「フットボールは勝つだけでなく、そこに美しさを求めないと、勝利自体が続かない」。ＦＣ町田ゼルビアのアルディレス監督が、シーズン前に語ってくれたチーム作りの信念だ。その場限りの間に合わせで結果を出しても、選手は成長せず、チームに何も残らない。完成まで手間が掛かっても、しっかりと内容を求めた方が、実は現実的である。それが私の解釈する“オジーの美しいサッカー感”だ。

そんな町田だが、今は“結果”が必要だ。内容を維持するためにも、結果が重要だ。アルディレス監督の言葉を借りれば「勝点によって、自分たちのやっているサッカーを、もっと信じられるようになる必要がある」ということ。私の知る限り、ＦＣ町田ゼルビアのサッカーについて、“内容”を批判する人はいない。しかし結果を見ると3勝3分11敗で21位と低迷している。最下位の岐阜も前節の千葉撃破で調子づき、同勝点まで上がってきた。Ｊ２は長いリーグ戦だから悲観は全く不要だが、町田が“内容に見合った結果”を出せるようになるため、次戦こそ6試合ぶりの“勝点3”が必要だ。生みの苦しみを脱するため、町田はザスパ草津戦を一つの弾みにしたい。

町田はコリン・マーシャルが、警告の累積で次戦は出場停止。4試合ぶりのスタメン復帰が予想される庄司悦大は、「ボールは回っているけど、前に行く選手や、前につける選手がいない」とチームの状況を分析する。次戦は「とにかく前を向くことを意識している」と語る彼が、縦や左右に鋭くパスを振る司令塔として期待される。紅白戦では鈴木崇文、北井佑季を2列目に置く攻撃的布陣が試された。今まで途中交代のＦＷ起用が多かった北井だが、起用法の変更について「中盤は久しぶりなんですけどやりやすい。前にパスを出せるし、タメ作ってもらって自分が裏へ抜けることもできる」と前向きだ。
攻撃的中盤を生かすのは、ボランチに入る太田康介の存在。若いアタッカー陣が攻撃に向かえるのも、「康介さんが後ろにいる」（庄司悦大）、「康介さんは１対１が強い」（北井佑季）という信頼感からだ。太田は06年にザスパ草津のリザーブチームに所属し、“ホテルの番頭さん”とサッカーを両立させる日々を送った。古巣を相手に、いつも以上のプレーを見せてくれることだろう。加藤恒平は前節・徳島戦がプロ初先発だった。立命館大3年までは攻撃的ＭＦで、ＣＢでのスタメンデビューは「全く思い描いてなかった」という彼だが、「できるんじゃないか」という手応えを得たという。次戦の草津戦は「ユースの一個上で、仲がいい。身体能力は走ってもジャンプしても高かったですね」という遠藤敬佑とのマッチアップも楽しみだ。

草津は第9節・水戸戦から第15節・甲府戦まで痛恨の7連敗を喫した。しかし第16節に松本と引き分け、前節の福岡戦は9試合ぶりの白星を挙げている。町田は「諦めそうなところで諦めない」（加藤恒平）、「前からハードワ−クをして、相手のミスを誘うようなスタイル」（太田康介）と、そんな草津の粘りを警戒している。

町田の選手に話を聞くと、“結果”に対する意識がいつになく高まっている。もっとも町田の強みは攻撃で、それを捨てたら結果もない。「前の試合は負けてるとか、次負けたらどうしよう？、という風に思い切ったプレーができないことが一番良くない。新しい試合に、新たな気持ちで臨みたい」と語るのは北井佑季。彼の言うとおり、失ってはいけないのが、攻撃サッカーに必要な思い切りだ。

8日夜はワールドカップアジア最終予選ヨルダン戦、ＥＵＲＯ開幕戦と、ビッグカードが目白押しである。もし夜のテレビ観戦でスタジアムが恋しくなったら、ぜひ翌昼の町田×草津戦に足をお運びください。キックオフ3時間前から、小田急線鶴川駅発の直行バスがスタジアムのすぐ横まで出ています。当日券でもＡ席1,500円、ＡＡ席2,000円と値段もお得です。またこの試合は“長野県川上村マッチ”で、先着で千個の新鮮なレタスが配布される。町田市の自然休暇村があり、ゼルビアとも合宿などで縁がある高原の村から、素敵なプレゼントです。

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