今年のJ2リーグ内のビッグクラブは千葉と京都。クラブとしての腕力は明らかにセカンドグループを凌駕している。今年は名前のある選手が何人もチームを去ったが、同じく名前のある選手が何人も加入している。腕力があるゆえのプレッシャーもあるだろうが、余所から見れば得られるもののほうが確実に大きいように思える。第17節・終了時点では山形に首位を明け渡しているが、京都と千葉が2位と3位にいることは大方の予想通り。しかし、その千葉が前節は最下位の岐阜に敗れ、toto569回最大のサプライズとなった。それも5勝2分で無敗だったホームで、ベンチに5人しか座っていない岐阜に敗れた。打っても打っても入らない。入ったと思ったらオフサイド。これがサッカーの難しさ。でも、甲府サポーター以外の人たちは、千葉は連敗はしないと思っているはず。

甲府はホームで京都（第13節）に完敗をしているので、何としてもJ1に戻らないといけない千葉だろうがホームでは勝つしかない。今年の豪腕ツートップ（京都と千葉）にホームで連敗するなんてことは考えられない。しかし、ここ数節の相手とは明らかに違うレベルだけに期待と不安は背中合わせ。城福浩監督は「（千葉の）サブメンバーを見てもリーグナンバーワン。環境も断トツ。彼らのミス待ちではなく、ミスを誘発するような決定的なプレーをしないと駄目」という。前日練習ではいつも以上にリスタートからの動きを細かく確認しており、ギリギリの攻防から勝利を掴み取るという意思を強く感じた。GW終盤に少しネガティブな空気を周囲に感じたチームだったが、その後は第2次城福改造中盤で連勝し、ベーシックな部分での安定感は出てきた。甲府が2段目のロケットに上手く点火できたかどうかの判断は千葉戦の結果次第かもしれない。

内容で凌駕した前節・松本戦では先制を許して勝ちきれずに引き分け、千葉戦を3連勝で迎えることにはならなかっただけに危機感は強い。こうなったら危機感を集中力と活力に繋げるしかない。今甲府が積み上げるべきものは、クオリティと運動量を両面から捉えて成長に繋げる意識。城福監督が、「クオリティがある選手が走れるチームにならないといけないけれど、（今の甲府は）両立は出来ていないと思う。走れる選手はよりクオリティを高めないといけない。甲府の選手は何かの武器があるからプロでやっている。でも、課題があるから（J2の）甲府でやっている。両方の側面で課題を持っている選手がそれを少しずつ埋めていくことが大事」というように、伸ばしたい部分と足りない部分の両面からのアプローチがポイント。ベーシックな部分での安定感を保ちながら、この部分の質・量の向上を求めていくのがこれから。そして、千葉戦に勝てばこれにプラスのボーナスもある。「自信と確信」。「千葉は最後まで昇格争いを中心となってするチーム。そのチーム相手に結果を出すことが自信となる。ギリギリの攻防を繰り広げて手にする成功体験が次に繋がる。この相手から成功体験を取りたい」というメンタル面のボーナスだ。

千葉は降格してから3シーズン目なので、いろいろなところで「今年こそ」というプレッシャーを受けているはず。今年に賭ける思いは凄いものだと思う。2010年の対戦に続き、今年も電車に乗ってサポーターと一緒にジェフィとユニティが甲府にやってくるそうだが、犬をマスコットにするチーム同士の4−4−2はマッチアップしそう。千葉の攻撃陣は深井正樹（4ゴール）、藤田祥史（7ゴール）、兵働昭弘（1ゴール）、田中佑昌（7ゴール）ら怖そうな人ばかり。失点も9とリーグ最小。それだけに千葉の先制点はツーランホームラン並みのダメージを相手に与える。甲府はダヴィ（13ゴール）にゴールが集中しているので木山隆之監督がどんな対策を取るのか興味深い。青木孝太でトドメを刺すような戦いを見せたいが、残念ながら現時点では怖い顔をまだ見せることができていない。そっちの青木（良太）が出るのかどうかは知らないが、こっちの青木には千葉というモチベーションが上がる試合をブレイクのきっかけにして欲しい。

水曜日に選抜総選挙が終わり、あっちの解散総選挙があるのかどうかは見えないが、甲府の選抜メンバー…先発メンバーは充実してきた。ダヴィと高崎寛之のツートップを生かすピンバ、柏好文、堀米勇輝が先発候補となるサイドハーフ。山本英臣を軸に伊東輝悦、保坂一成、井澤惇、崔誠根（チェソングン）と続くボランチ候補。攻撃陣は一定数の決定機を確実に毎試合作ることが出来るようになった。問題は決定力だが、これが課題じゃないチームなんて絶好調時のバルセロナくらい。千葉だってそれは課題だが、今節は甲府のホーム。多くのファンやサポーターに後押ししてもらい、スタジアムとピッチ内を盛り上げて難敵千葉に勝って「自信と確信」を手にして中盤戦に進みたい。

以上

2012.06.08 Reported by 松尾潤