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【J2:第22節 熊本 vs 千葉】プレビュー:巻き返しを期して臨む後半の初戦。2位の千葉を迎える熊本は、積み上げてきたことをどれだけ出せるか。(12.07.01)

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5勝8分8敗の勝点23で前半21試合を終えて18位。プレーオフが導入されてチャンスが広がったとは言え、昇格を実現するには、いささか厳しい数字かもしれない。一方で順位表に目をやれば、首位の山形から6位甲府までが勝点差わずか4の範囲にひしめく混戦。これからリーグ終盤にかけて、各チームの状況と思惑が複雑に絡んで潰し合う展開になる可能性もあろう。それでも、14ある勝点差を埋めて熊本が昇格争いに加わるには、コツコツとポイントを積み上げていく以外に術はない。「上位を1つずつ倒していくしかチャンスは回ってこない」と、ここまで唯一全試合に出場している廣井友信は言う。だがこうも続ける。「今は不本意な順位にいるけど、守備も最終ラインだけでなく全体の意思統一が染み付いてるし、攻撃でも今年目指す形から相手の嫌なゾーンに入れるようになった。チームとして貫いてきたことが形になってる」

苦しい展開になったものの、チームとしての進化と深化を徐々にゲームで発揮できるようになった手応えはある。開幕戦の後半から採り入れた3バックは試合を重ねて連携を深め、崩されて危ない形に持ち込まれるシーンは減るなど守備の安定度は増した。攻撃陣も一時期の不振を脱し、チャンスとシュート、またそこにいたるまでのバリエーションも増え、実際にゴールも生まれている。前回の対戦で0−4と敗れた千葉を迎えて後半のスタートとなる今節はだからこそ、今後の展開を左右する意味を持つのだ。

対して、前節の湘南戦に勝てば19節以来ふたたび首位に返り咲く可能性もあった千葉。しかし藤田祥史のゴールで先制しながら、前半のうちに追いつかれて勝ちきることはできなかった。11節から6連勝するなど木山隆之監督のチーム作りが形となって順位を上げてきたが、ここへきてややペースダウン。リーグ最少13失点という堅守も、19節からは3試合、失点が続く。
だが高木琢也監督は、立ち上がりに先制するなど熊本がこの数試合で非常にいいゲームへの入りができていることを踏まえても、「そんなのは全く関係ない。千葉は特別なチームだと考えて、まっさらの状態で入らないといけない」と話す。その根拠は他でもない、千葉の選手の能力の高さ。同監督曰く「状況に応じたフレキシブルなプレーをランダムにできる」という点だ。
藤田の強さや得点感覚、深井正樹と田中佑昌のスピードと仕掛け、中へ入っても絡んでくる兵働昭弘のゲームメイクに武田英二郎のクロスと、失点の少なさの裏返しでもある攻撃面の充実ぶりがリーグ3位の35得点をたたき出している。前回15節の対戦でも、熊本の甘さを衝いて左右、中央と全方向から得点に結んだ。例えばこの試合の2点目となった伊藤大介のゴールも、チームとしての連携で決定的なエリアまで運び、個の判断と技術で決めるという、言わば両輪の連動によって生まれている。さらに、ここまで連敗がないことからも分かる通り、前のゲームの課題を次の試合でしっかり修正してくるのも昇格争いを演じている要因。前節の引き分けを受けて木山監督は「チャンピオンになるにはこういうゲームを取っていかなきゃいけない」と述べているが、そうしたメンタル面のリカバーも綿密に施されるだろう。

ではそんな相手に熊本はどう対峙するか。29日のトレーニングは久しぶり(前回も千葉戦を控えたタイミングだった)の非公開練習となったため具体的な対策までは測れないが、28日の練習で重きを置いていた部分から判断すると、熊本にとって鍵となるのはチーム全体の守備対応で千葉の特徴をいかに消すかということ。1人1人の的確な判断、ボール際での強さや執念がピッチ上では求められるが、「話せ! 1点で泣くこともあるんだぞ!」と語気を強めるなど、特にグループとして綻びを生じないようなコミュニケーションの重要性を、高木監督は改めて説いた。「勝つためには、先に失点しないこと。我慢強く組織的な守備ができるか」(同監督)というのが、熊本にとってこの試合の大きなテーマ。もちろんゴールは必要で、いい攻撃につながる守備ができるかという点に加え、奪ってからの切り替えでどう展開して得点を奪うのか、その狙いにも注目したい。
ここまでの試合で、内容が必ずしも結果に直結しないことは十分味わった。そうした意味で、流れとは関係ない場面でのセットプレーがゲーム自体を左右しないとも言い切れない。守備の際はしっかりとアラートする、攻撃時は逆に、そのチャンスを生かせるかどうかも、勝敗を分けるポイントになるだろう。

同じ勝点で4チームが並んでいるため、千葉にとっても負けられない一戦。「簡単に勝てる相手じゃない」(筑城和人)ことは誰もが理解している。だが試合の内容がそうであるように、現在の順位もまた、この一戦の結果を約束はしない。つまり決して勝てない相手ではないということを、信じ、実際に証明する権利がある。
後半のスタート。熊本が、巻き返しへの1歩を踏み出す。

以上


2012.06.30 Reported by 井芹貴志
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