ハーフタイム中に、「(浦和の)3バックって、守備的なんですね」と記者仲間から聞かれた。確かにこの日の浦和の前半の戦い方は、守備的に見えるほどシッカリと守備のブロックを引いていた。試合後のペトロヴィッチ監督も「前半に関しては、あまり積極的に攻撃を仕掛けることは見られなかった」と振り返った。ボールを奪われた瞬間に、ファーストDFがボールを奪うまでに時間をかけると、シッカリと守備のブロックができていたのでそのように感じたのだろう。3バックの両サイドは、サイドのMFが確実に埋め、ボランチはクサビのパスコースを消して、相手(鳥栖)にボールを「横に回させる」(岡本知剛/鳥栖)布陣を敷いた。
鳥栖がボールを横に回している間は無理して奪いにかからず、ワントップのFWポポがじわりじわりとボールの入るコースを限定していく。出し所を徐々に失っていった鳥栖は、最後にFW豊田陽平を狙ってロングボールを入れることになる。こぼれたボールを浦和が拾った瞬間に攻撃のスイッチが入り、最終ラインまで下がっていた両サイドのMFが最前線のスペースに一気に走りこむ。
先制されると、DFの選手とFWの選手を交代させ、リスクを負ってでも勝利に対する執念を見せた。試合運びのうまさとペトロヴィッチ監督の選手交代意図は、見ている人に十分に伝わったのではないだろうか。一個のボールに対する攻守の約束事を浦和は最後まで見せてくれたと思う。ただ、それでも勝てないのがサッカーの奥深さなのだろう。
逆に鳥栖の選手たちの試合後のコメントは、勝った喜びよりも反省を口にすることが多かった。前半から幾度となく決定機を作り、浦和と同等数のシュート(鳥栖12本・浦和14本)を放つこともできたが、試合をコントロールできていたとは言い難い。しかし、そんな中で2得点をあげることができたのは、「鳥栖のスペシャルな攻撃」(ペトロヴィッチ監督/浦和)を出すことができたからである。
1本目は52分、右サイドからのMF藤田直之のロングスローだった。合わせた相手は、FW豊田。うまく回りこんでマークを外し、ヘディングでゴールに流し込んだものだった。2本目は77分に同点とされた3分後に浦和のゴール前の混線からこぼれたボールをMF水沼宏太が押し込んだものだった。起点となったのは、浦和のクリアボールをMF岡本が拾ったプレー。浦和に守備の時間を与えず奪えたものだった。低い弾道で投げ入れられたロングスローと一気のカウンター。機会こそ少なかったが、得意とする形で決めたことは賞賛に値する。
両チームともある程度の“意図する形”を出したと思う。それでも、相手のあることだから思うように時間が流れないのがサッカー。サッカーの難しさと面白さではあるが、相手の思うようにプレーをさせなかった名プレーを最後にあげておきたい。
この試合の前半だけで、鳥栖のDF丹羽竜平は6本のインターセプトを見せている。相手のパスをカットして、攻守を逆転させるインターセプトは、成功すればチームを危機から救うだけでなく、相手を窮地に陥れるプレーである。スピードだけを持っていてもインターセプトはできないし、高さだけでもできるものではない。そこには、相手選手にパスを出させる駆け引きと、流れを読んだポジショニング能力が必要なのである。丹羽が前半だけで6本のインターセプトを成功させたということは、浦和の6回の決定的な場面を遮断したということで、前半を無失点で抑えた隠れた功労者と言える。華やかな得点の影でも、丹羽のプレーは光っていた。
時代の流れと同じくして、サッカーも進化する。
相手にかけるプレッシャーや、シュートまでにかける時間など、歴然とした違いがある。
しかし、どのチームも同じシステム、同じ戦術で試合を運んでいるわけではない。そこには、監督のサッカー観や選手たちの技術の差があるので、一様に同じにはなりえない。
その違いこそが、勝敗を分けるターニングポイントになったり、見ている人に感動を与えるプレーにつながったりするのである。
ボールのないところでの相手との駆け引きや、流れを変えるワンプレーなどを試合中に見つけるたびに、サッカーの奥深さを知ることができる。
サッカーの魅力は尽きることがない。
以上
2012.06.07 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
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