『甲信ダービー』を、「作られたダービー」と斜に構えた姿勢をとるのは簡単なこと。しかし松本山雅FCを長らく見てきた筆者は、甲府とこうして公式戦を戦えるという事実に、未だ実感が沸かないというのが正直な感想だ。
松本と甲府の間には幾つかの縁がある。甲府の母体である甲府サッカークラブと、松本の母体である山雅サッカークラブが創設されたのは同じ1965年である。その後、松本がJリーグへの加入を目指して活動を本格化させた時には、甲府は隣接県のクラブとして運営面などを「過去に幾度も指導いただいた」(松本・大月弘士社長)。また土橋宏由樹・白尾秀人・木村勝太など、北信越リーグ・JFL時代に松本を支えてきた多くの選手たちも甲府からの移籍組である。天皇杯での対戦経験もあり(2010年。1-0で甲府が勝利)、近場ということからトレーニングマッチなどを組む機会も多く、様々な面で常に胸を借りる立場であった。そう、松本にとって、これまでの甲府はあくまでも"上に立つ存在"だったのだ。――あえて過去形で書かせていただいたのは、今シーズンは"同じカテゴリー"にいるからである。何度か足踏みはしたが、ようやくここまで辿り着いた。そう思うと、言いようのない気持ちになる。もちろん、これまで計3シーズンをJ1の舞台で戦ってきた甲府と、Jリーグ1年生の松本を同格の存在であると言うつもりはない。しかし臆する必要は全くない。甲府という強豪へのリスペクトを保ちながらも、勝点3を狙い全力を尽くすのみだ。
両チームの現状を鑑みると、松本にとって簡単な試合にはならないことは容易に予想出来る。アウェイの甲府は、現在連勝中。反町康治監督も「城福(浩)さんのサッカーと、個の力が上手く融合している。J2で一番実力のあるチームではないか」と警戒感を隠そうとしない。その中でも要注目はやはり2トップだ。J2得点ランク1位のダヴィはもちろん、高崎寛之も前節にゴールを挙げており上昇傾向。このストロングポイントを前面に立てたサッカーを打ち出してくることは間違いない。野澤洋輔が「チーム全体でしっかり守れるように意識したい。一番は危険な部分をしっかり抑える事だが、例えシュートを打たれてもコースを限定させたい」と語るように、まずこの2トップにボールが収まらないようにボールの供給源を封じ、思うような勝負をさせないことだ。
攻撃面では、弦巻健人が前節の負傷で全治8週間と診断されたことで、前線は選手の入れ替えが行われる。シャドーの位置に入る候補の一人である楠瀬章仁は「攻めている時間帯に点をとれれば、ペースを掴める。ここまで結果を残せていないので、次は目に見える結果を出したい」と、得点への意欲を露わにしている。チームは得点力不足が課題だけに、相手守備網を切り裂くドリブルを持つ、弦巻とはまた異なる魅力を持つプレーヤーのJリーグ初ゴールがなるかも勝負の分かれ目となるだろう。
ここまでのチケットの売り上げも好調というこの一戦。心配された天候も回復傾向で、多くのサポーターの視線がピッチ上に注がれることは間違いない、新たなるダービーマッチ。トレーニングマッチとは異なる真剣勝負だ。「松本には負けられない」「甲府には負けたくない」というその思いに背中を押された両チームの選手たちが躍動するゲームとなることは想像に難くない。
以上
2012.06.01 Reported by 多岐太宿
J’s GOALニュース
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