風上を利した、鳥取・尾崎瑛一郎の目の覚めるようなロングシュートで試合は幕を明けた。
「今日は前半立ち上がりから、とにかくトップギアで入っていこうと、そういう話をしました」(山形・奥野僚右監督)
「個人として100%以上の力を出して、組織として、チームとして戦おうということは伝えてピッチに送り出しました」(鳥取・吉澤英生監督)
山形は3位、鳥取は18位と順位は違ったが、互いにフルパワーでのぶつかり合い。3トップのサポートに船山祐二が絡んだ山形の8分の攻撃では、サイドへの展開から石川竜也のクロス、山崎雅人のヘディングシュートと攻撃が連動。対する鳥取も、今季初先発で4-3-3のアンカーに入った吉野智行を軸にしながらポゼッションし、バイタルエリアに潜り込む実信憲明の足元にくさびを合わせてからのコンビネーションやターンでジャブを繰り出した。吉野は「自陣での攻撃に関して、怖がらずにできてた部分は多少はあると思う」とビルドアップの手ごたえは感じていた。住田貴彦やサイドバックの三浦修が左サイドの高い位置で何度か起点もつくっているが、得点を取る部分では「最後の最後で体を投げ出して、体を張ったディフェンスをあそこで山形さんがしたということでシュートのイメージは残らなかった」(吉澤監督)と、10分に美尾敦が放ったこの試合2本目のミドルシュート以降は前半のシュートが記録されなかった。
山形も鳥取のテンポの速いパス回しに守備で後手を踏むシーンがあり、奪ったあともロングボールが多めで、全体が間延びしたなかでセカンドボールも十分に拾っているとは言いきれなかった。さらに押し込んでも、戻りの早い鳥取のブロックを崩しきるまでには至らなかったが、セットプレーの回数を確実に増やしながらチャンスをうかがった。均衡が破れたのは39分。山形の右コーナーキックの流れから、中央でクリアボールを拾った船山がペナルティーエリア右に残っていた石川の足元に付けると、ノンステップから左足でクロス。ファーサイドの石井秀典がスタンディングからのジャンプヘッドで先制のゴールネットを揺らした。
ハーフタイムをはさんだ後半の主役は、なんと言っても宮阪政樹だった。48分、中島がファウルを受けて得たほぼ正面、約25mの直接フリーキックを沈めると、それよりやや角度も距離もある53分の直接フリーキックでも再びゴールネットを揺らしている。「2点目は中に合わせるような仕草であったり、相手キーパーとうまく駆け引きができた」とGK小針清允の反応を遅らせるしたたかさで、山形が一気に3-0と差を広げた。
実信のミドルシュートで鳥取も1点を返したが、勢いに乗って押し込んでいた矢先、カウンターから落とし穴が待っていた。船山のパスに飛び出した山崎を倒したとして、得点機会阻止で尾崎が一発退場。65分のPKを中島裕希に決められて再び3点差とされた。点差を縮めようと鳥取がリスク覚悟のプレーを続けるなか、山形は数的優位を利用して確実にボールをつなぎ、スペースからスペースへとボールを動かしながら主導権を握った。鳥取が鶴見聡貴の投入とともに3バックにしてからは、小林亮がより高い位置を取って主導権を渡さず、85分にはスローインから、途中出場の太田徹郎がゴールライン際から上げた右クロスを中島がヘディングで合わせてダメを押した。
「ゲーム自体は、ふつうの試合をしていれば5点差つくような内容じゃないけど、決めるべき人がいるほうには、いいキッカーがいて、そのなかで決める人がいるというところは大きいです」と鳥取の戸川健太。ロースコアの展開に持ち込みたかったが、山形の抜け目のなさと決定力の前に屈し、2試合続けての5失点となった。「すべてダメだったというわけじゃなく、前半、我々も早い時間帯から、ある程度間延びというかオープンな展開になっていたので、吉野、サネ(実信)、美尾を中心にボールを動かせました」と吉澤監督も一定の手ごたえをつかんでいるが、これをいかに得点につなげるかは、大量失点の解消と並行しての作業となる。次節は尾崎に加え、水本勝成も累積で出場停止となるなかで、次節は東京Vをホームに迎える。
11勝目にしてようやく「大勝」と言えるゲームが実現したが、奥野監督は得点差よりも、1節で再び首位を奪い返したことよりも前に、「笛が鳴った瞬間から非常に緊迫したゲームにはなりましたけれども、とてもひとつひとつのプレーに思いがこもっている、意思があるというプレーができたのがとてもよかった」と選手たちのスピリットの部分に言及し、「相手が一人少ない状態でも、自分たちがバランスを崩すことなく、相手に攻撃の機会を与える回数も少なく追加点を奪えたというところが、非常に評価できる部分であり、よかったなと思う点であります」と攻撃の手を緩めなかったと選手たちを賞賛した。
それでも、石川は「得点は入ってるけど、修正するところはいっぱいあるから」と大量得点での勝利を手放しでよろこぼうとはしなかった。「前半とか、ボールが後ろから運べないし、センターバックはもう少し落ち着いてさばけないと」とあえて苦言を呈し、さらに、失点した時間帯などで守備がルーズになっていたことや、27本とシュートを量産しながら5得点に終わったことにも触れた。次節は京都との首位決戦が待っている。1週間でできることは限られるが、そのなかでできる最大限の進歩を遂げて西京極に乗り込みたい。
以上
2012.06.03 Reported by 佐藤円
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