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【J2:第16節 熊本 vs 山形】レポート:先制されながら、武富の2発で逆転!10試合無敗の山形を下し、熊本が10試合ぶりの勝利を挙げる。(12.05.28)

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 表示されたアディショナルタイムは4分。終盤にはDFの西河翔吾まで前線に上げ、正確なボールをゴール前に入れる山形のセットプレーにさらされ続けた。しかしGKの岩丸史也を中心に熊本は全員でこれをしのぎきり、10試合ぶりの勝利。ピッチ上では選手たちが抱擁し合い、スタンドのあちこちでタオルマフラーが打ち振られる。KKウイング5階にある記者席から会見室が設けられている1階に降りる階段は片方の壁面がガラス張りで、スタジアムのコンコースからグルメブースのある広場への通路が見えるのだが、最近のホームゲームではスタンドの外へ出る人の波が試合終了直後からぞろぞろとあふれていたのに対し、この日はその流れが極端に少なく見えた。入場者数が今季2番目に少なかったせいもあるかもしれないが、久しぶりの勝利が醸すスタジアムの空気の中にしばらく身を置いておきたい人が多かったのだろう、とも思う。

 しかし、「正直、入りもあんまり良くはなかった」と廣井友信は振り返る。お互いに様子を見るような雰囲気のなか、大きな展開が目立つ立ち上がりだったが、徐々に山形がその正確な技術と判断で熊本を押し込み始める。12分、左の石川竜也からのふわりとしたクロスがゴール前へ。千葉戦の反省から、クロスに対しては「人につく」という点を確認していたはずの熊本だったが、ボールは中央ではなく奥へ届き、そこに入ってきた萬代宏樹は全くのフリー。右足で合わせたシュートは枠を捕らえ、熊本の選手にも触れたが無情にもゴールイン。先制を許したこの場面の前、7分にも石川のクロスからファーの山崎雅人に合わされるシーンがあり、この調子では相当やられはしないかとの懸念もよぎった。
 だが直後の13分、武富孝介の11試合ぶりのゴールで熊本は同点に追いつく。起点となったのは初めてFWで先発起用された高橋祐太郎だ。山形スローインのクリアボールを拾って右サイドで前を向くと、スペースへ走り込む武富へスルーパス。これをダイレクトで合わせてニアを抜いた武富の同点ゴールは、熊本のホーム通算100得点目となった。さらにアディショナルタイムの45+1分にも、高橋のクロスから武富が決めて逆転に成功。高橋が右でボールを受けた際にファーサイドに武富が見えていたため、タメている時点では判断が遅いのではと感じたが、西森正明とのワンツーで抜け出した高橋は、動き直してゴール前へ入ってきた武富へピンポイントのラストパスを通す。非常にいい時間での勝ち越しゴールだった。
 2得点はいずれも、「(点は)入る時には入ると思う」と試合の3日前に口にしていた武富のスペースへの走り込みとシュート技術、さらに「練習でFWに入る時には、3人の関係と『ゴールに直結するボール』を意識していた」という高橋の状況に応じた判断がうまくリンクしたもの。しかしそれ以上に、この試合では山形の攻撃の良さを出させないチームとしての守備対応が、流れを掴む一因になっている。もちろん、先制を許した場面以外にもクロスやサイドチェンジに対して外したり遅れたりするシーンはあった。だが「前から行けない時はしっかりブロックを作って(守る)ということができていた」と吉井孝輔が話すように、山形の3トップに効果的なボールを入れさせなかったのは、前線の3人も含め、(高い位置から、ということではない意味で)前からの守備がある程度機能していたからである。
 しかし、さすがに山形も後半は開始直後から勢いを増す。萬代に替わって入った太田徹郎、船山祐二に替わって入った川島大地が持ち味を発揮したこともあるが、奥野僚右監督が「ハーフタイムには、どうやってギャップを生み出すかという話をした」と述べた通り、ロングボールが多かった前半に比べ、山形は中盤でボールを受ける場面を増やしていく。逆に熊本は「どこまでできるか不安はあった」と高木琢也監督が話したように、28℃を超えた気温の影響もあってか前半ほどの運動量はキープできずに中央でもサイドでもプレッシャーが緩くなり、後半は防戦一方。だが「守備練習みたいになってしまった」(岩丸)苦しい時間も全員で耐え抜いた。

 山形は実に11試合ぶりの敗戦。特に後半は内容でも圧倒しながら結果として得点は奪えず、新たな課題が見えたのは確か。「引いてくるチームに対してパスで崩すのがいちばんだけど、うまくいかない時は、簡単にサイドを使ってクロスを上げるとか、それを繰り返すしかない」と萬代。しかし個々の技術と判断の精度、動きの質、さらにゲーム中の修正力という点においては、昇格候補たる側面を見せつけた。首位の座は明け渡す格好となったが、「メンバーが変わっても、同じような意図を持って同じように攻撃してゴールを目指すこと、いい準備を続けて次の90分に表現することを繰り返す」(奥野監督)という愚直さは、1つの敗戦では揺るがない。
 一方、ひとまずは快方の兆しが見えた熊本。結果は出たもののボールを奪ってからの展開で慌ててミスを招いたことや、ファーサイドのケアの甘さ、加えて「早く攻めるところと遅攻するところの使い分け」(高木監督)など、修正しなければならない点はまだまだ多い。「次にしっかり勝ってこその今日のゲーム」(吉井)ということは誰もが自覚しているし、高木監督も言うように「あまり余韻に浸っている暇はない」。1勝であらゆることが好転するわけではなく、勝利という薬の効果を高めるには、服用後の過ごし方も大事。次は4連勝中と復調してきた横浜FCが相手だが、どこが相手でも、やるべきことをやり続けるのみ。ただ、間違いなく大きな1勝。自信を持って次節に望みたい。

以上

2012.05.28 Reported by 井芹貴志
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