2順目が明ける今節、湘南は反町康治監督率いる松本を迎え撃つ。アルウィンで行なわれたゴールデンウィークの前回対戦は1−1と引き分けた。「連戦の影響もあり、重さの目立った試合」と、湘南の曹貴裁監督の記憶にあまりいい印象は残っていない。実際、松本は走力とともに裏を狙い、ディフェンスラインの前に空いたエリアを突いた。仕掛けはときに波状攻撃を生み、守っては堅いブロックを築いてスペースを消した。スコアレスで折り返したものの、こと前半は松本の掌上にあった。
「やっていて嫌だなと感じた」そう振り返るのは、くだんの対戦でゴールを挙げている馬場賢治だ。
「守備に戻るのが速かったり、セットプレーでぴったりマークに付いたり、松本は僕らも学ばなければいけないところを出し切っていた。ただ、後半は僕らがセカンドボールを拾い、リズムをつくることができたと思う」
馬場の言葉のとおり、中盤を厚くした後半は湘南がセカンドで先手を取り、逆に流れを手繰り寄せている。そうして終盤、互いに点を取り合い、勝点1を分け合った。
その松本は現在、勝点24で16位につけている。序盤戦こそ負けが込んだものの、千葉から勝利を収め、甲府や福岡、京都に引き分けるなど上位陣から勝点をもぎ取り、第8節以降連敗はない。指揮官のめぐらす知略、また馬場も触れたタスクを真摯に遂行する選手たち、そしてホームアルウィンが後押すパワーも大きかろう。栃木に敗れた前節も立ち上がりは松本が圧していた。セカンドを奪い、素早くゴールに向かう。攻撃のアイデアも随所に見られた。だがゲームの様相とは裏腹にクロスから先制を許すと、後半早々にもセットプレーによって追加点を与えてしまう。失点後、前への推進力に影が差したのは、セカンドで後手を踏んだ面もあったろう。それでも粘り強い守備から決定的なチャンスをつくり出しもしたが、ゴールには届かず苦杯を嘗めた。「前節の敗戦もあるし、強い気持ちを込めてくるはず」常と変わらぬことではあるが、曹監督は週末に向けてあらためて引き締める。
2順目を迎えるに際し、さらに指揮官はこう続ける。
「相手を理解しながら選手たちにいいインフォメーションを与えていきたい。ただ、いつも言うように自分たちのスタイルは変わらない。絶対的なレギュラーはうちにはいないし、選手たちにも慢心はない。毎試合いい準備をして臨むだけです」
前半戦の締め括りとなった前節の千葉戦は、互いのスタイルを発揮しながら攻め合う熱戦だった。「勝てなかったことは非常に悔しいが、選手たちがしっかり90分戦いきった結果なので、清々しい」。1−1と決着はつかぬも、その内容の濃さ、ゲームの充実ぶりは、敵将・木山隆之監督の言葉にも滲んでいた。
こと湘南にあっては、先取点を与えたあとのディフェンスラインがとりわけ目を引いた。仕掛けられてもなお、高い。「やられてしまったけど、強気に上げようとみんなで声をかけ合った。必死でした」鎌田翔雅は明かす。あとでビデオを見返したらちょっと上げすぎていた、と苦笑いも浮かべたが、巧みに動き直す千葉の2トップを相手に、文字通り一歩も引くことなく挑んだ。その後に生まれた高山薫の同点弾は、彼自身強めるゴールへの意欲とともに、コンパクトに押し上げた組織力もまた無関係ではあるまい。
くだんの千葉戦で3試合ぶりに先発した馬場はこう振り返る。「引き分けに終わったけれど、お互いにやり尽くした感覚があった。一つひとつのプレーに緊張感があり、やっていてワクワクした。満足はないけれど、自分なりに手応えも掴めてきている。これからも目の前の試合にすべてを懸ける気持ちで臨みたい」。さらに馬場は、「松本戦以来、点を取ってないんですよ」と口にした。あとに続く言葉は聞くまでもなかろう。
「選手たちが自ら感じ、自己判断を意識したプレーが増えた」と、曹監督が評した成長を、後半戦の一歩としてさらに深く刻みたい。そして、この試合を終えてロンドン五輪へと向かうハン グギョンを笑顔で送り出したい。
以上
2012.06.30 Reported by 隈元大吾
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