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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【J2:第22節 熊本 vs 千葉】レポート:武富孝介の3試合連続ゴールで熊本が千葉から初勝利! 守備対応を含めた狙い通りのゲーム運びで、後半のスタートをきった。(12.07.02)

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順位が試合の結果を左右しないことを、確かに彼らは証明してみせた。前半を18位で折り返し、後期のスタートに2位千葉をホームに迎えた熊本は、今シーズン初の連勝。同じカテゴリーとなって3年目、6度目の対戦にして千葉から初めて―完勝と表現しても十分な内容で―勝利を挙げた。

この試合、それまで3バックの中央を担ってきた吉井孝輔の欠場もあり、熊本は開幕戦以来となる4-4-2の布陣で臨んでいる。狙いとしたのは、「初戦(15節)でかなりやられたサイドのゾーンをつぶす」(高木琢也監督)という点。具体的には、右は西森正明、左に片山奨典と、ともに守備での能力と攻撃にかかった時の前への推進力を特徴として持つ2人を中盤ワイドに置き、4枚にした最終ラインで千葉の2トップをケアしつつ、なおかつ縦で対面する千葉のアタッカーへの対応をはっきりさせるという策である。

試合を振り返れば、複数で囲んで兵働昭弘らサイドの起点を潰し、クロスに対しては中央で廣井友信と14試合ぶりに先発した矢野大輔が跳ね返すなど、高木監督が「ほぼ合格点に近い状態でプレーできた」と評したように、熊本の選手たちはそれぞれが求められた役割を全うした。激しく降った雨の影響でスリッピーになったピッチ状況もあってか千葉のミスも少なくなく、相手の両サイドバックが高いところまで顔を出してくることを踏まえ、熊本はボールを奪うと大きなサイドチェンジを交えながら徹底して背後の薄いスペースを狙い続ける。齊藤和樹の飛び出しも目立っていたが、西森と片山、さらには藏川洋平と筑城和人のサイドバックなど、ボールが逆サイドにある時に非常にいい準備ができていたことも、攻撃でいい形を作れた大きな要因だ。

もちろんセットプレーからも含めて、幾多と迎えた前半の決定機で決めることができていればまた違った展開になっていただろう。しかし(これも結果論ではあるが)0−0というスコアが終盤まで続いたために緊張感が維持され、またお互いが状況に応じて細かい変化を加えて得点を奪いにいった結果として、ゴールシーンの数以上に見応えのあるゲームになった。まず先に動いたのは千葉の木山隆之監督である。
「後半の立ち上がりは悪くなかった」(木山監督)ことで「ちょっとウェイトした」(同)が、60分、右サイドから中央へ入る動きを見せて攻撃に流れを生んでいた田中佑昌に代えて深井正樹をピッチへ送ると、その深井が早速ドリブルで仕掛けて見せ場を作る。だが「深井選手が入ってどう変化するか観察した」熊本の高木監督もこれに対応、65分、齊藤を下げて高橋祐太郎を前線に投入する。それでも、前半の内容を受け「もう少しボランチが前目のポジションをとる」(木山監督)という修正を施した千葉のペースで後半は進んでいくのだが、前述した通りミスも頻発。攻撃に転じても中途半端に奪われる場面も目立ち、またアタッキングゾーンに入ってもラストパス、フィニッシュとも精度を欠いていた。

熊本としては、前半に増して“耐える”展開となっていた後半である。だが前後に早い展開となる中でもコンパクトな陣形を保ち、寄せるべきところは寄せ、出るべきところは出る、そうした1つ1つのプレーにおいて“1歩”を出すことをいとわずに走り続けた。それはウェットなピッチ状態と相まって千葉の選手たちをメンタル的にも消耗させる一因となったかもしれない。熊本の先制点、つまり決勝点は、そうした動きを85分間に渡って積み重ねたことが実を結んだものだったとも捉えられる。

ハーフウェイライン付近で相手のボールを奪った高橋が前に運び、その視野に「いい動きをして」いた武富孝介を捉えると、「ゴールに一番近い選択」として柔らかいパスを送る。千葉のDFラインも揃ってはいたが、カットに行った竹内彬のアプローチは届かない。この数試合で得点を重ねてシュートへの自信を深めている武富にとっては受けた時点で勝負は決まったも同然だったろう、GK岡本昌弘の動きを見て実に冷静に、右足でファーサイドに流し込んだ。この直後、木山監督はオーロイを前線に入れるが、熊本の高木監督もアシストを記録した高橋を本来のDFの位置に動かしてオーロイにあて(実際にハイボールでも高橋は競り負けなかった)、また養父雄仁の交代でボランチに入っていた藏川を再び最終ラインに戻すなどして対応。結局千葉の意図したパワープレーからも形を作らせず、3分のアディショナルタイムもしのぎきって、言わば“狙い通り”の試合運びで勝点3を手にしたのである。

千葉にしてみればミスからの失点に泣いた格好だが、木山監督が「22試合目にしていちばんひどい内容」と話したように、攻撃においてもいいところを出せず、その裏返しとして両サイドのスペースを何度も使われる展開を招いている。これで3試合勝ちなしで5位に後退したが、前節同様にゲームの流れをコントロールできなかった点は、リーグ終盤に影響しないよう修正が求められよう。

熊本は吉井の欠場を受けて止むなく採った4バックだったとは言え、綿密なスカウティングとそれを実践した選手たちの働きによって千葉のストロングポイントを封じた会心の勝利。守備の対応もさることながら、3試合連続ゴールとなった武富の好調ぶりをはじめ細かいパス交換からの崩しも見せた攻撃は、確かにこれまで取り組んで来た成果がピッチに表れ始めたと言っていい。そんな中でも一瞬の迷いや判断の遅さ、あるいは精度の悪さから逸した得点機があったのも事実だし、また高木監督も触れている通り、イージーなミスでボールを奪われる場面があった点は改善しなくてはならない。この1勝も「いい節目にはなったと思うが、あくまで通過点」(高木監督)。反撃ののろしに着いた火は、燃やし続けなくてはならない。大切なのは次、この日やれたことを継続することである。

以上

2012.07.02 Reported by 井芹貴志
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