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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【J2:第20節 熊本 vs 北九州】レポート:押し込みながら勝ちきれなかった熊本と、リードを守れなかった北九州。勝点を分け合ったバトル・オブ・九州は、お互いに課題を残す一戦となった。(12.06.18)

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シュートは21本対8本。こういうゲームの後は判定勝ちをアピールしたくもなるが、数年前には現在J1にいるチームを相手にシュート2本でゴールを奪って勝ったこともあるし、ゴール数が勝敗を決める分かりやすさと内容が結果に直結しない理不尽さを併せ持つのがサッカーの魅力なんだと言い聞かせるしかない。過去2シーズンの4試合で1勝2分1敗の北九州を迎えた今季3戦目のバトル・オブ・九州は、2−2のドローに終わった。

しかし序盤は非常にいい入りだった。熊本は最近の試合でトップを張っていた高橋祐太郎の出場停止を受けて齊藤和樹が先発。さらにシャドウの一角にも、五領淳樹が5試合ぶりにスタメンに名を連ねた。3分、この2人が期待に応える働きを見せる。右サイドで養父雄仁からのスルーパスを受けた五領は「最初は自分でゴールに仕掛けようと思った」が、中の状態を見てクロスを選択。少し中へ切れ込んで左足から送った柔らかいボールを、外に流れながらの難しい体勢ながら齊藤が頭で合わせ、熊本が先制した。

熊本がリズムを掴んだのは、ボールを奪ってからクイックな切り替えで北九州の背後を徹底して狙い続けた成果だ。サイドバック、特に左の関光博が積極的に押し上げてくる北九州の特徴を踏まえ、その裏を衝くことによってセンターバックの間が開けばクサビを打ち込むなど、ボールの運びとオフ・ザ・ボールの動きでDFラインにギャップを作らせながら、外と中を効果的に使い分けた熊本は、12分に中央の縦パス、16分に大きなサイドチェンジからいずれも武富孝介、その後のコーナーキックからも吉井孝輔のヘディングと、先制後も決定機を量産。だが「先制した後に若干下がりすぎてしまった」(高木琢也監督)ことも影響して早い時間に追加点を奪えず、熊本のペースで運んだのは20分ごろまでだった。

一方の北九州は23分に自ら得たPK、29分には木村祐志のFKから、熊本のミスを衝いたセットプレーで端戸仁が2発を決め前半のうちに逆転。ボックス付近での細かいパスワークからゴールに迫る場面も作っていたものの、流れの中では決して主導権を握れていたわけではなかった。それでも池元友樹が33分に負傷交代したことによって関が中盤にポジションを移すと、冨士祐樹が左サイドバックに入り、「熊本さんの攻撃のケアをした」(三浦泰年監督)。つまり、関の攻撃参加の代償として生まれていた“熊本が使えるスペース”を、結果として消したのである。

しかし後半に入ると流れは一変。「ボールを取ったら、どんどん前に、早く攻める」というハーフタイムコメントにある高木監督の指示の通り、前半からタイミング良くボールを引き出していた藏川洋平のスペースランニングをはじめ、前の動き出しと養父ら出し手のイメージがかみ合うシーンは多く、熊本の前への圧はさらに高まった。そうした形から深い位置まで入って得たコーナーキックには、吉井や廣井友信が合わせるなど得点機を演出。リズムとして単調になりかけた中にあって、交代出場で落ち着きを作った根占真伍、前線でターゲットとなって納めることを期待された矢野大輔と、「途中で入った選手がうまく機能して」(高木監督)、79分、チームのJリーグ通算200点めとなる武富の今季7点めのゴールで遂に追いつく。その後も勝ち越し点を狙い、終了間際からアディショナルタイムにかけての数分だけでも齊藤、養父が決定的なシュートを放つが、北九州GK佐藤優也の好守、さらにはクロスバーに阻まれるなど得点にはいたらず。ゲームとしては非常に見応えのある展開になったが、終了の笛と同時にピッチに座り込む選手たちの姿が、お互いに勝ちきれなかった無念さを物語っていた。

追いつかれて勝点をこぼした北九州だが、短い時間で修正して流れを変えたこと、さらに端戸が2ゴールと結果を出し、また負傷明けの新井涼平、冨士が実戦に戻れたことは収穫。試合への入りや後半に押し込まれた点は課題としてあるものの、こうした苦しいゲームはチームの経験値として蓄積されていくはず。得点はセットプレーからだったとはいえ、ゴール前のコンビネーションからチャンスを作るなどやろうとしていることは形として表れている。「より相手を困らせるようなサッカーを構築したい」という三浦監督の言葉は、それが可能だという自信の裏返しだ。

対する熊本も、ラストパスやフィニッシュの精度、さらに失点の仕方等に課題を残した。「上に行くチームは取りきれたり、こういう試合で勝ちきれる」と藏川が言うように、こうしたゲームできっちり勝点を積み上げていかなければ昇格争いに絡むのは難しいし、前半を総括して「勝ちきれないゲームが多かった」と述べた高木監督の言葉の通り、引き分けの多さが現在の順位につながっているのも事実。しかし、逆転を許しても「自分たちを見失わずにやるべきことをやって」(高木監督)追いついた点はメンタル面の成長と捉えられるし、攻撃の形もここへ来て練習の成果が表れ始めた。90分のゲームでそれができるようになった、と考えれば、42試合のリーグ戦で同じことができないはずはない。次節で折り返すリーグ戦、後半に巻き返す用意は、少しずつ整いつつある。

以上

2012.06.18 Reported by 井芹貴志
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