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【ヤマザキナビスコカップ 大宮 vs 神戸】レポート:伝家の宝刀、美しい3ラインのゾーンディフェンスが復活!守備からリズムをつかんだ大宮、神戸から大きな勝利を奪う。(12.06.07)

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キックオフから30秒。ハーフウェイラインを少し自陣に入った辺りに、美しいオレンジの3ラインが描かれる。ピッチの最後方で江角浩司は、「昔は確かにこんな感じだった。前にいる人たちは変わったけどね」と、懐かしさを覚えていた。大宮の伝家の宝刀である4-4-2のゾーンディフェンスが蘇った。そして神戸は、西野朗新監督の代名詞であるポゼッションサッカーを披露する前に、ミスから自滅した。

鈴木淳前監督を解任した大宮は、岡本武行GM兼ヘッドコーチの指導で守備の立て直しを図ってきた。DFラインと中盤の4人がフラットに等間隔で並び、その形を極力崩さずボールの位置によって前後左右に動く、「ボールを奪いにいく守備から、しっかりゾーンを保って中に入れさせない守備」(渡邉大剛)へ。それに対する神戸は、こちらも監督解任〜代行監督を経て、西野監督が就任して2戦目。ストロングポイントであるハイプレスとショートカウンターに、ポゼッションを加えていく渦中にある。
主導権を握って攻める神戸、守ってカウンターをねらう大宮という構図になると思われた試合は、まったく違う様相のまま推移した。大宮はラインを高くコンパクトに保ち、ボールを奪うと素早く切り替えてカウンターを仕掛け、序盤からチャンスを作った。それも、今までのどこか腰が引けた攻撃が嘘のように、選手たちに前に出る意識が高く、クロスに対して多くの場面でペナルティエリア内に3人が入っていた。「良い守備から、良い攻撃につなげる」(深谷友基)ことができていた。

一方の神戸は正直、チームとして試合に上手く入れていないようにすら見えた。ボールのつなぎの、それも大事なところでミスを連発し、リズムをどんどん悪くしていく。いつもの神戸であればハイプレスで守備からリズムを作っていくが、「ボールの失い方が悪く、なかなか前からプレスをかけられなかった」(北本久仁衛)ことで、立ち直るきっかけもつかめなかった。
神戸は攻撃も守備も、チームとして連動していなかった。32分、下がってボールを受けたチョ ヨンチョルに相馬崇人が食いつく。右サイドに開いてチョからのパスを受けたラファエルにセンターバックのイ グァンソンが食いつくが取りきれず、大きく空いた前方のスペースに展開され、チョの爆発的なランニングからえぐってのクロスを許すと、徳重健太の弾いたボールをゴール前に侵入していた青木拓矢に押し込まれた。連動性を欠き、個人個人が不用意に食いつく守備の怖さを、神戸は身をもって示した。

結局、この1点が決勝点となった。後半、神戸は選手交代も含め積極的に得点をねらいに行ったが、逆に交代で入ったペ チョンソクが1発レッドで退場してしまう。大久保嘉人をFWにしたり野沢拓也をボランチにしたりの戦術変更も奏功せず、終了後の会見で西野監督に「いろいろトライしているが、今日はそれがほぼマイナスに出た」と苦虫を噛み潰させた。北本が「向こうの出来が良かったというより、こっちが良くなかった」と嘆いたように、大宮はその神戸の出来に助けられた感がある。

確かに大宮の出来も決して良くはなかった。「前線の組み合わせが変わったので、少しズレが出てしまった」(下平 匠)ことでミスパスが多かった。前がかりになり、さらには70分から10人になった神戸に対し、カウンターでチャンスをもっと作れたはずだし、4〜5本はあった決定機も、いずれも決めきることができなかった。今シーズン、先制しても追加点を取れず、後半に失点して勝点を落としてきただけに、なかなか安心して見られなかった。
もちろん無失点で終えた守備は讃えられるべきだが、いくら大宮伝統の3ラインとはいえ、江角の言う通り今や三浦俊也監督時代を知る選手はほとんどいない。時間の経過とともにラインが崩れることが多くなり、特にボランチのカルリーニョスが相手のボランチからときには最終ラインにまで食いついてしまうのを抑えることができなかったし、右MFに入ったチョもラインをそろえきれない場面が目立った。最終ラインが勇気を持って押し上げることでコンパクトさは保てていたが、「レベルが高くなるとそこを突かれてしまう」(江角)ような、危険なギャップも確かに存在していた。もう一人のボランチ青木が出色の出来を見せていなければ――、的確なカバーリング、パスコースを読み切ったインターセプト、球際でも力強いボール奪取でピンチの芽を摘み続けていなければ、さらには先制点の場面であの長い距離を駆け上がっていなければ、勝負はどうなっていたか分からない。

予選リーグの上位2チームがともに勝利したことで、大宮も神戸もヤマザキナビスコカップの敗退が決まった。神戸の評価は正直苦しいものがあるが、監督も選手も口々にいう「練習ではできている」という言葉を信じるほかない。敗退したことで3日後のカップ戦は、勝敗を度外視してテスト・熟成に費やすことができる。できるだけ課題を整理してリーグ再開に備えたい。
大宮にとっては、「結果が出ないことで自信をなくしていた」(岡本ヘッドコーチ)状態で、監督解任後の第一戦を白星で終えられたことが何よりの収穫だ。またこの勝利は、2010年から正ゴールキーパーの座を北野貴之に譲っていた江角にとって、3年ぶりの公式戦勝利でもあった。神戸の出来が芳しくなかったことで、復活したゾーンディフェンスの真の評価は3日後に持ち越さざるを得ないが、好調の清水に対して伝統の3ラインを機能させることができるか、今から楽しみでならない。きっと選手たちも同じ気持ちだろう。

以上

2012.06.07 Reported by 芥川和久
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