開始直後から多くのゴールが飛び交った一戦。先制したのは鳥取だったが、前半のうちに逆転した横浜ＦＣが、後半も着実に加点し、逆転勝利を収めた。

ホームでは最近２連勝と結果を残していた鳥取は、試合開始前から苦しい状況を強いられていた。昨季のリーグ戦と天皇杯、今季前節までのリーグ戦と、移籍加入した昨季からの公式戦全試合に先発フル出場していたＤＦ戸川健太が、体調不良で欠場。ディフェンスラインの中心人物の突然の不在で、初めてセンターバックでコンビを組む水本勝成、柳楽智和の連係など、影響が出ることが予想された。さらに、いったんは控えで試合のメンバーに登録されたＤＦ三浦修も、体調不良で欠場となり、代わりにＭＦ三浦旭人を登録するなど、多くの混乱があった。
それでも先制点を奪ったのは鳥取。開始４分、自陣からのロングカウンターで攻め込んだが、美尾敦から小井手翔太へのパスが合わず、小井手は何とか前方に送るのが精いっぱいで、チャンスはついえたかに思われた。しかし、横浜ＦＣのＤＦ杉山新の前に落ちたボールを、後方から走ってきた住田貴彦が奪い、そのまま蹴り込んでネットを揺らした。

山口素弘監督が「かなり強く立ち上がりの、ゲームの入り方について言っていたので、いただけなかった」という失点から始まった横浜ＦＣは、失点直前、野崎陽介の突破からの決定機を大久保哲哉が逃していたこともあり、嫌なムードになりかねない展開だった。だが、失点直後にも野崎の突破から田原豊がヘッドで狙うなど、サイドハーフと２トップで良い攻めの形を作っていたことが、その後の反撃につながっていく。逆に鳥取は、簡単なミスで相手にボールを渡してしまい、守備の時間が長くなるという課題が見え始め、ボール支配率で徐々に劣勢に。ライン間のギャップで効果的にパスをつなぐ横浜ＦＣの攻めに、全体が下がらざるを得なくなり、リードしながらも苦しい展開を余儀なくされた。

押し気味に進めた横浜ＦＣは26分、右サイドから攻め込み、大久保のポストプレーからの野崎のシュートは鳥取ＧＫ小針清允が止めたが、こぼれ球を武岡優斗が決めて同点。39分にも同様の展開となり、野崎のポストプレーからの大久保のシュートを小針が止めたものの、詰めていた田原が押し込んで逆転に成功した。さらに44分には左サイドを崩し、野崎のセンタリングを大久保がヘッドで決めて３点目。連続得点で一気に逆転して前半を終えると、後半開始直後の48分にも、野崎とのワンツーから武岡が決め、４―１としてリードを３点に広げた。
鳥取はこの間、前述したようなマイボールの際のミスが相次いだ。１失点目は自陣でのスローインをつなげず、あっさり相手に渡したところから始まっており、３失点目、４失点目も自陣でのミスがきっかけ。これだけミスが重なれば失点が増えるのも当然で、さらに冒頭に記した戸川欠場の影響による守備全体の混乱も重なり、幸先の良いスタートから一転、一気に勝負を決められてしまった。

それでも鳥取は69分、ＦＫの素早いリスタートからチャンスを作り、尾崎のセンタリングが相手ＤＦに当たって流れたところを、住田が合わせてゴール。２点差として、わずかに望みをつないだ。しかし、その後は集中力を取り戻し、自陣で分厚いブロックを築く相手を攻めあぐね、勢いに乗ることができない。
逆に横浜ＦＣは80分、76分から交代出場していた三浦知良が勝負を決める。佐藤謙介のパスを左足の巧みなトラップで持ち出し、ＧＫ小針の股間を抜く技ありシュートで５点目。「最初のトラップで勝負はあったかな、と。落ち着いて、ゴールにパスする感じで打てば入るかな、と思った」と自画自賛したダメ押し点は、2010年最終節の大分戦以来、Ｊ２では２年ぶり、自身の持つＪ２最年長得点記録を45歳３カ月１日に更新するゴール。メインスタンドに駆け寄っての『カズダンス』に、横浜ＦＣのスタッフ、チームメイトが一斉に駆け寄り、喜びを分かち合った。

先制後に自ら崩れて大量失点し、ホームですっかり引き立て役に回ってしまった鳥取に対し、横浜ＦＣは連勝を今季最長の４に伸ばした。４―１とした後に「油断があったのかもしれないけど、緩みがあったせいで２点目を取られたのは、反省しなければいけない」（三浦）課題であり、シーズン序盤の出遅れを完全に取り戻せたわけでもない。しかし、野崎は「みんなサボらずハードワークしていて、監督がやりたいサッカーが浸透してきていると思う」と手応えをつかみ、山口監督も「みんなが、やるべきことをやっている」とチームのパフォーマンスを評価した。今季最多の５得点、２年ぶりの『カズダンス』は、今後の上位追撃への、最高の起爆剤となりそうだ。

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2012.05.28 Reported by 石倉利英