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【J2:第21節 山形 vs 徳島】レポート:力強さを取り戻した山形が小林監督率いる徳島を1-0と退け、三たび首位に立つ!(12.06.25)

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「選手たちは直々に指導を受け、ともに戦ってきたというところがありますから、特別な思いを持っていた選手もいると思います」(奥野僚右監督)
山形を08年から4年間指揮し、その間にクラブ初のJ1昇格、さらに2度の残留を果たした前監督を迎えるNDスタには、ピッチの内外を問わず、さまざまな思いが交錯して見えた。それをすべて受け止めたうえで、この一戦を雑音に惑わされることなく全力で戦うことを求めた奥野監督は、こう続けた。「でもそれ以上に、いま自分たちのある姿というものを、チームとして表現しようという部分を非常にモンテディオの選手たちに感じました」。1-0で徳島を下し4試合ぶりの勝利を手にした山形は、シーズンの真ん中で三たび首位に立った。

22分、徳島のプレー。左サイドからドウグラスとのワンツーで中にボールを持ち込んだのは衛藤裕。そこからのパスを、右サイドやや中に入った宮崎光平が受けると、そのまま右スペースへ流し込んだ。しかし、サイドバックの西嶋弘之は宮崎の意図とは違いまだ上がってきていなかったため、サイドハーフ同士のプレーは、相手にボールが渡って終わる。このプレーは、前線に人数をかけずセーフティなプレーを重視し、その代わりに、守備に切り替わったあとはブロックをつくるまでが早い徳島の前半を、ある意味、象徴していた。最近6試合のうち5試合が無失点と安定した試合運びを見せる徳島は前節と同じメンバーで臨み、ここまで同様の手堅い試合の入りを見せていた。

ただ、前節との違いもあった。ひとつは、前線の津田知宏とドウグラスがほとんど起点として機能したなかったこと。山形のセンターバックに十分に対応されたなかであることと、パスの出どころに山形のプレッシャーがあったこと、特にボランチから縦へのボールがほぼ封じられていたことが要因だった。ドウグラスは中盤まで下り、そこからドリブルをするシーンも何度かあったが、我慢しきれずに遠い位置からシュートを枠の外に外すことが多く、前線が絡む攻撃はほとんど見られなかった。

もうひとつは、裏へ抜ける山形の2トップへの意識は高かったが、「秋葉のポジションをうまく、把握できてるときとできてないときがあって、そこは前半あまりよくなかった」(小林伸二監督)こと。山崎雅人の出場停止でトップ下に入ったその秋葉勝は「多分相手は、『ボールが出てから行け』って言われてるだろうなという感じ」と知り尽くしている相手監督の意図を汲み取り、アプローチがくるまでのタイムラグを利用して前を向いてプレー。その秋葉をケアすると、今度はその一段下から宮阪政樹が左右へとボールをさばくことができた。

技術的なミスは少なからずあったが、そのミスを狙うしたたかさは双方に見られ、奪ったボールに対してすぐにプレッシャーがあるなど、局面の攻防で見ごたえがある前半は0-0。山形にとって、前節・町田戦も0-0で折り返したが、スコアは同じでも内容はまるで違うものだった。

「守備をしながらも、じつは奪った瞬間には攻撃の第一歩が先に踏み出せてるんだよというところの動き出しと、ポジションチェンジも含めての出入りですね。そういった連携は非常によかったと思いますね」(奥野監督)。後半は風下に変わったが、山形は前半からの勢いを持続した。2分には敵陣深く入った石川竜也がゴールライン手前からマイナスに折り返して宮沢のシュートにつなげると、その2分後にも中島裕希が強引に突破。クロスがゴール前の萬代宏樹か秋葉に合えばというシーンをつくっている。均衡が敗れたのは58分、高い位置でボールを受けた石川から、船山を経由して、やはり高い位置にポジションを取った小林亮へ、左から右へのサイドチェンジのあと、ボールはサポートに入った船山にいったんは戻されたが、その間に右サイドへ寄ってきていた宮沢へのくさびがワンタッチで裏に出され、小林が衛藤のマークをはがし、くさびに食いついた那須川将大の裏を突いてドリブル。ゴールライン際からポストに近づいていき、パスコースを消されたことを確認するとすぐにシュートに選択を変更する。「ああいう角度からシュートが飛んでくるとキーパーも反応しづらい」と冷静に股下を狙ったシュートはそのままゴールマウスに吸い込まれた。

1点を先制した山形に対し、徳重隆明、鈴木達也、太田圭輔を投入。中盤は途中出場の山形・永田亮太のアプローチも含めて厳しいプレッシャーを受け、ボールの出どころは下げられていく一方。「ある程度ボールを運べますけど、その先のところがうまくいかなかったなと、点を取るまでにいかなかった」(小林監督)と決定機をつくるまでには至らなかった。

「だいぶいい形になってきたんですけど、どうしても上位に勝てない現状です。上位だったら、湘南に引き分けたぐらいで上位に勝ててないというところで、もう少し細かいところの連携だったりというところは必要かなと思います」と、まだ埋めるべき上位との差を実感した小林監督は、9月2日の再戦の話を振られると、「もっとチームがいいようになって今度を迎えたいなと思っています。今度は点が取れるように」とリベンジへの静かな闘志をのぞかせていた。

今季最多の動員を記録した「県民応援デー」で勝利した山形・奥野監督は「県民の皆様とともに歩むモンテディオ山形というものを、本当に注目されるなかで『こういうチームなんだよ』と伝えたい部分を表現できたんじゃないかなと思います」と、こちらも独特の表現で勝利の意義を説明した。

小林監督や宮崎との対戦で注目を浴びていたが、選手たちがクリアしたかったハードルは、「3連戦、勝ちきれてなくてもったいない試合が続いた」(西河翔吾)ということ。それだけに、「相手どうこうじゃなくて、今日は大事な試合だとはみんなで話してました」(西河)と高いモチベーションで臨み、結果を出した。「この勝利をきっかけに、また一段、自分たちのステップが上がったと認識しています」。壁に正面から向かっていったことでまたひとつ成長できた、そんな思いが奥野監督の言葉にこもっていた。

以上

2012.06.25 Reported by 佐藤円
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