前節、先制しながらも逆転負けを喫した両チームが、初めての対戦をNDスタで迎える。

山形は前節、11試合ぶりの黒星を熊本に喫し、3試合続けた首位の座から3位に後退した。萬代宏樹の2試合連続ゴールで12分に先制したが、その後に2失点と逆転を許して折り返し、後半は自陣でブロックを構える熊本を崩しきれなかった。中盤の中継地点となる選手にも前線の3人にも常に厳しいマークが付いたが、特に前線ではスペースへ飛び出しにもれなく相手が並走し、ドリブルをすればゴールから遠いコーナー側に追いやられた。入念に準備してきた熊本の術中にはまり、それを打ち破ることができずに終わった試合だった。

そうした試合を経て、今週のトレーニングでより重視したものは、自分たちのなかで無意識に進行しているプレーの変化だった。奥野僚右監督の弁。「最初はがむしゃらというか、前線からの頑張りで追いかけ回した部分があったと同時に、そこからちょっと進んでいくと、そこで統一感を持って、間延びしないように、ユニットとして前から行くのか、ユニットとしてちょっと後ろから行くのかというふうになってくると思うんです。その段階でそういうのがうまくいき始めると、今度は安心だから下がってしまうという部分が少し出てくると思うんですよね」。

安定を求めることで薄れ始めていたボールへのアタック。「行く・行かない」の判断を見直し、そのメリハリをつけることで攻守にダイナミックさを取り戻すのが今節のテーマだ。「サイドに入ったときに、どうしても誰が行くのかがはっきりしないときがあるので、そういうところをはっきりできるようにしたい」(石井秀典)、「追い越す動きがここ数試合少なくなってきているので、そこは本当に個人的にも意識して前半から飛ばしていければ、チームとしてもよくなってくると思います」(小林亮)と選手も意識を高めている。その思いがチーム共通のものとして機能すれば、主導権を握り、躍動する姿が見られるはずだ。

鳥取にとって、山形、東京V、千葉と上位陣との対戦が続く今節からの3試合はひとつの正念場だが、それを迎えるにあたって、チーム状態はけっして良好ではない。栃木戦、富山戦と2連勝したあとの第13節・大分戦で0-3と敗れ、システムを4-3-3に変更して臨んだ水戸戦で2-1と勝利したが、続く徳島戦で0-3、前節・横浜FC戦では2-5といずれも大量失点で敗れている。前節は4分に先制したものの、前半を終わってみれば3失点し、後半さらに2失点を重ねている。攻撃面でも、勝った水戸戦も含めてここ4試合シュートは数は5〜7本にとどまっている。ここまでJ2でシュート数が最少、被シュート数が最多で、失点は33とリーグワーストの数字となっている。

自陣から細かくパスをつなぎ、ボールを積極的に動かそうとの意図は試合の随所で見受けられる。インサイドハーフの実信憲明と美尾敦がいい状態でボールを持ち、あるいはトップへのサポートを実現することで得点へのチャンスは広がるが、「(ボールにかかわる)意識はあったものの、マイボールになったときの最初の段階で、少しずつミスが出てしまったこと。また、プレッシャーを受けたことによって、かかわりにくくなってしまった」と、前節終了後に吉澤英生監督が語ったように、そこまで持ち込むケースはまだ多くない。また、攻撃途中にイージーな形から奪われる回数が多くなることで、バックラインも難しい状態での対応に追われることになる。複数失点の試合で顕著に見られるのが、1対1から仕掛けられてかわされたり、自陣の広いスペースを守備の人数が少ない状態で抑え込めないケースだ。

ただし、吉澤監督は「それ(ボールへのかかわり)ができるようになる時間帯もあるので、それは進歩した部分だと思っています」と、積み上げた部分が着実に大きくなりつつあることも大事にとらえている。横浜FC戦での住田貴彦の2得点は、住田自身の自信になるだけでなく、チーム全体に刺激を与えるもの。また、復帰2試合目の吉野智行が前節で後半の45分間プレーし、プレー時間を伸ばしたことも明るい材料だ。成長とともに勝点3にチャレンジする試合になる。

16時キックオフとは言え、気温の高さは試合に少なからず影響を及ぼすことになりそうだ。互いの意志をぶつけ合うなかで、主導権を握るチームが勝点3への扉に手をかける。

以上

2012.06.01 Reported by 佐藤円