結果と内容が一致しない試合というものがあるが、今日の試合はまさにそれであった。田坂和昭監督は「終始町田のペースで、ウチのやり方を消されて、相手のペースで特に前半は進んだ。後半は少し修正できたが、まあ俗にいうチンチンにやられた内容だった」と素直に内容で負けたことを認め、「想定内のことも、想定外のことがあったけど、さすがアルディレスだなと思った」と敗軍の将に敬意を表した。
田坂監督が話した想定内のこととは、町田の右SHドラガン・ディミッチがトップ下まで中に入り込んだ変則の4−4−2のシステムであったこと。想定外だったことは、左SBに藤田泰成が入り、極端に前方に位置したことだ。異様なまでに左寄りのシステムは極端に高い位置に配置され、大分の特徴であるサイドの片翼を完全に封じた。アンバランスな布陣の町田が、大分のバランスを完全に失わせたのだから皮肉だ。前半はほとんどの時間で町田がポゼッションで圧倒し、幾度となく決定機を作った。
それでも先制したのは大分だった。今季の大分の最大の武器となっているのが、どんなに劣勢な状況でも得点できるセットプレーである。25分にFKの流れから三平和司が押し込み、ネットを揺らした。
町田にとって不運な失点ではあったが、そこでトーンダウンしないのが町田のサッカーである。失点前以上にボールをつなぎ、ポジションを変幻自在に変える。パスで崩したかと思えば、平本一樹の力強い直線的なドリブルで突破するなど多彩な攻撃で観る者を魅了した。その娯楽性たるや痛快極まりなく、大分は相手を捕まえ切れずに右往左往する。41分には意図的に密集した左サイドでボールを奪うと、ドラガン・ディミッチの浮き球のパスを受けた鈴木崇文がドリブルで独走し、同点ゴールを奪った。
一方的な町田のペースであったが、「そのなかで何とか1点で抑えることができた」(田坂監督)ことが大分の勝因だ。田坂監督は前半の45分間であらゆるシチュエーション描き、15分間のハーフタイムで見事な修正を図る。システムは前半と変らなかったが、最終ラインとWBの選手の配置を変えたことで守備が安定した。町田に前半だけで9本ものシュートを打たれたが、後半は1本のみ。この数字が表す通り、後半は大分が主導権を握った。ポゼッションでは前半同様に町田に分があったが、「(パスを)回されていたから回させたに変った」(宮沢正史)。気持ちのうえで相手を上回れば、いずれ訪れる決定機を焦らずに待てば良かった。84分にチャンスが訪れた。石神直哉のCKを作田裕次が頭で合わせ追加点を奪い、狙い通りにそのまま逃切った。内容で負けても、勝負に勝つ。これもまた痛快なサッカー劇である。今節、上位陣が軒並みに勝点を重ねただけに、大分にとって上位に食らいつくための貴重な勝点3を手にした。
一方の町田は、またしても内容は良かったが結果がついてこなかった。オズワルドアルディレス監督の「2ゴール与えてしまったが、それに値しないような内容の試合をした。相手チームと比べても内容は勝っていた。少しの運が必要だったのかもしれない」との言葉は決して強がりではなく、真相である。試合を終えた選手の顔を見れば分かる。悲壮感はなく、「試合ごとに良くなっている」(三鬼海)、「今やっているサッカーはJ2のなかでも、自信を持って良いと思う」(相澤貴志)と前向きな言葉ばかりだ。明けない夜はない。町田がJ2を席巻する予感はある。
以上
2012.05.21 Reported by 柚野真也
J’s GOALニュース
一覧へ- natsuyasumi2024
- jwc2024
- 国立20240914
- pari olympic2024
- bluelock2024
- THE国立DAY
- 2024 明治安田Jリーグ フライデーナイトJリーグ
- 2024JリーグYBCルヴァンカップ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- AFCチャンピオンズリーグ 2023-24
- はじめてのJリーグ
- 2024天皇杯
- seasonreview2023 Jリーグ1年の振り返り(別ウィンドウで開く)
- シーズン移行の検討
- 明治安田Jリーグ 月間表彰
- 2023 移籍情報
- 大会概要まとめ
- 2024Jユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE