福岡が4月22日以来となる6試合ぶりの勝利を挙げた。セットプレーの守りをゾーンからマンツーマンに変えて無失点。長所とするクロスからの攻撃でFW城後寿が決勝点を奪った。富山は持ち味のアグレッシブさを発揮して互角に戦ったが4試合ぶりの白星には届かなかった。ふがいなかった前節から立て直して、少なくとも自らとの戦いには負けなかった。次は敵に勝つことで自身の能力と可能性を示したい。
富山は6試合ぶりに3バックに戻し、開始から勢いよく攻め込んだ。積極的に前からボールを奪いにいき、こぼれ球もよく拾った。原点に戻り、戦術の基本である相手の最終ラインに仕掛ける攻めを徹底。平野甲斐と黒部光昭のツートップに素早くボールを送ってゴールに迫るかたちはシンプルではあるが福岡DF陣を手こずらせていた。25、26分には立て続けに中盤で相手ボールを奪ってチャンスをつくった。アグレッシブな守りからゲームを掌握していく富山らしいリズムが感じられた。前半最大のチャンスは34分、右サイドからDF足助翔が平野の裏への動き出しに合わせてゴール前に送り決定機を迎えたがヘディングシュートはゴール左へと外れた。
後半も立ち上がりから意欲的に攻めた。同3分、MFソ・ヨンドクのクロスにMF大西容平が頭で合わせたがゴール上へ。同16分にはゴール前で左から右へと揺さぶって最後は大西が折り返して平野がファーサイドからヘディングで狙ったがシュートは力なくGKの胸に収まった。チャンスはつくる。しかし、クロスやシュートの精度を欠き、沸きかけたスタンドからため息がもれた。相手を打ち負かすための決定打を繰り出すことができなかった。
対する福岡はサイドからクロスを入れる攻撃を根気強く続けた。攻撃陣の高い個人能力を思えばアクセントをつけるような強引な仕掛けを交えてもよさそうなものだが、これが今季の特長なのだという。前田浩二監督は「我々の攻撃の武器はサイド攻撃。相手が分析してきても質を求め、やり続けようと選手に伝えている。今日はゴール前が数的同数なのか、数的不利なのか、相手はどういう状況なのか、ギャップはあるのかといったところを見極めてクロスを入れるように指示した」。強みをさらに伸ばそうという意志をもって普段から練習しているのだろう。富山DF陣が福田俊介を中心に空中戦が強いことを承知のうえで自らのかたちにこだわり決勝点をもぎとった。
後半43分に決勝点を挙げたのはエースの城後。それまでも再三にわたり富山ゴールを脅かしていた。得点までの一連の流れの始まりは右サイドからの城後本人のロングスロー。一旦はクリアされたが拾い直して左サイドへと展開。DF尾亦弘友希が入れたクロスを攻め残っていたDF古賀正紘が折り返し、城後が詰めた。「ごっつぁんゴールでした」と振り返っているが、リプレーで確認してみると反応鋭く飛び上がって右足のアウトサイドで流し込んでいる。高い運動能力、勝負所を逃さない得点感覚に驚かされる。福岡はチームとして、個人として相手を上回る力をみせた。
富山は前節の過ちを繰り返さず、戦えるチームであることは示した。DF吉川健太は「今日のようなゲームを続けていけば勝利はついてくる」と話した。今季初出場だった彼の集中したプレーぶりは目立ち、なにげないクリアボール1つひとつの落とし所も正確だった。日ごろからDF陣が繰り返している練習の成果であることを記しておきたい。
少し遠回りはしたが、これからも勝つための武器を磨き、プレーの質を上げるだけだ。「心をひとつにやるしかない」。サポーターの掲げた横断幕のメッセージはチームのみならず自らも含めたクラブに当事者意識を持つ者全員に向けられている。不屈の精神が試されている。次の1勝を目指して今が頑張りどころだ。
以上
2012.05.21 Reported by 赤壁逸朗
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