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【J1:第12節 F東京 vs 鳥栖】レポート:己に勝つ選択をしたF東京が、75分間を制した鳥栖を破る(12.05.21)

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「これがフットボールだ」
ランコ・ポポヴィッチ監督は感情の赴くまま、少し早口に口を動かす。たとえ贔屓のチームが敗れたとしても清々しさは残った。観る人にとっては、心地よい時間だったはずだ。互いに志向するサッカーをぶつけ合う。その姿は、やはり結果以上に素敵だった。

まず鳥栖のMF水沼宏太が魅せた。42分、右サイドでボールを持つ。マークが寄せきれず、目の前の視界が開かれた瞬間、迷いなく右足を振り抜いた。勢いを乗せたボールは、ニアサイドをぶち抜き、ゴールネットを揺らした。さらに1点リードで迎えた59分、またも水沼が右サイドを抜け出す。GKと、DFの間にボールを送った。横回転のかかったクロスは、GK権田の手をかすめて走りこんだFW豊田陽平へと届く。体を投げ出して当てたボールは、転がってゴールラインを割った。

ここまでは、鳥栖のゲームだった。前半から両サイドのMFを起点に、東京ゴールへと迫った。左サイドのMF金民友のドリブルでF東京右SBのチャンヒョンスは手玉に取り、水沼は決定的な仕事をした。中盤では守備が機能し、ことごとくボールを奪ってカウンターへとつなげた。しかし、F東京はこのゲームを終わらせなかった。後半勝負はプランどおり。指揮官には諦めなければ、勝利へと近づく自信があった。

「その(後半勝負を仕掛けるのはもともとのゲームプラン)とおりだ。でも、俺たちは、自分たちを信じてやり続けたから今日のゲームに勝利した」
2度の失敗が、成功へと導いた。リーグ第7節仙台戦では後半勝負のゲームプランを掲げながらも大量失点を喫して敗れた。特に、集中力を欠いた後半は、力なく失点を重ねてしまった。「あそこで気持ちを切らしてはいけなかった。戦う姿勢を崩さなければ、何が起こるか分からない。それもサッカーです」。そして、16日の蔚山戦では、5バックの相手をパスワークで崩しながらも、ゴールネットを最後まで揺らすことができずに敗れてしまった。まだ開幕して間もない頃からポポヴィッチ監督は言い続けてきた。その話をするときは、必ず熱っぽく少し調子を変えて話をする。
「己に勝つことが大事なんだ。昨日の自分に、今日の自分が勝たないといけない。それが成長するということ。そして、自分たちを信じてやり続けること。それがチームを築いていく上では何よりも重要なんだ」
昨日までの失敗は、アシタへの糧となる。その人生訓がピッチには転がっていた。指揮官は後半早々に、ピッチに渡邉千真と、石川直宏を送り出す。そして、蔚山戦の後半と同じく左サイドにルーカスを動かし、長谷川アーリアジャスールをボランチに、高橋秀人をセンターバックへと移した。徳永悠平を右サイドバックにし、さらに河野広貴が入ったことで中央とサイドの両方から仕掛けられる陣容を整えた。

71分に、鳥栖は2点のリードを守りきるために、DF犬塚友輔を投入して5バックへとシフトさせる。このまま、リードを守って逃げ切るはずだった。ただし、ここで試合の流れが変わった。それまで勝つための守備をしていた鳥栖が負けないための守備に切り替えた。この瞬間をF東京が見逃さなかった。
周囲が仕掛けてエリアの住人が仕留める。その構図で3ゴールを立て続けにもぎ取った。渡邉千真の13分間のゴールショーが始まる。75分、石川のパスに抜け出して右足をあわせ、81分にはゴール前に飛び込んだ徳永の折り返しを体で押し込む。最後は、相手選手のクリアボールを鼻に当てて逆転ゴールを挙げた。隙を見せた瞬間に、鳥栖の機能的だった守備は決壊してしまった。ただし、当たり前のことを当たり前にできる鳥栖の背景には、日々の厳しいトレーニングが見えてくる。だから鳥栖は75分間、完璧なゲームをし、この試合が観ている人の感情を揺さぶるゲームになったのだと思う。サッカーに魅せられてしまったロマンチストは、試合後の監督会見でこれでもかと言葉を重ねた。
「今日は誤解を恐れずに言いたい。私たちFC東京がどういう風な相手にどういう風なサッカーをして勝利を得たのか?ブロックを作られても、それを壊すマシーンを私たちは持っていた。引かれた相手に対しても、それを攻略して勝利に結びつけることができた。それは、日本サッカー界にも何かを示せた、証明できた試合だったと思います。今日は、フットボールが勝利したと申し上げたい。皆さんも、すべての感情を出し尽くしたぐらいの魅力が詰まったサッカーを両チームが演じた。FC東京も、鳥栖もお互いにいいところを出した。そういうゲームだったはずです」

誤解を恐れずに言いたい。「サッカーは人生の縮図だ」という言葉を笑い飛ばす人がいたら、このゲームに至るまでのF東京の姿を振り返ってみて欲しい。なるほどと思ってくれる人がいるはずだ。昨日、できなかったことが今日は少しできるようになった。そう思うたびに、アシタは楽しみになってくる。「それがフットボールだ」。

以上

2012.05.21 Reported by 馬場康平
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