「いつか勝つんじゃない。次、勝つ勢いで」。北九州のキャプテン、木村祐志が語気を強めた。
ホーム4戦勝ちなしの北九州。アウェイ戦では内容のある試合をしていながら、ホーム戦では内容も結果も手にすることはできていない。昨年は無類の強さを誇った本城。慣れたピッチ、いつもの声援。ホームの利を生かし、今節こそ勝利を手にしたい。
再浮上のきっかけは掴みつつある。たとえばアウェイで戦った前節・京都戦は0−1で敗戦を喫したものの、粘り強く戦いアディショナルタイムにはゴールに肉薄した。この粘りこそ北九州らしさの象徴と言えるだろう。後半に「アグレッシブに入ることで、なんとしてもリズムを持って来たかった」と話すレオナルドや、長身の林祐征を投入したことが奏功。パスもつながり、相手を走らせることもできた。パスサッカーの継続とスピード、そして粘りは、運動量で上回ることにも直結し、昨季のような「劇的」な展開に迫っていた。
しかし、ゴールネットは揺れなかった。「シュートを意識しないと」と木村。今節は、そのシュートへの意識も重要になる。
5月の5試合で挙げた得点は5点。1試合平均1点で、これは3月、4月とほとんど変わらない。ただ、当然ながら得点以上に失点が多いことが現在の14位の理由。どんな試合であれ1失点の覚悟は必要で、勝ちにいくならば、それ以上に点を取らなければならない。
もっとも今季はペナルティエリア内でどう崩すかを課題のひとつとし、三浦泰年監督も攻撃面へのこだわりをみせる。途上にあるいまは、どこで誰がくさびを入れるか、どのタイミングでシュートに行くか、あるいは、どこまで回すのか――そうした意識、理解にまだばらつきがある。だが、ペナルティエリア内へ入り、シュートチャンスを広げることへの挑戦に臆している色はない。あとは、精度の向上であったり、1秒でも早い判断力の洗練が必要であり、一朝一夕にはできないが、チャレンジすることは必ず次へとつながる。
今節ももちろん結果を求めて戦う。しかし、そうしたチャレンジする姿勢にも注目してほしい。三浦監督は「チャレンジできるスキルは上がってきている」と話す。ただ今季は相手の研究が進み、優位に試合を運べてはいない。それでも「辛抱強く作るしかない。トレーニングで積み重ねてきたことができる試合もあれば、できない試合もある」と三浦監督。いまは完全には噛み合っていない歯車は、辛抱強く戦っていくなかで、なにかの拍子に、おそらくはそんなに大きくはない衝撃できちんと噛むようになるはずだ。「できる試合が多くない中で、きっかけになる試合をホーム、本城でしたい」。三浦監督が力を込める。
湘南もまた足踏みをしたままだ。5月は5試合すべてが引き分け。大型連休の連戦から7試合、勝利から遠のいている。それでも湘南にもまた変化の兆しが現れている。前節はホームで徳島に引き分けているが、曹貴裁監督は試合後、「第2ステップという言葉を、ちょうど4回連続引き分けていたこともあったので、使って示した」と話した。より高い質を求める段階に来たという判断があったのだろう。今節もチームの持つポテンシャルを引き出しつつも、距離感やスペースの使い方にも修正を重ねて本城入りするはずだ。「掴みどころのないチーム」と三浦監督も警戒する。その湘南の攻撃力と、ボールに対するディフェンスを強める北九州守備陣とのマッチアップも注目して見たいポイントだ。
勝点3から遠ざかっているチーム同士の対戦。この試合を制するのは、もしかしたら、ハートの持ちようなのかもしれない。気持ちで勝てるなら勝っている――というのはその通りなのだが、上を目指して勝とうとする気持ちが一瞬のためらいに勇気を与える。湘南の現況を北九州担当の私が述べることはできないが、少なくとも北九州イレブンはまだ何も諦めてはいない。ボールを追う選手の目に、濁りはない。
目指す場所がある限り、そう、戦い続ける。
チャレンジに終わりはない。
以上
2012.06.01 Reported by 上田真之介
J’s GOALニュース
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