記念すべき第一歩を刻んだ『甲信ダービー』初戦は、その名に恥じることのない手に汗握る好ゲームとなった。チーム最多動員を期待された一戦だが、残念ながらその記録には僅かに届かなかったものの、12,341名の入場者数を記録し、この試合に華を添えた。
試合開始して10分で両チームの地力の差が理解出来た。高崎寛之が負傷で大事をとって欠場したものの、代わりに起用された永里源気も実績はあり、スピードに優れた好選手だ。そして何より、ダヴィである。戦前から「スピードがあり、ヘディングも強く、決定力も高い、三拍子揃ったストライカー」と反町康治監督も警戒していたが、まさしくJ2では頭一つ抜けた存在であることを証明した。高いキープ力とテクニックで、ボールを持てば、第一の選択肢はシュート。どんな苦しい状況でもシュートチャンスへと繋げてしまう。5分にはボールを持つやためらうことなく右足を振り抜き、12分には狭いスペースをものともせずにグラウンダー気味の強烈なシュートを放つ。また、両サイドのピンバと堀米勇輝も最前線へと攻め上がり、全く気を許すことが出来ない。この前線が松本守備陣へとかける圧力は、J2でも屈指だ。
しかし22分、先制点を挙げたのは松本。右サイドから上がった玉林睦実のクロスに、ゴール前まで詰めていた鐡戸裕史が対応。ダイレクトで合わせたシュートは甲府GK荻晃太の頭を越え、ゴールネットに突き刺さった。このゴールについて、試合後の反町監督も「サイドからサイド。練習でやっている形。長い距離を走って相手を追い越した」と長い距離を走ったこととトレーニングで積み重ねてきたことが、得点という結果へ昇華したことを高く評価する。
これで甲府に更に火が着く。36分、ゴール前での混戦の中を抜け出したダヴィが同点弾。足をちょこんと伸ばした泥臭く押し込んだゴールで試合は振り出しへと戻る。激しい45分間はもっぱら甲府が主導権を握っていたが、同点なのだから、ある意味上々の折り返しである。
後半は、ギアをトップに上げた甲府が猛攻を見せる。その牽引役は、後半11分にピンバに替わって投入された柏好文だ。「チームの雰囲気を含め、活力を与えられるように」との言葉通り、その縦への速さで投入早々に左サイドを掌握。松本は何度も失点の危機に陥ったが、その都度守備陣が身体を張って阻止。両チームとも一歩も退かない我慢比べの様相を呈す。
そして一つのビッグプレーが産まれたのは、後半42分。「そんなにボールが伸びなかった」という玉林のバックパスを奪った永里が、そのままドリブルでゴール前へと独走。試合終了を目前にしての危機的状況となったが、野澤洋輔は冷静に「飛び出さずにステイしよう」と1対1を選択。永里の放ったシュートを冷静に左手で防ぐスーパーセーブで失点を阻止した。松本もセットプレーでワンチャンスに賭けるなど、アディショナルタイムまで目まぐるしく動いたゲームはこうして1-1の引き分けという形で幕を閉じた。
「絶対に勝点3をとらないといけないゲーム」と顔を強張らせた甲府のダヴィと、「今日の内容だったら、1-1は良かった」と安堵の表情を見せた松本の楠瀬章仁。これが、この試合の全てを物語っている。
甲府としては悔しい結果となったが、魅了的なアタッカーを揃え、ボールをポゼッションしつつゴール前まで攻め上がる攻撃はやはりJ2でも屈指。また、その波状攻撃を弾き返し続けた松本の守備の堅さも改めてクローズアップされたと言える。
多くの人の多くの想いが、複雑に交錯した松本アルウィン――。『甲信ダービー』の歴史はこうして幕を開けた。
以上
2012.06.03 Reported by 多岐太宿
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