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【J2:第21節 水戸 vs 京都】レポート:水戸がアグレッシブを貫き、「強い」京都を撃破!だが、そこに“満足”はなかった(12.06.25)

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「お互いに特徴の出た面白いゲームだった」。柱谷哲二監督の言葉がこの試合をよく表している。勝利した水戸も、敗れた京都も持てる力をすべて出し切った90分。3対1という点差になったものの、ピッチ上にそれほどの差は見られなかった。ただ、水戸の方が京都よりも「勝利」と「ゴール」にこだわる姿勢で若干上回ったことが、結果となって表れた。水戸はついにトンネルを脱し、京都はまたしても脱することはできなかったが、出口が近いことを予感させる内容を見せることができた。両チームにとって、実りあるゲームとなったことは間違いない。

「京都は強かった」。水戸の選手たちはそう声を揃えた。京都は序盤から徹底してショートパスをつなぎ、水戸陣内に押し込み、ボールを奪われても素早く攻守を切り替え、プレスをかけてくる。京都のアグレッシブなサッカーに対し、水戸はなかなかペースをつかめなかった。「切り替え、そしてディフェンスのよせは決して悪くなかったと思います。前半のパスワークも悪いどころか、よかったと思います」と大木武監督が振り返るように、ここ数試合をはるかに上回るサッカーを京都は繰り広げた。

だが、水戸は一歩も引くことはなかった。引いて守るのではなく、前線から激しくプレスをかけて京都のパスワークの威力を半減させようとした。なかなかボールを奪えずに苦しい展開が続くものの、1人1人が献身的なプレーを見せて、付け入る隙を与えず。怖れることなく、ボールを奪いに行く姿勢を貫いた。京都の攻撃的なパスサッカーに対して水戸は攻撃的な守備で対応したのであった。

その積極的な姿勢が先制点を生んだ。中盤で西岡謙太がインターセプト。中央をドリブルで駆け上がったところを倒されて得たFK。橋本晃司がゴール前に入れたボールを塩谷司がシュート。DFに当たり、浮いたボールにいち早く反応したキム・ヨンギがボレーで豪快にゴールに蹴り込み、水戸が先制する。

その後、京都がさらに攻勢を強めてくるものの、水戸もアグレッシブさを失わない。積極的なプレスをかけ続け、ボールを奪えば、素早いカウンターからゴールを狙うという意識を持ち続けた。そして37分にロメロ・フランクからのスルーパスを受けた橋本晃司がヒールキックで相手DFにボールを当ててCKを獲得。その際、鈴木隆行の勝負の勘が冴えた。「相手が来ていないので、早くもらおうと思った」という鈴木隆は素早くショートCKを要求。キッカーの橋本からパスを受けてペナルティエリアに侵入。慌てて対応した秋本倫孝に倒されてPKを獲得。自ら豪快にゴール右隅に決めて、2点差とする。
その2分後に工藤浩平からのクロスを久保裕也に頭で合わせられて1点差に詰め寄られてしまうものの、今の水戸はそこで下を向くほど弱くはなかった。2度の3連敗という悔しさを味わい、真の戦う集団に変わろうとしている。後半開始のプレーがその意思表示であった。

後半のキックオフ、鈴木隆はボールを下げることなく、ドリブルしてから右サイドに展開。「攻めに行くぞ」。鈴木隆のプレーにはメッセージが込められていた。予想と異なる形で水戸が攻めてきたことに京都は混乱。その隙を水戸は逃さなかった。一度はボールを奪われるものの、すぐに橋本が奪い返し、右サイドから攻め立てる。そして岡田佑樹からのパスをペナルティエリア内で受けた橋本がペナルティエリア内で倒され、この日2本目のPKを獲得。今度は橋本が冷静にゴール右隅に決め、再び2点差に突き離す。

そこからの京都の攻撃の迫力はすさまじいものがあった。途中出場の三根和起を起点に2列目、3列目の選手が果敢に飛び出し、水戸ゴールに襲いかかってきた。さすがの水戸のプレスも効力を発揮しなくなり、防戦一方の展開を強いられる。FWの鈴木隆が最終ラインに戻ってまで守備をするなど、ギリギリの状態に追い詰められた。しかし、「きれいにプレーしようという京都っぽいところが出てくれて助かった」という塩谷司の言葉通り、京都は崩しきろうという意識が強すぎて、水戸の粘り強い守備に跳ね返されてしまった。後半、京都の圧倒的なペースで進んだものの、45分間で放ったシュートはわずか4本。それでは水戸の守備を崩すことができなかった。

4試合ぶりの勝利を手にした水戸。調子の悪い京都ではなく、「内容がよかった」(大木監督)京都から勝利を手にしたことに大きな意義がある。今後に向けて大きな1勝と言えるだろう。しかし、試合後、選手たちは勝利を喜びながらも、満足していない様子であった。「内容はよくなかった」。数人の選手がそう口にしたのだ。守備では積極的なプレスを貫いたものの、攻撃面では自慢のパスワークを発揮する場面が少なかった。「京都と同じぐらいパスをつないで攻めたかった」と橋本は残念そうな表情で口にした。強豪・京都に勝利しながらも、満足することはなく、「もっとできるはず」とさらなる向上心を燃やしている水戸の選手たちに大きな可能性を感じざるを得なかった。伸びしろを残しての京都撃破。水戸はもっと強くなれる。

以上

2012.06.25 Reported by 佐藤拓也
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