仙台の完勝、広島の完敗。
身もフタもない言い方だが、それが現実。仙台は、やるべきことを徹底した。広島は彼らのやり方に対応できず、「弱点」と言われている「クロスからの攻撃」に失点を重ねた。
試合開始当初から、広島の右サイドは仙台の攻撃に蹂躙された。梁勇基を基点にコンビネーションを使ってくる仙台の突破を、抑えることができない。石川大徳も横竹翔も孤立してしまい、互いに線が結べずに個々で守っている状態となっていた。
それでも広島が前半を1−0でリードして終えられたのは、クロスを入れられても中で弾き返すことができたこと。そして仙台の右サイドが機能不全に陥っていたことがあげられる。24分、広島が初めて迎えた決定機も、広島の左サイド・清水航平が仕掛けた「中に切れ込むドリブル」から。東海第五高時代はユース年代屈指の点取り屋として鳴らした(2006年のインターハイ得点王、翌年の高円宮杯でも4試合7得点を記録)清水の得点感覚は、サイドハーフにコンバートされても錆び付いていなかった。
だが後半、手倉森誠監督は後半開始早々、一気に二枚替えで勝負する。梁勇基をボランチに置き、武藤雄樹を左から右へポジション移動。右には「切り札」と言っていい太田吉彰を投入し、FWはウイルソン。この采配が、ピタリと当たった。
56分、太田は清水と正対して縦に向けて急発進、刃を振る。クロス。必死に足を伸ばす清水。ボールは当たった。だが、変わった軌道の行く先は、ファーポスト。フワリとあがった時、GKの増田卓也が行くのか、それともストッパーの横竹が対応するのか、一瞬あいまいになった。そこに走り込み、強烈な飛翔を見せて飛び込んだのが、中原貴之だ。
今季、なかなかチャンスが与えられなくても、練習から必死に全力で取り組んできた中原。彼の姿を、手倉森監督は「どこかで使いたい」と感じていた。そして指揮官の決断は「勝利しか、決勝トーナメントに進出できる道はない」広島戦での先発起用。その期待に応える爆発的なヘッドは、横竹の頭上からボールをハードヒット、ネットを揺らした。
こうなると勢いは仙台。65分、富田晋伍の展開から右サイドでフリーとなった太田が、またしてもクロス。後ろから入ってきたウイルソンを、広島は誰も見ていない。ほぼフリーの状態でウイルソンにヘッドを許し、広島は逆転を喫してしまった。
広島・森保一監督はミキッチや森崎浩司といった経験値の高い選手を投入して、流れを変えようと手を打った。確かにその効果はあった。森崎浩を中心にボールは有機的に動くようになり、ミキッチの突破によって仙台の左サイドからの攻撃は鎮火した。広島に具体的なチャンスも増え、ペースは移ったかのようにも思えた。だが、この二人が絡むミスが3失点目を生む。
76分、右サイドに張り出したウイルソンのクロスを森崎和が跳ね返す。高く舞い上がった浮き球。森崎浩はこの時、首を振って周囲の状況を確認した上でボールをしっかりと落とし、ミキッチにつなごうとした。だが、そのミキッチはボールを前で受けるために、スタートを切る。完全なコミュニケーション不足。ボールはそのまま中原へ。シュートを増田は触ったが、ボールは外ではなく中に入り、ネットが揺れた。試合は、決まった。仙台は生き残り、広島の予選突破の可能性は消えた。
それにしても、広島の弱点を徹底してつく仙台の意思統一された闘いぶりは見事だ。土曜日には首位につけるC大阪との直接対決。ここで勝てば勝点9で彼らと並び、最終節の対磐田戦に望みをつなげることができる。そういう意味でも非常に価値の高い勝利だった。
一方の広島は、屈辱の敗退。若手を積極的に起用してきた中での1分3敗という戦績は、広島が抱える選手層の課題を如実に示し、そしてクロスに対する守備の課題も露呈してしまった。公式戦初出場となった鮫島晃太も増田卓也も、自分の持ち味はある程度は出せたとはいえ、それは「新人としては」という注釈がつく。鮫島は攻撃こそ「これは」と思わせる輝きを見せたが守備は積極性を欠いた。増田はファインセーブも見せたが、後半の3失点に悔いを残す。この経験が貴重なものとなるかどうか、それは今後の彼らの精進次第だろう。
敗退したとはいえ、広島には土曜日もホームで試合が待っている。サポーターの前で連敗する姿をさらすことは許されない。「次に勝たないと、リーグにも影響する」という佐藤寿人の危機感を選手全員で共有し、全力を尽くして結果を出したい。
以上
2012.06.07 Reported by 中野和也
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