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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【J2:第17節 横浜FC vs 熊本】プレビュー:「2006」をめぐる邂逅。2人の知将が育てたチームの対戦は、見逃す隙がない一戦となる。(12.06.02)

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この試合を迎えるにあたり、2人の指揮官が横浜FCでともに戦った2006年を思い返さないわけにはいかないだろう。それは、単に横浜FCの山口素弘監督、熊本の高木琢也監督が、当時の選手と監督として師弟関係だったということだけではない。山口監督も、2006年の横浜FCの高木監督と同様に、シーズン途中から監督を引き受けたこと、自らの経験を元にチームを立て直しつつあること、そして、そのスタイルには一部共通点もあること。横浜FCがあと1勝で星を五分に戻せるというこのタイミングで、前節高木監督らしさが発揮された熊本と対戦することには、大きな因縁を感じずにはいられない。

今年の山口監督が率いる横浜FCと、2006年に高木監督が率いた横浜FCの共通点があるとすれば、守備の局面では低い位置でも割り切ってしっかりとブロックを作るところだろう。2006年の横浜FCは「ハマナチオ」とも呼ばれたしっかりとした守備組織を確立したところから、優勝への上昇気流をつかんだ。守るべきところでの割り切りという点では、非常に似ていると言ってよい。一方で、今年の横浜FCが2006年と決定的に違うのは攻撃の考え方だろう。ボランチ出身の監督らしく、ボランチをチームでうまく使いながらビルドアップする意識が徹底しており、現在の4連勝はその意識の高さが90分の試合で継続されていることが実を結んだ結果と言ってよい。前節の鳥取戦(5/27)は、立ち上がりにシャープさを欠き失点するが、すぐに今年のキーワードである「前進する保持」を取り戻す。そして、鳥取を中盤で追いつめることで前半のうちに3得点を挙げて逆転し、大勝につなげた。前節もそろい踏みをした大久保哲哉、田原豊のツインタワーの強さが強調されがちだが、中盤のビルドアップと2トップの強さが融合しているところが本当の強みだ。その意味で、この熊本戦でも、割り切った守備と攻撃時のビルドアップを粘り強くピッチの上で表現することが重要になる。

山口監督が「高木監督は緻密だし、しっかりとした土台を作り上げている」と評している対戦相手の熊本は、9試合勝利から見放されていたが、前節、首位山形を相手に勝利を挙げた。その山形戦の熊本の姿には、2006年の横浜FCが少し重なって見えた。前半に武富孝介が挙げた2ゴールは、ボックス内での鋭い攻撃で獲得したもの。そして、低い位置でブロックを作り、ゴールを死守した。今年の熊本はボールをつなぐサッカーを志向していることから考えると、目標とは違う勝ち方かもしれないが、元々高木監督が熊本でも植え付けていたソリッドな戦い方は十分に発揮されたと言える。9試合勝利なしの中でも内容的には悪くなかっただけに、前節の2ゴールの流れを継続できれば、この横浜FC戦でも同じ結果を引き寄せられるだろう。

横浜FCは4連勝、熊本は首位を破ったという良い流れの中で、この試合で両チームに求められることは「緩めないこと」だろう。前節の横浜FCは「強く立ち上がりの、ゲームの入り方について言ったので、失点はいただけなかった」と山口監督が試合後の記者会見で述べたように、気をつけていても立ち上がりに失点している。第9節(京都戦)、第10節(岐阜戦)と2連勝の後にゴールデンウィークで2連敗(第11節町田戦、第12節岡山戦)したこと、昨年も8月に4連勝した後に調子を落とし12試合勝利なしに陥ったことを思い起こさないといけない。熊本も、「あまり(勝利の)余韻に浸っている暇はないかなと。なぜなら我々はこれから順位を上げなければいけないチームなので」と前節の試合後に高木監督が述べたように勝って兜の緒を締めている。1勝の大事さをより自覚している方に勝利が訪れる。

この対戦は、横浜FCの3勝3分4敗で、勝敗がついた7試合中5試合は1点差の決着となっている。安定した守備と、鋭い攻撃の武器を見せ合う試合が予想され、細かなディテールが勝負を分けるだろう。選手交代を含めた、2人の知将の采配・駆け引きにも注目だ。

突然の監督交代が生んだ、6月のニッパツ三ツ沢球技場での山口監督、高木監督の邂逅。横浜に流れる歴史と運命を感じることのできる熱戦となることを期待したい。

以上

2012.06.01 Reported by 松尾真一郎
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