かたや、日本代表の清武弘嗣、韓国代表のキム ボギョンらを軸に、若き逸材が並び、攻撃力あるタレントも揃うＣ大阪。かたや、すでにＪ１で二桁得点（10点）をマークしている得点ランキング１位の佐藤寿人を擁して、リーグ随一とも言えるパスサッカーを展開する今季好調な広島。アグレッシブさを売りにする両者が、Ｗ杯アジア最終予選による中断期間明け最初のＪ１リーグ戦、この第14節で、顔を合わせる。

実はこの両者の、今季の対戦は、通算３度目。最初は、開幕直前の３月４日、大阪長居スタジアムにて45分×３本の形で行われた完全非公開の練習試合。そして２度目は、ちょうど１カ月前となる５月16日（水）に開催されたヤマザキナビスコカップ予選リーグ第４節だ。結果は練習試合が４−４、ヤマザキナビスコカップが２−１と、Ｃ大阪の１勝１分となっている。

ただし、「練習試合も難しいゲームだった」とケンペスが言うように、３月の対戦では、主力組が出場していた１本目には０−２とＣ大阪が劣勢。また、ヤマザキナビスコカップではＰＫゴールで土壇場にＣ大阪が勝ち越したものの、その値千金の決勝点を決めたキム ボギョンが「苦しい展開だった」というように、広島のパスをつなぐポゼッションサッカーに苦戦している。

「広島は本当にいいチーム。ボールのつなぎ方は本当に洗練されたものがある。対戦相手にかかわらず、彼らのスタイル、ボールの動き方、つなぎ方はまったく変わらない。そこがしっかりできているからこそ、今の順位に彼らはいると思う」と相手を評価するセルジオ ソアレス監督は、「対戦相手としては非常にクオリティが高いチームだが、我々もしっかりと自分たちのものを出すことが大事になる」と、気を引き締め、この１週間では、広島戦勝利に向けてハードトレーニングを選手たちに課してきた。

それでも、１カ月前に比べてＣ大阪のチーム力もアップしている。ケンペスがＪ１第12節柏戦から公式戦３試合連続ゴールを決めれば、最近ＦＷで起用されている柿谷曜一朗は、ヤマザキナビスコカップ第５節川崎Ｆ戦で２得点を決めてチームの勝利に貢献。さらに、多くの主軸が不在だったヤマザキナビスコカップ２連戦では、１勝１敗ながら、新たに出番を得た選手が活躍。「チーム全体のクオリティを見せることができ、２試合ともいいゲームだった」と指揮官も手応えをつかむような内容を残し、主将の藤本康太も「誰が出てもいいプレーができるところは強みになると思う」と胸を張る。

そして、今回は、日本代表で２試合途中出場した清武、親善試合のスペイン戦で韓国代表デビューを飾ったＧＫキム ジンヒョン、Ｗ杯予選２試合で２得点２アシストの大活躍を見せたキム ボギョンが、チームに復帰。また、９日の仙台戦に出場停止だった播戸竜二、扇原貴宏、酒本憲幸も満を持して戻り、ケガで戦列を離れていた黒木聖仁も全体練習に合流。14日の練習には、久々にメンバー26人全員が揃い、Ｊ１再開に際してＣ大阪の臨戦態勢は整った。暫定11位からの浮上を図るためにも、Ｃ大阪はここで、１カ月前同様に勝利したいところだ。

一方の広島も、この試合にかける思いは強いはず。１カ月前には、主導権を取りながら、終了間際の不運な失点に泣いたこともあり、そのリベンジを狙って再び敵地に乗り込んでくるだろう。先週のヤマザキナビスコカップでは、第５節で仙台に敗れて予選敗退が決まったものの、その後の第６節では好調な鳥栖を５−１と圧倒。石原直樹、森崎浩司が２得点ずつあげるなど、攻撃力が爆発し、「ホームで闘うプライドを持って闘ってくれた」と森保一監督も称賛する内容も見せ、いい形でＪ１リーグ戦につなげた。ミキッチら主軸が揃う今回の試合では、広島らしい連動性の高い攻撃がさらに披露されることが予想される。

ベストメンバー同士の対決は、どんなゲームになるのか、今から楽しみは尽きない。そして、ヤマザキナビスコカップ広島戦では欠場していた清武のプレーも見どころの１つ。彼にとって、Ｃ大阪で迎えるホームゲームはあと３試合。今回も貴重な一戦になることは間違いない。「キヨ（清武）と一緒にプレーできるのが残り少ないなか、ちょっとでもいい思い出を作りたいし、キヨがいいイメージのまま、海外に行ってもらいたいという思い」と柿谷。果たして、８番、13番のコンビネーションなどでＣ大阪が広島戦Ｊ１負けなし記録（５勝３分け、８戦負けなし）を伸ばすのか。それとも、広島の佐藤が古巣相手にまたもゴールを記録して、上位の意地を見せるのか。どちらにしろ、アグレッシブな熱戦になることだけは、容易に想像できる。

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2012.06.15 Reported by 前田敏勝