ここ数試合、前からのプレスがかからず、ラインを上げられず、コンパクトさを失って勝利から遠ざかっていた愛媛。前節までの7試合でわずか1勝と足踏みが続き、苦しい状況だった。しかしホームに京都を迎え、愛媛はニンスタで無敗を続けていたシーズン序盤戦のアグレッシブなサッカーを取り戻した。その要因は、様々なものが重なり合ったもの。「累積警告にせよ、怪我にせよ、人がいないのでローテーションをしなければならず、その影響もあった」とバルバリッチ監督が選手起用の側面を指摘すれば、「代わりに出た選手が気持ちを入れて試合に臨むことができた」と石井謙伍はチャンスをつかんだ選手たちの気持ちを代弁。内田健太は「上位相手でモチベーションが高かった」と、相手が京都であったことを高い集中力が持続した要因に挙げた。

さらに、秋元陽太は「この試合が前半戦で一番重要な試合だと思っていた。ここでどれだけ気持ちを見せられるか、と思っていた」と語ったが、その言葉通り愛媛の選手たちは攻撃でも守備でも積極的な姿勢を示し続けた。その中でも、特に愛媛の最終ラインと京都のアタッカー陣との駆け引きは興味深いものだった。強気にラインを上げ続ける愛媛の4人に対して、何度も裏を狙った京都のツートップ宮吉拓実と久保裕也。前半15分にはカウンターから宮吉のパスに抜け出した久保がGKと1対1になる場面を作ったが、これは秋元がファインセーブ。その後、京都はツートップと入れ替わるように2列目から工藤浩平、中村充孝らが飛び出そうとしたが愛媛の守備陣はひるむことなくラインを上げ続け、12回のオフサイドを取るなど強気の守備で京都をゴールから遠ざけた。

また、攻めても早く前にボールを運ぶ意識が高かった愛媛。前半24分にはクリアボールを田森大己が拾うと、すかさず縦へ。中央でダイレクトパスを交換したあと村上巧から右サイドでフリーの高杉亮太へ展開。クロスから、フリーだった東浩史のシュートは枠をとらえられなかったが、39分にも同じような形から同じくフリーの高杉がフィニッシュまで持ち込む。得点には至らなかったが、素早いパス交換でゴールへと迫る攻撃は迫力があった。そして、その攻撃がついに実を結んだのが後半9分。セカンドボールを拾うと、前野貴徳はここでも縦を選択。大山俊輔を経由し、走りこんだ石井のシュートは3度京都の守備に阻まれたが、最後はこぼれ球を東が押し込み愛媛は先制点を奪った。さらに4分後には、愛媛に追加点が生まれる。フリーキックを内田が直接、強烈にねじ込みリードを広げた。

対する京都は選手や布陣を変えながら反撃を試みたが、愛媛の守備を破ったのは後半36分。裏を狙い続けていた宮吉のトライが実り1点差に迫ったものの、追いつくことができないままタイムアップを迎えた。「2分1敗とよくない状況だが、踏ん張りどころだという気がする」と大木武監督は試合後に語ったが、交代の3枚がいずれも怪我によるものであったのも気がかりなところ。次節はホームに草津を迎える（6／17＠西京極）が、やはり今回と同じく中3日。次節に向けてはコンディションの調整が最大のポイントになるだろう。

一方の愛媛は好調時の内容を取り戻し、なおかつ京都から勝点3を奪うという最高の結果。勝点を伸ばせなかった停滞の時期を抜け出すきっかけをつかんだ。さらに次節は徳島との四国ダービー（6／17＠鳴門大塚）。この集中力、緊張感を持続する意味では絶好のカードでもある。「ダービーは勝利だけ」。試合後、バックスタンドに掲げられた横断幕の言葉通り、この勢いのまま勝点3を奪うために決戦の地、鳴門大塚へ乗り込もう。

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2012.06.14 Reported by 近藤義博