開始２分にゴール前の混戦から河井陽介が蹴り込んで先制。続く６分には李記帝が直接ＦＫを決めて加点すると、アウェイの清水が早々に試合の大勢を決めてしまった。後半に入っても５７分に石毛秀樹、７８分に杉山浩太がそれぞれ決めて、終わってみれば４−０のスコア。札幌が放ったシュートは僅か１本という、清水の完全なワンサイドゲームだった。

早々に２点のリードを奪ったように、立ち上がりから清水がゲームを支配した。両サイドバックの李、吉田豊が徹底してポジションを高く保ち、そこへ最終ラインの平岡康裕、カルフィン ヨン ア ピンが配球。そうすることで札幌の選手をサイドへと引っ張り出し、中盤の内側にスペースを作り出しては小林大悟、河合らの細かなパスワークを引き出していくのだ。この日の清水は全体がコンパクトに保たれており、中盤ではワンタッチでリズミカルにパスを回していた。マイボールにしてもパスコースを見つけられず、苦し紛れのパスを蹴ってはボールを失い続けた札幌とは、プレーの質があまりにも対照的だったと言うしかない。

札幌も開始直後こそ前線の大島秀夫にクサビのパスが何度か収まったものの、厚みのある清水の攻撃を前に徐々に全体のバランスが崩れてしまった。ボール保持者と周囲との距離が近すぎる、あるいは遠すぎるという場面ばかりとなってしまい、パスがまったくつながらない。清水は高く張り出したサイドバックにキチンとパスが入るのに対し、札幌の方はサイドバックが高い位置に飛び出しても、そこにパスが届く前にボールを失ってはカウンターを受けるばかり。それではサイドバックも思い切って攻め上がることができず、攻撃に厚みが出せない。パスを配球できるセンターバックの存在と、思い切って高い位置でボールを呼び込めるサイドバック。このポジションに関しては、両チーム間のレベル差があまりにも大きかった。

また、この日の清水は大前元紀を最前線に配置していたが、この起用についてアフシン ゴトビ監督は「彼は速さもあるし、動きがダイナミックだったことが相手にとっては嫌だったと思う」と振り返る。最前線のこの大前を中心に、河合、高木俊幸ら機動力のある選手が試合を通じてアグレッシブに走り回り、札幌の最終ラインに重圧をかけ続けた。そうして先手を打ち続けたことが、この日の圧勝劇につながったと言っていいだろう。

「今日は攻撃をしている感じがまったくなかった。ミスが多すぎて、何もできないまま試合が終わってしまった」と札幌の大島。冒頭で記したように、この日の札幌が放ったシュートはたったの１本。後半に入ってからは右サイドからいくつかのチャンスを作ったものの、それも２点のリードを得た清水が守備のゾーンを下げて対応するようになったから。パスがほとんどつながらなかった札幌は、まったく何もできないままにタイムアップの笛を聞くことになってしまった。

やはり試合開始早々に失点をしたチームというのは、どうしてもその後も後手を踏んでしまいがちなもの。ただしこの試合に関して言えば、開始早々の失点が札幌のパフォーマンスを低調なものにしたのか、パフォーマンスが低調だったから早々に失点をしたのかは判断が難しいところである。

ただし、ひとつ感じたこととしては、札幌は清水の厳しいプレッシングを受けながらも、パスをつなごうとしてはミスを繰り返していた。一般的に考えれば、それだけボールがつながらないならば、ロングボールを蹴る戦略へと変更をすればいい。だが、それでも札幌はなんとかパスで打開をしようとした。そのほとんどがミスとなりながらも、だ。あまり賢いゲーム運びではないが、何とかチャレンジしようという気概があったということなのかもしれない。

とはいえ、である。ホームゲームでシュートが僅か１本、４失点という試合を演じているようでは話にならない。「技術、戦術も大事だが、それ以前のところをもっとしっかりやっていかなければいけない」という大島の言葉がすべてを言い表しているだろう。

この試合の結果、清水は決勝トーナメント進出に王手をかけ、札幌は予選リーグでの敗退が決まっている。次節は今週末。清水はホームで大宮と、札幌はアウェイで神戸と対戦する。

以上

2012.06.07 Reported by 斉藤宏則