくはないし、城福監督は押さえるべきところは押さえてチーム作りをしてくれる。それにまだ半年にも満たない航海の途中。こういう考え方って甘い?

以上

2012.07.02 Reported by 松尾潤
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